「自己陶酔」の意味とは?類語「ナルシスト」との違いや対義語も

自分自身をこよなく愛する人のことを「ナルシスト」と呼びますが、似た意味の単語に「自己陶酔」があります。「自己陶酔」とはどのような状態を表すのでしょうか。

本記事では「自己陶酔」の意味と例文を紹介。「自己陶酔型」と呼ばれる人の特徴や類語・対義語、英語訳も紹介します。

「自己陶酔」とは?

「自己陶酔」の意味は”自分にうっとりすること”

「自己陶酔」の意味は、“自分の行動・容姿などにうっとりして酔いしれること”です。読み方は「じことうすい」です。

「陶酔」には、”心地よく酔うこと・心を奪われてうっとりすること”という意味があり、「自己陶酔」は文字通り”自分自身にうっとりすること”という意味になるのです。併せて、「うぬぼれている様」を表す際にも用いられます。

「ナルシスト」とは”自分のことが好きな人”

「自己陶酔」と似た意味の単語で、思い浮かぶものといえば「ナルシスト(ナルシシスト)」です。「ナルシシスト」とは、”自己陶酔型の人”を指す単語で、「自分のことが好きな人」という意味合いでも用いられます。日本語では「ナルシシスト」よりも「ナルシスト」の表記の方が一般的でしょう。

なお、「ナルシシスト」は”ナルシシズム(自己愛・自分自身を性的な対象とみなす状態)を呈する人”という意味ですが、日本語としては「シ」が二回続くと発音しにくいこともあり、「ナルシスト・ナルシズム」の表記が定着したと言われています。

「自己陶酔」の使い方と例文とは?

「自己陶酔する」「自己陶酔している」と使う

「自己陶酔」は「自己陶酔している」と使われるのが一般的です。自分のことに対して使うというよりは、第三者の様子について述べる際に使うことが多いと言えるでしょう。

例文
  • プレゼンの完璧な出来に自己陶酔せずにはいられない
  • 彼のあの表情は、自己陶酔しているのが明らかだ
  • 彼女が自己陶酔しているのはいつものことだ
  • 朝から自慢話とは自己陶酔にも程がある

「自己陶酔」はネガティブな文脈でもよく用いられる

「自己陶酔」は単に様子を表す単語として用いられる他、ネガティブな文脈で用いられることが多いのも特徴です。たとえば、「上司の自己陶酔に付き合わされるのにはうんざりだ」や「彼は極度の自己陶酔型で気味が悪い」などという風に使われることもあります。

「自己陶酔」の類語とは?

「自己陶酔」は”うぬぼれ”とも言い換えられる

「自己陶酔」を別の日本語に置き換えるならば、”うぬぼれ”や”うぬぼれ屋”といった表現が挙げられます。「うぬぼれ」とは、”自分が優れいてると思い、得意になること”を指す単語で、「うぬぼれ屋」とは”うぬぼれている人”を指す表現です。

なお、「うぬぼれ」を漢字で書くと「自惚れ」となり、”自分自身に惚れ惚れしている”という「自己陶酔」と同じ意味であることがよく分かります。

「自己満足」も類語として使える四字熟語

「自己陶酔」と同じく、「自己」を使った四字熟語では「自己満足」もあります。「自己満足」とは、自分で自分の行動や己自身に満足することです。自己陶酔のように「自分にうっとりする」という意味はありませんが、「これで満足だ」と満ち足りている場合には言い換えとして使えます。

「自己陶酔」の対義語とは?

反対の意味を持つのは「自己卑下」や「自己嫌悪」

「自己陶酔」と反対の意味を持つ表現には、”自己卑下”や”自己嫌悪”が挙げられます。「自己卑下(じこひげ)」とは、”自分を卑下すること・自分は大したことのない、劣った人物だと考えること”という意味の表現です。「自己嫌悪(じこけんお)」は、”自分自身が嫌になること”という意味の表現で、いずれも「自己陶酔」とは反対の意味を持つ表現と言えるでしょう。

「博愛」も”自己陶酔”の対義的表現

「博愛(はくあい)」とは、”すべての人を平等に愛する・大切にする”という意味の単語です。「自分にうっとりする」という意味の「自己陶酔」に対し、”(自分だけでなく)すべての人を大切にする”という意味の「博愛」は、対極にある単語と言えるでしょう。

「自己陶酔型」の人の特徴と付き合い方とは?

「自分は周囲の人よりも優れている」と感じている

「自己陶酔」している人の一番の特徴は、「自分は周囲の人よりも優れている」と思ってる点でしょう。同時に、根拠もなく、「他人は自分よりも劣っている」と思っているのも特徴です。たとえば、少し営業成績が良かっただけで「自分は誰よりも優れている」と極端な思い込みをする人は「自己陶酔型」と言えるでしょう。また、社交辞令ととれるような褒め言葉を、言葉通りに受け止め、「自分だけが称賛されている」と思い込む傾向もあります。

「自分は他人にとって特別な存在だ」と感じている

「自分は優れいてる」という考えは、「自分は他人にとって特別な存在である」という思い込みにつながります。そのため、「自己陶酔型」の人は、周囲からの特別扱いを望む傾向が強いのも特徴です。

自分の意見と合わない人を排除したり、攻撃したりする

「自己陶酔型」の人は、意見の違う人を排除したり、攻撃的に振舞ったりするのも大きな特徴です。「自己陶酔型」の人は、自分が絶対的に正しいと思いこんでいることが多いため、「他人は間違っている」と決めつけがちで、それ故に他者を尊重したり、理解したりすることができません。また、周囲の人に批判をされた場合に、過剰に反応し、驚くほど攻撃的な態度をとるのも「自己陶酔型」の人に多い傾向とされています。

「本気になれば自分はなんでもできる」と信じている・自信過剰

「自己陶酔型」の人は、「本気になれば自分はなんでもできる」という信じがちで、自信に満ち溢れています。しかし実際は単に自信過剰に陥っているだけの人も多いものです。また、「なんでもできる」と豪語しながらも行動をとらない「口先だけ」という人が多いというのも特徴と言えるでしょう。

「自己陶酔型」の人とは、親でも距離を保つのがベター

「自分が誰よりも優れていて絶対的に正しい」と思い込んでいる「自己陶酔型」の人と接するのには困難を感じることもあるでしょう。「自己陶酔型」の人とは、例え親や家族であっても距離を保つのがよいと言われています。一説では、子供にとって最も悪影響な親の一種に「自己陶酔型」の親が挙げられることもあります。親に支配されないよう、適度な距離を保つのがよいでしょう。

また、職場の上司・同僚などで「自己陶酔型」の人に困っているという場合にも、最低限の挨拶・用件程度にとどめ、関わらないようにするのがベターです。

「自己陶酔」の英語訳とは?

「自己陶酔」は英語で”narcissism”を使う

「自己陶酔」を英訳する場合、“narcissism”を使います。また、「自己陶酔型の人」という意味では”narcissist”、「自己陶酔型の(形容詞)」は”narcissistic”と表現します。他にも、「self-love」あるいは「self-absorption」「a person who is self-absorbed」といった表現が使われることもあるようです。

例文
  • She is a narcissist.
  • She is so narcissistic.

また、単に「He really loves himself.(彼は本当に自分が好きだ)」という表現で「自己陶酔型」というニュアンスを出すことも可能です。

まとめ

「自己陶酔」とは、「自分の行動や容姿などにうっとりと酔いしれること」という意味の単語です。日常的に良く耳にするカタカナ語「ナルシスト(ナルシシスト)」と似た意味の表現ととらえるとわかりやすいでしょう。「自己陶酔型」の人は、自信過剰であったり自分とは違う考えの人に攻撃的であったりと、人づきあいの面では厄介なこともあります。適度な距離感を保つのがベターです。