「人たらし」の意味とは?特徴や「八方美人」との違いも解説

「あの男は人たらしだ」というと、どういった人物を思い浮かべますか?実は、「人たらし」は、ポジティブ・ネガティブ両方の意味で使用される言葉です。本記事では、「人たらし」の意味をはじめ、「八方美人」との違いについても詳しく解説します。また、「人たらし」と呼ばれる人の特徴や「人たらしとなるには?」もわかりやすく紹介しています。

「人たらし」の意味とは?

「人たらし」の意味は”たくさんの人にかわいがられる人”

「人たらし」の意味は、“たくさんの人に好かれている人・かわいがられている人”です。たとえば、いつも人に囲まれている人やコミュニケーションに長けていて人をとりこにしてしまうような人を指して「人たらし」と表現します。

本来の意味は「だます人・たぶらかす人」

「人たらし」は、本来は”人をだますこと・だます人”という意味の言葉です。「人たらし」は漢字では”人誑し”と書き、この「誑し」とは、騙したり誘惑したりすることを意味します。たとえば、女性を誘惑しもてあそぶ男性のことを「女たらし」と呼びますが、「人たらし」の「たらし」もこの「女たらし」と同じなのです。

このように、元々は「人を甘い言葉で誘惑しだます」という意味だった「人たらし」ですが、時代を経て「たくさんの人にかわいがられている人」という意味で使われるようになりました。

「人たらし」と「八方美人」「人たらしめる」の違いとは?

「八方美人」の意味は”要領よく人と付き合う人”

「人たらし」と似た意味の単語として「八方美人」が挙げられます。「八方美人」とは、”誰からも悪く思われないように、要領よく付き合う人”という意味の四字熟語です。本来「八方美人」は、”(どこから見ても)欠点のない美人”という意味ですが、転じて「嫌われないように誰にでも愛想を振りまく人・誰にでもいい顔をする人」というニュアンスで用いられています。

「人たらし」はポジティブ、「八方美人」はネガティブ

「人たらし」と「八方美人」は、似ているようでニュアンスが全く異なります。いずれも愛想があり人当たりの良い人を指す言葉として使用できますが、「彼女は八方美人だ」というと”誰にでもいい顔をする打算的な人”というネガティブなニュアンスを伴います。一方、「人たらし」も本来の「だます人」というニュアンスがあるものの、”誰にでも好かれる人・人当たりがよく周囲の人を惹きつける人”といったポジティブなニュアンスに受け取れる点が特徴です。

「人たらしめる」は異なる意味の表現

「人たらし」と似た表現に「人たらしめる」がありますが、「人たらしめる」とは全く別の意味を持つ表現です。

「~たらしめる」とは、「~にさせる・そのようにさせる」という意味の表現で、「事物をそのように決定づける要因」を意味します。つまり、「人たらしめる」とは「人にあらせる(人という状態にさせる)」という意味になり、たとえば、「人を人たらしめるのは教育であろう」などと使います。「人たらしめる=人たらしになる」というニュアンスで使用するのは誤りです。

「人たらし」とされる人物の特徴と具体例とは?

「人たらし」と呼ばれる人は笑顔で人当たりがよい

「人たらし」と呼ばれるような人は、いつも笑顔で人当たりが良いのが特徴です。その笑顔が人に囲まれる理由であるとともに、その人自身も人懐っこいというのも特徴として挙げられます。「人が好きだからこそ、人にも好かれる」というのが「人たらし」の大きな特徴と言えるでしょう。

ポジティブで面倒見が良いのも特徴のひとつ

「人たらし」と呼ばれる人は笑顔を絶やさないだけでなく、考え方も前向きです。相談事に乗るなど面倒見が良いのも特徴で、明るく笑い飛ばしてくれるような魅力があります。後輩には面倒見が良い一方で、上司や先輩の意見に素直に耳を傾けられるのも大きな特徴と言えるでしょう。そうした素直さが多くの人に受け入れられる長所となっています。

甘え上手な末っ子気質も「人たらし」の特徴

「人たらし」と呼ばれる人が目上の人にも好かれるのは、素直さに加え、甘え上手な一面があるからだと言われています。過度なわがままはもちろんNGですが、「ちょっとしたお願い」が上手い、甘え上手な点が「人たらし」の大きな特徴です。日ごろの人当たりの良さや素直さで上手な関係性を作れるため、「ちょっとしたお願いなら聞いてあげようかな」と思わせやすいともいえるでしょう。

歴史上の偉人では豊臣秀吉が「人たらし」の例

周囲の人に愛される「人たらし」は成功した人も多く、たとえば、歴史上の人物では「豊臣秀吉」の名前がよくあがります。

実は、「人たらし」が現代のような好意的な意味で使用されるようになったのは、作家の司馬遼太郎氏が自著にて「豊臣秀吉」をそう呼んだからだと言われています。上に立つ人間に気に入られる能力、あるいは周囲の人間を巻き込む魅力が「人たらし」にはあると言えるでしょう。

職場で好かれる「人たらし」になるには?

「笑顔で礼儀正しく」が人たらし術の基本

「人たらし」となるには、まず笑顔で礼儀正しくあることが基本です。人と壁を作らないよう笑顔でいることはもちろん大切ですが、ただ単にへらへらしている・馴れ馴れしいと思われては逆効果です。「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるように、同僚など近い間柄でも気遣いを忘れずにいることで、好かれる関係・信頼関係が築けます。

「人たらし術」にこだわりすぎると不自然に

人に好かれたい・頼りにされたいと躍起になると、不自然さが出てきます。また、急な態度の変化に相手は困惑するものです。そのため、好かれようと極端に親切にしたり、お節介を焼いたりするのは良くありません。まずはコミュニケーションを大切にし、相手の立場にたって考えるようにすると、次第に良好な人間関係につながると言えるでしょう。

「人たらし」の英語訳とは?

「人たらし」は英語で”scam”

「人たらし」は英語では”詐欺師”を意味する「scam」を使用します。同様の意味を持つ「con trick(信用詐欺)」という表現を使うこともあります。これらは「人たらし」を”人をだますこと・だます人”といった本来の意味で使った場合の英訳です。

「人たらし」を「誰からも好かれる人」という意味で使う場合には、「コミュニケーションをとるのが上手な人」というニュアンスの「smooth talker」がベターです。また、「調子のいいことを言う人」というニュアンスでは「a slick talker」という表現を使うこともできます。

まとめ

「人たらし」は、本来「人をだますこと・だます人」という意味でしたが、最近では「誰からも可愛がられる人・周囲の人に好まれる人」という意味で使用されています。「だます人」や「うまく取り入る人」というニュアンスで使用されることもありますが、好意的なニュアンスで使用されることが増えていると言えるでしょう。