「按分」の意味とは?「按分計算」や類語「折半」との違いも解説

「予算を按分する」「経費を按分して割り出す」など会計用語としてしばしば目にする「按分」という単語ですが、具体的にはどういった意味を持つのでしょう。本記事では、「按分」の意味を例文とともに紹介します。また、確定申告の知識としても必要な「按分計算」の具体例や類語「配賦」「折半」などとの違いについても解説します。

「按分」とは?

「按分」の意味は”割り振ること”

「按分」の意味は、“基準となる数量をもとに比率を算出し、それに応じて割り振ること”です。簡単に言うと、「物品や金銭などを基準を用いて割り振ること」が「按分」です。

「按分」は常用外漢字、”案分”とも書く

「按分」はしばしば「案分」の表記で用いられることがあります。これは、「按分」の「按」という漢字が常用漢字ではないことが理由です。読みにくさ・わかりにくさに配慮しているに過ぎないため、「按分」と「案分」のいずれも意味は同じです。

「按分」の使用例

「按分」は、ビジネスシーンでは会計用語として使われることが多いのが特徴です。たとえば、自営業の人が経費(事業費)と生活費(私費)を分ける際によく用いられます。

例文
  • まずは予算を支店ごとに按分計算しよう
  • 自宅を事務所として使用しているため、家賃を経費として計上するには按分計算が必要だ
  • 来季予算の按分のために、プロジェクトの進捗状況を報告してください

選挙における「按分票」とは

選挙時には、候補者の中に同一氏名(あるいは、同一の氏または名)の者が2人以上いる、というケースが時折発生します。その選挙において、その同一氏名(あるいは、同一の氏または名前)のみが記入され、正確な投票先が分からないものを「按分票」と呼びます。たとえば、「田中」と書いただけでは田中一郎・田中太郎のどちらか判別がつかない場合の「田中」とのみ書かれた票が「按分票」です。この「按分票」はそれぞれの候補者の得票数の割合に応じて、分けられます。

確定申告・経費の「按分計算」とは?

個人事業主の経費を私用・業務用に分ける計算のこと

「按分計算」とは、確定申告などにおいて個人事業主の人が発生した経費を私用(生活費)と業務用(経費)に分ける計算のことです。たとえば、自宅を事務所として使用している場合、地代家賃や光熱費、通信費などの一部が業務用の経費として計上することができます。その費用として計上するための計算が「按分計算」です。

按分割合の基準にきまりはなし、合理的ならOK

「按分計算」では、各費用をそれぞれの利用度合いに応じて生活費と経費に按分します。例えば、使用面積・使用日数・使用時間などを基準として按分するのが一般的ですが、厳密なきまりがあるわけではありません。それぞれの実情に合った合理的な按分比率であれば問題ないとされています。

按分計算の実例

では、具体的にはどういった計算例が考えられるのでしょう。一般的な按分計算の例をいくつか紹介します。

地代家賃の按分比率は面積計算が主流

地代家賃の「按分」は、使用面積で計算するのが一般的です。住居スペースのうち、仕事部屋(いつも作業する部屋・机があるスペース)を自宅全体の面積で割って按分計算する方法です。たとえば、自宅50平米メートル、家賃10万円の物件で、事業スペースが20平米だった場合の按分比率は40%となります。ここから、経費として計上できる地代家賃は、4万円(10万円の40%)と計算できます。

電気代は時間で計算

次に光熱費ですが、電気代は業務時間から計算するのが一般的です。たとえば、月の電気代金が1万円、1週間のうち大体25%が業務時間(平日約8.4時間就業)とすると、月2500円が経費として計上できる計算になります。電気代に関しては、コンセントの差込口数(自宅にある全コンセント数と業務で使用するコンセント数の比率)やパソコンの消費電力から按分比率を出すこともあります。

通信費やガソリン代もそれぞれ按分計算が必要に

他にも、按分計算されるものは様々で、通信費やガソリン代もそのひとつです。通信費は使用日数や使用時間、ガソリン代は車の使用日数や利用距離で按分することが多いでしょう。

「按分」の類語とは?

似た意味の単語は「配賦」

「按分」と似た意味の単語には、「配賦」が挙げられます。「配賦(はいふ)」とは、”割り当てる”という意味です。一般には、部品や製品の費用配分に対して用いられることが多いでしょう。たとえば、「食事代の割り勘」なども「配賦」の良い例です。ただし、厳密に言うと、割り振ることのできない量(額)に対しては「配賦」は使用できない、という特徴があります。

「配分」は物を分ける場合に使う

「配分」もまた「按分」と似た意味の単語です。「配分」とは読んで字のごとく、”配り分けること”を意味し、主に物を分ける際に用いられます。基準を用いて分ける「按分」とは異なり、「全員に等しく配る」というニュアンスを持つ表現です。

なお、ビジネスシーンでは、「利益を配分する」という使い方を耳にすることもありますが、お金に関しては「分配(意味:分けて配ること・多くの人に分けること)」という単語を好んで使うこともあります。

「折半」は”半分に分けること”

「折半」とは、”半分に分けること”を意味する単語です。主に金品に対して使用される表現で、「費用は折半」というと”かかった費用をちょうど二等分にする”という意味になります。そのため、食事代を2人でぴったり割り勘にする場合には使用できる単語ですが、「4人の食事代を4人で割り勘にする」という場合には「折半」とは言いません。

「按分」の英語訳とは?

「按分」を英語にすると”distribution”

「按分」の英語に相当する単語は“distribution”です。「distribution」には、”分配・配給・(生物の)分布”などの意味があります。「the distribution of wealth(富の分配)」といった使い方をし、動詞では「distribute(分配する)」となります。「配分する」という意味の単語はほかにも、「apportion」が挙げられます。なお、「按分」のように、「基準に比例して分配する」という意味で使用する場合は、「proportionally(比例して)」とともに使用するのが通例です。

例文
  • to distribute the profits proportionally(利益を按分する)
  • to apportion the burden proportionally (負担を按分する)

まとめ

「按分」とは、「基準に比例して割り振る」という意味の単語で、主に経費の計算などにおいて用いられる単語です。たとえば、確定申告時の私用・業務用の「経費の按分」「按分計算」などがその代表的な使用例と言えるでしょう。なお、「按分計算」においてはエクセルなどのツールを用いて計算するのが一般的です。自分に合った方法を探して、スムーズな経費計算・確定申告を目指しましょう。