スポーツなど勝負事に対して、「判官贔屓」という四字熟語を使うことがあります。この「判官贔屓」とは、どういった意味があり、またどう使うのが正しいのでしょう。本記事では、「判官贔屓」の意味だけでなく、読み方や由来のほか、使用例や類語・英語訳などの関連用語も含めて解説します。
「判官贔屓」とは?
「判官贔屓」の意味は”同情し声援する気持ち”、由来は「義経」
「判官贔屓」の意味は、“弱者や敗者に同情し、声援する気持ち”です。「判官贔屓」の「判官」とは、古くからある役職のひとつで、この場合は源義経を指します。兄、頼朝に滅ぼされた不遇な運命を持つ判官源義経に、多くの人々が同情したのが「判官贔屓」という四字熟語の由来とされています。弱い者だけでなく、「薄幸な者」に同情する気持ちを指すこともあります。
「判官贔屓」には”公平に扱えなくなる様”という意味も
「判官贔屓」には、単に「同情し声援する」というだけでなく”弱者や不遇なものに味方をする・肩を持つ”という意味もあります。追い込まれている者・不利な側に肩入れし、公平な判断ができなくなる様、あるいは「敢えて」公平には扱わなくなる様を指しても「判官贔屓」と使うことができます。
「判官贔屓」の読み方は”ほうがんびいき”
「判官贔屓」の読み方は、“ほうがんびいき”です。「はんがんびいき」という読み方を用いられることもあります。一方で、「はんかんびいき」とは読みません。「判官」の「官」は濁るのが正しい読みで、「ほうがん」あるいは「はんがん」のいずれかを使用しましょう。
「判官贔屓」の使い方と例文とは?
スポーツの試合などで用いられることが多い
「弱者に同情し、声援する」という感情を表す「判官贔屓」は、勝負事で使われることが多い四字熟語です。その代表的な例がスポーツです。また、勝ち負けに限らず、優劣が生じるような場面でも用いることができます。
- 高校野球を見ていると、つい判官贔屓してしまう
- ダメな子程かわいいというのも、判官贔屓のひとつだが、努力はみな称えられるべきだ
- 判官贔屓のような感情は、公平な判断の邪魔になる
心理学的には「負け犬効果」とも
「判官贔屓」は、不公平ともいえますが、元々は「困っている人を見ると手を差し伸べたくなる・応援したくなる」という心理を表します。この「弱い立場の人・不利な状況におかれている人」に手を指しのべ、応援したくなるような効果は、心理学的には「負け犬効果・アンダードッグ効果」と呼ばれます。
たとえば、「万年最下位からトップに上り詰めたチームのサクセスストーリーがメディアで話題になるのは、アンダードッグ効果を利用したものです。「弱き者のひたむきな姿」にひかれるのも「アンダードッグ効果」のひとつと言えるでしょう。
「判官贔屓」は嫌われることも
「判官贔屓」の声援を受け成功する、ということもありますが、「判官贔屓」を利用しようとするのは得策ではありません。自らの弱さを見せることで味方を得られる場合もありますが、さらに厳しい叱責を受けたり、あるいは弱さに付け込まれたり、とマイナスに働くこともあるからです。
また、そもそも「判官贔屓」は不公平とみなし、よく思わない人もいます。もらった声援はありがたく受け取るにしても、同情を誘うようなことは控えた方が賢明です。
「判官贔屓」の類語とは?
似た意味の四字熟語は「依怙贔屓」
「判官贔屓」と似た意味を持つ四字熟語には“依怙贔屓”が挙げられます。「依怙贔屓(えこひいき)」とは、”全員に公平に接するのではなく、自分の身内やお気に入りを特別に扱うこと”という意味で、「内輪贔屓」あるいは「身内贔屓」とも言うことができます。
また、四字熟語以外では、「愛顧」も似た意味の単語です。「愛顧(あいこ)」とは、”目をかけ、引き立てること”という意味があります。「愛顧」には、”弱い立場の者を”という意味はありませんが、たとえば、顧客に対し「ご愛顧いただきありがとうございます」「ご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます」などの表現はビジネスシーンでもよく用いられます。
「判官贔屓」の対義語とは?
反対の意味の四字熟語は「権威主義」
「判官贔屓」と反対の意味を持つ四字熟語では、“権威主義”が挙げられます。「権威主義」とは、”権威をもって他を圧迫する態度・行動”や”権威に無批判に従う態度・行動”を指します。「弱い人に対して同情する」という意味の「判官贔屓」とは反対の意味を持つ表現です。
反対の意味の表現には「勝ち馬に乗る」も
「判官贔屓」と反対の意味を持つ慣用表現には、“勝ち馬に乗る”も挙げられます。「勝ち馬」とは”強い者”のたとえで、「勝ち馬に乗る=強い者の側につく」という意味になります。また、「権力者の機嫌を取る者・権力者におもねる者」という意味では”茶坊主”という表現もあります。
「判官贔屓」の英語訳とは?
英語では「underdog(負け犬)」を使って表現する
「判官贔屓」と似た意味の慣用表現は英語にもあります。英語では、「負け犬」を意味する“underdog”という単語を使用し、「side with the underdog(負け犬の側につく)」と表現します。また、「sympathy for a tragic hero(悲劇の英雄に同情する)」という表現も同様の意味で使用可能です。
- Japanese sympathy for the underdog.(日本人の判官贔屓)
- Japanese people tend to side with the underdog.(日本人は判官贔屓の傾向にある)
まとめ
「判官贔屓」とは、悲劇的な運命をたどった源義経に同情する心理から生まれた四字熟語で「弱者・敗者に同情し、声援を送る気持ち」を指します。また、転じて、「弱い側に肩入れする・弱い側に味方をする」という不公平さを示す表現としても用いられます。あまり良い意味合いではありませんが、「アンダードッグ効果」は心理学的にも認められるもので、「判官贔屓」は避けられない深層心理ともいえるかもしれません。