「急逝」の意味とは?使い方の例文や類語「逝去」との違いも解説

「急逝した俳優を悼む」「会長が急逝した」という風に、人が亡くなった際に「急逝」という単語を使うことがあります。この「急逝」とは、どのような場合に使われるのでしょう。本記事では、「急逝」の意味と使い方を例文を交えて解説します。また、亡くなったことを表す類語「逝去」や「他界」などとの違いや、いまさら聞けない「急逝」の読みについても触れています。

「急逝」の意味と読み方とは?

「急逝」の読みは「きゅうせい」、意味は「急死」

「急逝」の意味は、“何の前触れもなく突然に亡くなること”です。つまり、元気だった人がある日突然亡くなったり、容態が急変して亡くなったりする突然死や急死を意味する単語が「急逝」です。

「急逝」の”逝”は、「立ち去って帰らないこと・死ぬことの婉曲表現」という意味を持つ漢字です。

「急逝」の読み方は”きゅうせい”

「急逝」の読み方は、“きゅうせい”です。「逝」の字は、”いく・ゆく”とも読みますが、「急逝」は”きゅうい・きゅうゆ”とは読みません。読み方を正しく覚えておきましょう。

「急逝」の使い方と例文とは?

突然の死を知らせる場合に使う

「急逝」は、突然の死を知らせる場合に用いられます。口語として会話で用いられるというよりは、文語として訃報の文章中などで使用されることの多い表現です。

例文
  • 急逝した俳優を悼む声が多方面から聞かれる
  • 社長の急逝により、緊急の取締役会が招集された

特に若年層の死を伝える場合に使うことが多い

急死したことを意味する「急逝」という単語は、年配の人が突然に亡くなった場合にも使われますが、年齢が比較的若く、働き盛りと呼べるような人が亡くなった際に用いられることが多いのが特徴です。「急逝」を使うことで、不運にも突然亡くなったその人を惜しむようなニュアンスを加えることができます。

例文
  • 妻が心筋梗塞のために急逝したのはもう10年も前のことだ
  • 取引先の人が急逝したと聞いて、驚きを隠せない

「急逝される」は尊敬語、身内には使わない

「急逝」という単語は、身内など間柄を問わずに使用することができますが、「急逝された」という表現は尊敬語にあたるため身内には使用しません。たとえば、「取引先の社長が急逝された」と使うことができますが、「昨夜父が急逝されました」と使うのは不適切です。

また、「弊社社長が急逝されましたことをご報告申し上げます」とも言いません。この場合、自社を遜って言う「弊社」という表現と「急逝された」という尊敬語が同一文章内に存在する点が誤りです。「弊社社長が急逝しました」が正しい表現です。

「急逝」の類語とその違いとは?

「急逝」の類語は”急死”

「急逝」の類語は“急死”です。「急死」は読んで字のごとく、”急に亡くなったこと”を意味する単語です。意味はほぼ同じですが、「急死」よりも「急逝」の方が改まった表現と言えるでしょう。

また、先述したように、まだ亡くなるような年齢でもない比較的若い人が亡くなった場合に「急逝」を使うことが多く、「急死」は単に突然の事故や病気など予想できない死を意味するのが相違点です。

「逝去」は目上の人に対して使う表現

「逝去(せいきょ)」もまた、亡くなったことを表す単語です。「逝去」は「人の死の尊敬語」として用いられ、目上の人や敬意を払うべき人が亡くなった際に用いられます。そのため、家族の死に対しては使わないのが通例です。また「逝去」という単語に尊敬の意が込められているため、本来「ご逝去」という表現は二重敬語となりますが、弔電では慣習的に「ご逝去」という表現が容認されています。

「他界」は宗教観の出る表現

人が亡くなったことを表す場合に「他界する(たかいする)」と表現することがあります。この「他界」とは、「死後の世界」あるいは「死後の世界に行くこと」を意味します。「祖母は昨年他界しました」と身内にも使うことができますが、問題となるのは「死後の世界」です。キリスト教では「天国」、仏教では「極楽浄土」が有名ですが、宗教・宗派によって「他界」の概念は様々です。日本では「他界=仏教」のイメージも強いので、相手の宗教によっては使用を考えた方が良い表現と言えるでしょう。

「永眠」も亡くなったことを意味する表現

「令和○年○月○日、永眠」などと使われる「永眠(えいみん)」も亡くなったことを意味する表現です。「永眠」は「永遠の眠りにつく」という意味で、「死」を表す婉曲的な表現として用いられます。「永眠」もまた、身内にも他人にも使うことができます。

「急逝」を受けた際のお悔やみの言葉とは?

通例通り「お悔やみ申し上げます」を使う

「急逝」の知らせを受けた場合にも、一般的なお悔やみの言葉「お悔やみ申し上げます」の挨拶で問題ありません。弔電などでは、「○○様の急逝の方に接し、ただただ驚くばかりです」「急逝を知り、驚きを禁じえません」と書き添えてもよいでしょう。

メールでは「略式ながら」と一言断るのがマナー

本来、通夜も告別式も直接参列できない場合には弔電を送るのがマナーですが、近年では訃報をメールで受けることも多いため、メールでお悔やみを述べるケースも増えています。メールで送る場合は、「略式ながら」と一言添えるのがマナーです。

例文

この度は急逝の知らせを受け、大変驚いております。
略式ながらメールにて、心よりお悔やみ申し上げますとともに、ご冥福をお祈り申し上げます

「急逝」の場合も亡くなった理由を尋ねるのはNG

「急逝」の知らせを受けると気になるのが「死因」です。「あんなに元気だった人がなぜ…」という思いは当然のものではありますが、ご遺族の心中を察して不躾な質問は避けるのがマナーです。くれぐれも「死因」を尋ねるような質問は避けましょう。

「急逝」の英語訳とは?

「急逝」は英語で”shocking death”や”die unexpectedly”

「急逝」を英語で表現する場合は、“shocking death(衝撃的な死)”あるいは“die unexpectedly(思いがけなく死亡する・突然死)”といった表現がよく用いられます。

例文

My mother had a shocking death in a traffic accident.(私の母は交通事故で急逝した)
She died unexpectedly in the prime of life at the age of forty.(彼女は働き盛りである40歳で急逝した)

また、単に「突然亡くなった」という表現で「急逝」を表すことも可能です。

例文

She died suddenly of a heart attack.(彼女は心筋梗塞で急逝した)

まとめ

「急逝(きゅうせい)」は、突然亡くなったことを意味する単語で、身内から他人まで幅広く使うことができます。中でも、「急逝」は働き盛りの人など比較的年齢の若い人に使うことが多いのが特徴です。これに対し、「逝去」は尊敬の念を込めた表現で目上の人に対して使う点で異なります。「他界」や「永眠」など他の類語とともに、ニュアンスの違いも覚えておきましょう。