「趣向」の意味とは?「趣向を凝らす」など使用例や類語・英語訳

ビジネスシーンでもしばしば用いられる「趣向」にはいくつかの意味があります。本記事ではその意味をはじめ、「趣向を凝らす」「趣向を変える」といった具体的な使い方について例文とともに解説します。また、「趣向品」と「嗜好品」のような間違えやすい例や類語・英語訳などの関連用語についても触れています。

「趣向」の意味と読み方とは?

「趣向」の意味は”意向・工夫”

「趣向」の意味は、“おもむき・意向・おもむきを出すための工夫”です。「おもむき」とは”あじわい”や”面白み”のことで、端的に言うと「物事を面白くするため、あるいは味わいを出すための工夫」を指して「趣向」と使います。加えて、「意向」つまり”心の向かうところ・考え”という意味で用いられるのもポイントです。

なお、上記とは別に、歌舞伎・浄瑠璃では「新しい変化を与える工夫」を、俳句では「句の構想」を指して「趣向」と使うこともあります。

「趣向」の読み方は”しゅこう”

「趣向」の読み方は“しゅこう”です。まれに「しこう」と読む人がいますが、それは誤りです。「趣向」の”趣”は、「趣味」などの単語にもあるように音読みでは「シュ」と読みます。訓読みでは、「趣向」の意味にもある”おもむき”という読みになります。

なお、「趣向」と間違われやすい単語に「嗜好(しこう)」がありますが、これについては後ほど解説します。

「趣向」の使い方と例文とは?

「趣向を凝らす」という使い方でよく知られる

「趣向」の使い方で最も多いのが“趣向を凝らす”という表現ではないでしょうか。「趣向を凝らす」とは、”より良いものになるよう工夫する”という意味です。「趣向を凝らした○○」と使うと、”様々な工夫がなされた○○”というニュアンスです。

例文
  • 新郎新婦が趣向を凝らした披露宴は、実に素晴らしいものだった
  • 趣向を凝らした案件なので、今回のコンペは自信がある

他にも、「趣向を凝らした料理」や「趣向を凝らした作品」など、様々な事柄に対して使うことが可能です。

「趣向を変える」は”方向性を変える”の意味に

「趣向を変える」は、”意向・方向性を変える”という意味の表現です。「○○の趣向を変える」という風に幅広く使うことができます。

例文
  • いつもとは趣向を変えて、おしゃれなレストランへと誘った
  • 趣向を変えたことが、高評価につながったようだ

また、「趣向を変える」に限らず、「○○の趣向」という言い回しで使った場合は、”おもむき・意向・方向性”などの意味が多いでしょう。たとえば、「デザインの趣向」というと、「デザインの方向性」と同義になります。

「趣向が合わない」は”方向性・考え”が合わないこと

「趣向が合う」や「趣向が合わない」と使う場合の「趣向」は、”方向性”や”考え”の意味になります。よく使われるのが、「趣味趣向が合わない」という表現です。この場合、”趣味の方向性が合わない”という意味で使われています。たとえば、同じスポーツを趣味とする場合でも、試合に出るなど競技として楽しむ場合と、友人とプレイする程度にとどめる場合では「趣向が合わない」と言えるでしょう。

食べ物を指すのは「趣向品」ではなく「嗜好品」

「趣向」と似た言葉に”嗜好(しこう)”が挙げられますが、この2つのうち飲食物などを指す場合に用いられるのは「嗜好品」です。「嗜好品」とは、”栄養摂取を目的としない、娯楽のために摂取する飲食物”を指します。例えば、コーヒーやたばこ、酒類が「嗜好品」の代表的な例です。この「嗜好品」と混同して「趣向品」と使う人がいますが、これは誤りです。

なお、「嗜好」という単語には、”たしなむこと・好み”などの意味があり、「趣味嗜好」という言い回しもあります。「趣味嗜好」とは、端的に言うと”個人的に好きなこと”という意味の表現です。先述した「趣味趣向」とは異なるため、しっかり区別して覚えておきましょう。

敬語では「御趣向(ご趣向)」を使う

「趣向」を”目上の人の考え方”という意味で敬語として使用する場合には、「御趣向(ご趣向)」と使います。たとえば、「部長の御趣向にはいつも勉強させていただいております」などと使うことができます。なお、敬語の意味でも「お趣向」とするのは誤りです。

例文
  • 社長の御趣向には社内に限らず、業界内の多くのビジネスパーソンが注目している。

「趣向」の類語とは?

「趣向」の類語は”意匠”

「趣向」と似た意味を持つ単語には、“意匠(いしょう)”が挙げられます。「意匠(いしょう)」とは、”工夫・工夫を巡らすこと”という意味の表現です。「意匠を凝らす」という表現でもよく用いられます。

「趣向」と「趣旨」は異なる意味の単語

「趣向」とよく似た表現に「趣旨」があります。「趣旨」とは、”(文章や話の中で)言わんとすること・中心となる重要な内容”といった意味のほか、”目的・理由”の意味も持つ単語です。これに対し、「趣向」とは、”工夫・方向性”などのニュアンスで使用される表現なので、意味は異なります。混同しないよう注意が必要です。

「趣向」の英語訳とは?

「趣向」は英語では”elaborate”を使う

英語で「趣向を凝らす」と表現する場合には、“elaborate”という単語を使うことがよくあります。「elaborate」とは、動詞で”推敲する(文章を練る)”という意味のほか、形容詞として”苦心して作り上げた・手の込んだ”という意味も持つ単語です。たとえば、「an elaborate plan」とは、”苦心して作り上げられた計画”という意味になり、「趣向を凝らした計画」と似たようなニュアンスになります。また、「工夫されている」という意味では”well designed”や”ingenious”という表現を用いることもあります。

「うまい趣向が浮かんだ」のように、「考え」という意味で使う場合には、”a bright idea”や”a happy idea”などといった表現も可能です。

まとめ

「趣向」とは、「工夫」や「意向」という意味を持つ単語で、代表的な使用例は「趣向を凝らす」が挙げられます。「趣向を凝らす」とは、端的に言うと「工夫を凝らす」と同義になりますが、「趣向を変える」と使うと「方向性を変える」のニュアンスとなります。複数の意味を持つ単語なので、よく使われるフレーズとセットで覚えておくと良いでしょう。