「寛恕(かんじょ)」は、お詫びや謝罪の場面で使われる単語です。ビジネスシーンでは、取引先などの相手に対して「ご寛恕」という言い方でよく使います。
この「寛恕」について、意味や読み方、使い方も例文を交えて解説します。また「寛恕」の類語として「宥恕(ゆうじょ)」「容赦」のほか、対義語や英語訳も紹介しています。
「寛恕」とは?
「寛恕」の意味は”広い心でゆるすこと・思いやりが深いこと”
「寛恕」の意味は、“広い心でゆるすこと・度量が広く、思いやりが深いこと”です。つまり、「相手の過失・過ちを咎めずに、広い心でゆるす」ことが”寛恕”です。この意味から、「許してほしい」と伝える場合に使われることが多いのが特徴です。
「寛恕」の読み方は”かんじょ”
「寛恕」の読み方は、“かんじょ”です。「寛恕」の”寛”は、「かん」という音読みの他、訓読みでは「くつろぐ」と読むこともできます。その読みの通り、気持ちにゆとりがある様を表す漢字です。一方、「寛恕」の「恕」は、「じょ」という読みの他には、訓読みでは「ゆるす」と読みも持ちます。思いやり・同情などの意味を持つ漢字です。
「寛恕」は”怨”や”怒”とは異なる漢字
「寛恕」の「恕」の漢字は、一見すると「怨」や「怒」の字にも思えますが、いずれも全く異なる意味を持つ漢字です。「怨」の字は、「怨恨(えんこん)」などの単語にもあるように「うらみ・うらむ」を意味します。
「寛恕」の持つ意味からも分かるように、この場合は「ゆるす」という意味の「恕」を使うのが正解です。書き間違いのないよう覚えておきましょう。
「寛恕」のビジネスでの使い方と例文とは?
「寛恕」は謝罪・お詫びなど許しを請う場面で使う
改まった意味、硬いニュアンスを持つ「寛恕」は、ビジネスシーンでは謝罪やお詫びなどで使われます。取引先や顧客に対して失礼があった場合や不手際が生じた場合などに、謝罪の言葉とともに使用されるのが通例です。この場合は、尊敬を表す接頭語「ご」をつけて「ご寛恕」とします。
- 大変急ではございますが、本日休業日とさせていただきます。何卒ご理解ご寛恕の程お願い申し上げます。
- 書類に万が一不備などございましたら、ご寛恕くださいますようお願いいたします。
- 先日の件につきましては、ご理解の上、ご寛恕願いたく存じます。
- この度は部下のご無礼について、ご寛恕を請う次第です。
寛容な態度への感謝の言葉に用いられることも
許しを請うようなシーンだけでなく、こちらの不手際に対する寛容な態度に対し、感謝を述べる際にも「寛恕」の言葉を用いることがあります。たとえば、「ご寛恕いただきまして、ありがとうございます」というと、相手の許しをもらったことに対するお礼の言葉です。
- 先日のこちらの不手際、ご寛恕いただき御礼申し上げます。
- この度のご無礼につきまして、ご寛恕いただき誠にありがとうございました。
「寛恕」は書き言葉として用いられるのが一般的
「寛恕」はビジネスシーンで用いられる言葉の中でも、硬い印象を与える単語です。そのため、口頭で使うことはほとんどなく、文書やメールでの書き言葉として用いられています。
口頭で使っても誤りではありませんが、仰々しさが出てしまい、かえって謝罪の気持ちが正しく伝わらない懸念もあるので配慮が必要です。
「寛恕」の類語とは?
類語①「宥恕(ゆうじょ)」は”寛大な心で罪を許すこと”
「寛恕」と同じ硬い表現としては“宥恕(ゆうじょ)”が類語として挙げられます。「宥恕」とは、”寛大な心で罪を許すこと・決して咎めずに見逃してあげること”という意味です。そのため、相手に損害を与えた場合に「ご宥恕賜りたく存じます」や「ご宥恕ありがとうございます」などと使います。
類語②「容赦(ようしゃ)」は似た意味の単語
「寛恕」と似た意味の単語には“容赦(ようしゃ)”が挙げられます。ビジネスシーンでは、「ご容赦ください」などと使われますが、この「容赦」には”大目に見て許すこと・手加減すること”という意味があります。
「ご容赦ください」は、どちらかというと直接的に「許してください」という意味です。これに対し、「ご寛恕ください」は相手の寛容な心に期待した表現であり、敬意の強い表現であるという点で異なります。
- ご迷惑をおかけしておりますが、何卒ご容赦くださいますようお願いいたします。
- ご容赦いただけましたら幸いです。
類語③「諒恕(りょうじょ)」は”事情を思いやり許すこと”
「諒恕(りょうじょ)」には、”事情を思いやり許すこと”という意味があります。「宥恕」同様に、「ご諒恕賜りたく存じます」のような使い方をします。「寛恕」と似た意味の表現ではありますが、使用頻度の低い単語です。認識している人も少ないかもしれません。
「寛恕」の対義語とは?
反対の意味の単語は「叱責」や「拒絶」
「寛恕」の反対の意味にあたる単語としては、“叱責”や“拒絶”が挙げられます。「叱責(しっせき)」とは、”失敗などを叱り、咎めること”です。「広い心で許す」という意味の「寛恕」とは、対義的表現と言えるでしょう。
また、「断る、受け付けない」という意味の「拒絶」も「寛恕」とは反対の意味と言える単語です。相手の謝罪を受け入れない態度を表す際にも「拒絶する」と使うことができます。
「寛恕」の英語訳とは?
「ご寛恕ください」の英語訳では”apology”を使う
「寛恕」の持つ”許し”という意味の英単語は「forgiveness」ですが、相手に許しを請うような謝罪の表現では、「apology」を使うのが一般的です。「apology」は”謝罪”という意味の名詞です。「謝る・謝罪する」という意味では動詞”apologize”を使用します。
- Please accept my sincere apologies.(ご寛恕ください)
- My apologies.(すみませんでした)
- I apologize if there are any errors in the data.(資料に不備がありましたらご寛恕ください)
まとめ
「寛恕(かんじょ)」とは「広い心で許すこと」という意味の単語で、「ご寛恕の程お願いいたします」のように、謝罪の意を表するとともに許しを請うような場面で用いられます。ビジネス用語の中でも硬い表現ですので、口頭で用いるよりは書き言葉として使われる単語です。「寛恕」の「恕」は、「怨」や「怒」と誤りやすいので、特に手書きの場合には注意が必要です。