「申し伝える」の意味と使い方!「伝え申す」との違い・類語解説

電話で伝言を受けた場合に使う「担当者に申し伝えます」というフレーズは、決まり文句として覚えている人も多いことでしょう。本記事では「申し伝える」の詳しい意味とシーンに応じた使い方を解説します。また、「申し伝える」と似た単語「伝え申す」「申し上げる」をはじめとした類語や英語表現についても紹介します。

「申し伝える」とは?

「申し伝える」の意味は”「言い伝える」の謙譲表現”

「申し伝える」の意味は、“取り次いで申し上げる”ことです。「言い伝える」の謙譲語にあたります。「言い伝える」とは”言葉を取り次ぐ・伝言する・口づてに後世に話を伝える”などの意味がありますが、「申し伝える」は、このうち”言葉を取り次ぐ・伝言する”の意味で用いられます。

「申し伝える」の敬意の先は話し相手、伝える相手ではない

「申し伝える」は敬語のひとつ”謙譲語”です。もう少し厳密に言うと、謙譲語の中でも「丁重語」という部類に該当する単語で、今話している相手に敬意を向けた表現です。「Aさんから聞いた伝言をBさんに伝える」という場合に「申し伝えます」というと、Aさんに対して敬意を払っていることになります。

「申し伝える」の使い方と例文とは?

「申し伝えます」は伝言を頼まれた際の決まり文句

「申し伝える」は、「申し伝えます」の形で電話対応の決まり文句として覚えている人も多いことでしょう。電話だけでなく、対面形式での伝言・取次でもよく用いられ、「申し伝えておきます」の表現もよく耳にします。

ただし、「申し伝えさせていただきます」という表現は誤りです。敬意の対象が異なる単語「いただく」を併用すると、矛盾した表現となってしまうためです。

電話を受けた場合の会話例

電話では、指名された相手や担当者が不在であった場合に使用します。一般に、不在中にかかってきた電話は折り返すのがマナーですので、場合によっては「担当者より折り返しご連絡いたします」と添えることもあるでしょう。

例文
  • ご伝言がございましたら、○○に申し伝えます
  • お電話いただきましたことを担当者に申し伝えておきます
  • 部長の○○にも、そのように申し伝えます

メールで使う場合の文例

「申し伝える」という表現は、メールでも使用可能です。この場合、メールで受けた質問・要望に関して社内の人間に伝える場合、あるいは連絡事項を共有する場合などが考えられます。

例文
  • 頂いたご要望に関しては、担当部署に申し伝えておきます
  • ご質問の件は、担当の佐藤に申し伝えました。回答まで今しばらくお待ちください。
  • 次回打ち合わせの日程変更の件、承知しました。田中にも申し伝えておきます。

対面形式で使う場合の会話例

取引先の人に会った際に、その場にはいない上司への伝言を預かる場合があります。そのような場合にも「申し伝えます」という返答ができるとスマートです。

例文
  • 本日はありがとうございました。窺ったお話は、弊社の○○にも申し伝えます。
  • ○○部長にもぜひ展示会にお越し下さるようお伝えくださいーかしこまりました。申し伝えます。

家族・同僚など身内に伝える場合に使う

「申し伝える」という表現は、あくまでも自分の身内に伝える際に使う表現です。そのため、基本的に社外の人に対し「申し伝えます」と使うことが多いでしょう。一方で、他部署の人から自部署の人への伝言を頼まれた場合に使うことも可能です。たとえば、総務部の先輩社員から自分の同僚に伝言を受けた、という場合にはその先輩社員に対して「申し伝えます」と使います。

なお、取引先の人に対して伝言をお願いする場合に、「○○さんにも申し伝えてください」と使うのは誤りです。伝言を依頼するような場合には、「お手数ですが、○○さんにもお伝えください」といった表現を使用します。

「申し伝える」と類語「伝え申す・申し上げる」の違いとは?

「伝え申す」よりも「申し伝える」がベター

「申し伝える」と似た表現に「伝え申す」という単語があります。「伝え申す」の意味は、「申し伝える」と同じととらえてよいですが、一般には「申し伝える」という表現の方がメジャーです。そのため、「伝え申す」が誤りではない場合でも「申し伝える」と使った方が伝わりやすいと言えるでしょう。

「申し上げる」は「言う」の謙譲語

「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。「言う」の謙譲語「申す」をさらに丁寧にした表現が「申し上げる」と言えるでしょう。「申し上げる」と「申し伝える」は、いずれも謙譲表現ですが、「申し上げる」には「伝える」というニュアンスはありません。単純に「話す・言う」というシーンで使われるのが「申し上げる」です。

例文
  • この度のご支援、厚く御礼申し上げます
  • 多大なるご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます

「お伝えする」は伝える相手を立てる表現

「お伝えする」は、「伝える」の謙譲語で、自分を遜り、伝える相手へ敬意を払った表現です。たとえば、「私から部長へお伝えします」のように、伝える相手(=部長)へ敬意を払いたい場合に使う表現です。「今回の契約内容についてお伝えします」のように、取引先の人など、目上の人を前にしても使います。

これに対し、「申し伝える」は、伝える相手ではなく、(伝言を受けた)今話している相手へ敬意を示した表現という点で異なります。

「申し伝える」の英語訳とは?

「申し伝える」は英語で”知らせる”と表現する

「申し伝える」を英語で表現する場合には、使役動詞”let(~させる)”を用いて、「let 人 know(人に知らせる)」と英訳します。

例文
  • I’ll let him know about this.
  • I’ll let her know about the schedule.

電話応対で「伝言を取り次ぐ」という場合のフレーズ

一方、電話で伝言を受けた場合には「I’ll make sure he gets the message.」という表現が一般的です。「メッセージは確かに伝えます」というニュアンスになります。他にも、「I’ll pass the message to him.」や「I’ll pass the message on.」「OK, I’ll pass that on」などもあります。

まとめ

「申し伝える」とは、「伝言する」という意味で使われる謙譲表現です。この場合の敬意は、伝言を述べる相手ではなく、今伝言を預かった相手(今話している相手)となるのがポイントで、たとえば社外の人から自社の人間に伝言を預かった場合などに「申し伝えます」とよく用いられます。電話だけでなく、メールや対面形式でも使えるのでぜひ覚えておきたい表現です。