「狡猾(こうかつ)」は「狡猾な手口だ」「狡猾さがうかがえる」など、ずる賢い様子に使う言葉です。基本的には褒め言葉ではなく、悪知恵がはたらくことに言及するときに使います。
本記事では、この「狡猾」について、意味や語源、使い方を解説します。また類語の「狡猾老獪(こうかつろうかい)」や対義語、英語訳など関連用語についてもまとめました。
「狡猾」の意味・読み方・語源とは?
「狡猾」の意味は「悪賢いこと・ずる賢いこと」
「狡猾」の意味は、“悪賢い様・ずる賢いこと”です。なお、口語表現としてもよく使う「ずるい」という単語は、漢字では「狡い」と書きますが、小説などでは「狡猾い」と書くこともあります。
「狡猾」の読み方は”こうかつ”
「狡猾」の読み方は“こうかつ”です。
「狡猾」の語源は漢字の成り立ちにあり
「狡猾」という単語の意味は、漢字の成り立ちを見るとよくわかります。「狡猾」の”狡”の字は、「獣が身をかわして逃げる様」を表し、「狡猾」の”猾”も同じく「けものへん」の漢字で、”(動物が良く動いて)乱れる”という由来があるようです。また、「狡猾」の「狡」だけでなく、「猾」もまた「ずるい・わるがしこい(猾い)」という意味を持つ漢字です。
同じ「ずるい」という意味の漢字を重ね、強調した意味を持たせたのが「狡猾」という単語です。
「狡猾」の使い方と例文とは?
「狡猾な○○」「狡猾に○○する」と使うのが一般的
「狡猾」は、「狡猾な」や「狡猾に」という形で使うのが一般的です。悪知恵を働かせたような言動にたいして、「狡猾な~」と使います。
- 狡猾な企みをしていることは明らかだ
- 狡猾にふるまい、責任逃れをするのは政治家の習性だ
- 狡猾な人にはなりたくない
「狡猾さ」として使うことも多い
「狡猾さ」という単語もよく見聞きします。たとえば、「彼の狡猾さ」のように、特定の人の「狡猾」な言動に言及する場合などに使うことができます。
- 彼の狡猾さは有名だ
- 彼の業績は狡猾さの上に成り立っている
- 彼女の表情には狡猾さがにじみ出ている
「狡猾老獪」は”ずる賢さ”を表す四字熟語
「狡猾」を使った表現には”狡猾老獪(こうかつろうかい)”という四字熟語があります。「老獪」とは、”数多くの経験を積み、ずる賢くなる様・悪賢くなるだけの経験が豊富な様”を表す単語です。「老獪な政治家」などと使うことができます。
「狡猾」「老獪」はどちらも「ずる賢い・悪賢い」という意味ですが、「老獪」の単語を加えることで、「経験豊富でずる賢い」というニュアンスに変わります。そのため、十分な経験を持つ人や年配者に対して「ずる賢い」という場合に「狡猾老獪」と使います。
「狡猾」の類語とは?
「狡猾」と似た意味の単語は”邪知”
「狡猾」と似た意味を持つ単語には“邪知”が挙げられます。「邪知(じゃち)」とは、”悪知恵”つまり「悪い方面へと働く知恵」という意味の単語です。また、「心のうちに悪意を隠している様・裏でこっそりと悪いことをする様」という意味を持つ「陰険(いんけん)」も、「狡猾」と似たような意味を持つ単語と言えるでしょう。
- 彼女のふるまいには邪知な考えが見え隠れしている
- 同僚の陰険なふるまいには辟易する
「老獪・老猾」も”ずる賢い”という意味を含む単語
「狡猾老獪」という四字熟語として紹介した“老獪(ろうかい)”もまた、「狡猾」と似た意味を持つ単語でした。この「老獪」と同じく、”経験を積んでいて、悪賢い様”を表す単語に「老猾(ろうかつ)」という単語があります。「老獪」と「老猾」はいずれも、経験豊富な人・年配の人に対して「ずる賢い」という場合に使う表現です。
「狡い(こすい)」も似た意味の表現
「狡猾」の「狡」の字は、”ずるい”という訓読みの他に「こすい」という読み方をすることもあります。
「こすい」とは、”悪賢い・けちけちしている”という意味の単語で「狡猾」と似た意味ですが、東日本に生まれ育った人にはあまりなじみのない表現かもしれません。というのも、「こすい」は主に西日本や北陸地方で用いられる読み方で、地域や出生地によっては意味が伝わりにくいと考えられます。そのため、「狡い」という表記は、一般には「ずるい」と読むのがベターです。
「狡猾」の対義語とは?
反対の意味の単語は「愚直」や「実直」
「狡猾」と反対の意味を持つ単語には“愚直”や“実直”が挙げられます。「愚直(ぐちょく)」とは、”ばか正直な様・正直すぎて気が利かない様”という意味です。ネガティブなニュアンスで使用されることもありますが、「ずる賢い」というニュアンスとは正反対の意味と言えるでしょう。
一方、「実直(じっちょく)」には、”真面目で正直なこと”という意味があります。「実直な青年」というように、褒め言葉として使われる表現です。
「老獪」の対義語には”老練”も
「狡猾」の類語として挙げた”老獪(ろうかい)”という単語には、「老練(ろうれん)」という対義語があります。「老練」とは、”数多くの経験を積み、(そのことに)慣れて巧みなこと”という意味の表現で、年齢とともに培われた経験から物事に慣れている様に対して使われます。「老練な技術者」などと使うことが可能です。
「狡猾」の英語訳とは?
「狡猾」は英語では”crafty”や”cunning”を使う
「狡猾」を英語で表現する場合には、“crafty”や“cunning”を使用します。いずれも、「ずるい・悪賢い」という意味の英単語です。同じく、「ずるさ・狡猾さ」という意味の単語では「guile」も挙げられます。
- She is full of cunning.
- He is full of guile.
- He is a very cunning man.
まとめ
「狡猾」とは、「ずる賢い様・悪賢い様」という意味の単語です。「狡猾さ」あるいは「狡猾なふるまい」などの形でよく用いられます。日常やビジネスシーンで頻繁に使用するというよりは、小説など作品で目にすることが多い単語です。「こうかつ」という読みも併せて覚えておきましょう。