「参与」の意味とは?役職としての位置づけや「参事」との違いも

企業内の役職では、部長や取締役などのほかに「参与」という肩書を目にすることがあります。この「参与」とはどのような役職なのでしょう。本記事では、「参与」という単語の本来の意味と使い方をはじめ、役職としての「参与」の位置づけと給与などの具体的な特徴・違いについても解説します。また、「参与」の英語訳も紹介しています。

「参与」の意味や読み方とは?

「参与」の意味は”かかわること・加わること”

「参与」の意味は、“事業などにかかわること・加わること”です。「事業に加わる」という意味だけでなく、「(事業などの)相談を受ける」というニュアンスもあります。

「参与」の読み方は”さんよ”

「参与」の読み方は“さんよ”です。

「参与」は役職のひとつとしても知られる

「参与」は、「参与する」という使い方のほかに、役職のひとつとしてもよく知られています。

たとえば、内閣総理大臣の相談役的立場の役職として「内閣官房参与」という役職もあります。この役職としての「参与」は、古くは「王政復古の大号令(1868年)」の際に設けられた、事務方の役職のひとつですが、現代では公務員だけでなく、一般企業でも用いられる役職です。

「参与」の使い方とは?

「参与する」と使うのが一般的

「参与」という単語は、「参与する」という表現で使われることが多いでしょう。「○○に参加する」と同じような使い方ができます。

例文
  • 事業開発に参与する
  • 専門家に、有識者としての参与を打診する
  • 本部長自らが参与し、指揮を執ることが決まったようだ

「参与観察」とは異文化社会研究の一手法

「参与」を使った表現では、「参与観察」という言葉があります。「参与観察」とは、文化人類学における社会調査方法のひとつで、調査者本人が、調査対象である社会・集団に加わり、ともに生活をしながら観察・資料収集をする手法のことです。この「参与観察」という手法は、主に、異文化社会研究などに用いられます。

「参与」の役職における位置づけ

「参与」の歴史は古いとしても、「社長」「部長」などに比べると知名度は低いのではないでしょうか。「参与」という役職について、もう少し詳しく解説します。

「参与」は経営者を業務上補助する立場にある

役職で「参与」というと、会社などの組織において、経営者(あるいは代表者)を業務上で補助する立場を意味します。そのため、「参与」となる人物には、経営者クラスの管理者と同レベルの能力が求められます。

「参与」は簡単に言うと部長クラス、ただし定年後の人が多い

経営者を補助する役割を担う「参与」は、専門的な知識で特定の業務を担う役職です。そのため、一般的な役職とは区別されますが、位置づけとしては「本部長、あるいは部長クラス」と言えるでしょう。ただし、「参与」は「部長」のように部下は持つことはないという点でも、ほかの管理職とは異なります。

また、「参与」は専門性が高いという特性から、管理職経験者が定年後に就くことが多いのも特徴です。定年後も、「その専門知識を生かして業務をサポートしてほしい」という場合に「参与」という役職を与えることが多いのです。

「参与」と同じ役職には「理事」や「参事」

「参与」と似たような役職には、「理事」「参事」などがあります。いずれも、業務には加わるものの部下は持たないのが特徴です。
株式会社における「理事」は一般に、執行役員などとともに、経営などに関わるような重要事項を遂行する役割を担います。「参事」は、元々は公務員の役職名として使用されていましたが、一般企業においては特定分野の知識・経験ををもとにアドバイスなどを行うことが多いでしょう。「参事」は役職として以外にも、一般企業では職能資格として利用する場合もあるようです。

「参与」と「参事」では”参与”が上

「参与」と「参事」は言葉は似ていますが、位置づけで言うと、「参与」の方が上です。一般に、「理事」は取締役クラス、「参与」は本部長・部長クラスになり、「参事」は部長または課長クラスと考えてよいでしょう。

「参与」の給料は、その前の役職相当額が通例

「参与」はほかの役職で言うと、本部長あるいは部長クラスと述べましたが、給料についてはそれと同等とは限りません。というのも、「参与」の給料は、その前の役職と同等額に設定されるケースが多いからです。たとえば、部長職を定年退職後に「参与」となった場合、「参与」となる前の部長時代の給与相当額が適用されます。取締役を経て「参与」となった人は、取締役時代の給与に近い額がもらえると言えるでしょう。前役職からスライド式で適用されるのは給料だけでなく、あらゆる待遇に言えることで、「参与」の前職は今の立ち位置を知る大きな手掛かりとなります。

「参与」の呼び方は”○○参与”でOK

聞きなれない肩書のため、「参与」は呼び名に戸惑うこともあるかもしれません。「参与」は、基本的には「田中参与」のように「名前+肩書」の呼び方で問題ないでしょう。また、ほかの役職の人を役職名のみで呼ぶことがあるように、「参与はどうされますか?」「参与のご意見をお聞かせください」のような使い方も可能です。

メールや宛名書きでは、「参与 田中様」という表記が適切でしょう。社内でのやり取りであれば、「田中参与」としてメールを書き出しても問題ありません。

「参与」の英語訳とは?

「参与」は英語で”Counselor”

「参与」は英語で“Counselor(カウンセラー)”を使用します。「Senior Counselor(シニアカウンセラー)」、あるいは「Consultant(コンサルタント)」という表現を用いることもあるようです。いずれも、「参与」の持つ「サポート役・相談役」という役割をイメージさせる単語です。なお、日本では肩書として「相談役」という表現を用いることがありますが、この「相談役」は「Senior Adviser」という表記が用いられます。混同しないよう注意が必要です。

「参与する」の英語訳は”take part in”

役職ではなく、「参加する」という意味で”参与する”という場合の英訳は、「take part in~」という慣用表現を用いるのが通例です。たとえば、「to take part in the council(会議に参与する)」「to take part in some business(事業に参与する)」といった使い方をします。また、「経営に参与する」という場合には、「have a voice(発言権がある)」という表現を使い、「have a voice in the management」と表現することも可能です。

まとめ

「参与」とは、「かかわること・加わること」を意味する単語で、「経営に参与する」などビジネスシーンでもよく用いられます。加えて、「参与」は役職・肩書としてもしばしば目にする単語です。「参与」は特定の部下を持つような役職ではなく、専門的な知識をもとに経営者や代表者の補助的役割を担う人物を表します。部長などとは一線を画す役職・肩書として覚えておきましょう。