クライアントや上司との会話の中で「なるほど!」と相槌を打ったことはないでしょうか。実はこの「なるほど」、目上の人に不快感を与える可能性があります。
ここでは「なるほど」がなぜ失礼なのか、ビジネスシーンで使いがちな「なるほどです」の間違いの理由と、失礼にならない代わりの言葉や言い換え方法を解説します。
「なるほど」の意味と2つの使い方とは?
「なるほど」は同意を表す「副詞」または「感嘆詞」
「なるほど」は、相手の意見を受け入れた上でそれに同意することを表す言葉で、「副詞」または「感嘆詞」として用いられます。
副詞として使う場合は「なるほどその湖は美しかった」となり、「相手の言う通り、確かにその湖は美しかった」といった同意・納得の意味になります。
感嘆詞は「ああ」「おお」のように一語で同意や応答、驚きなどを表す品詞のことです。「なるほど」も同じように一語のみで応答や理解を示す使い方ができ、話し言葉では「なるほど、そういう仕組みだったのか」「なるほど、それはすごいね」のようにも用いられます。
■参考記事
「感嘆詞」の意味とは?分類一覧や古語・英語の例文も紹介
「なるほど」の語源は「出来る限り」
「なるほど」はもともと「出来る限り」という意味で使われていました。それが、「『出来る限り』以上のものはない」→「他には考えられない」→「明らかである」と意味が変化していき、現在の同意や納得を示す言葉として使われるようになったと考えられています。
目上の相手への「なるほど」は失礼?
「なるほど」は見下した印象を与える
「なるほど」という言葉を目上の人に使う場合、見下した印象を与える可能性があることに注意しなければなりません。
例えば「なるほど、その通りですね」と言った場合、まず相手の意見を評価し、その上で合意していることを示します。この「評価する」という行為は通常「上司が部下に対して行う」ことが一般的ですから、目下の人が使うと上から目線のように取られてしまうケースがあるのです。
また「なるほど」には相手の言ったことに感心し、褒めるニュアンスも含まれます。感心・褒めるという行為も、教師が生徒を、親が子供を褒めるように自分より下の立場の相手に対して行うものです。目上の相手には、生意気・失礼だと感じさせてしまうこともあるようです。
「なるほど」は敬語ではないので敬意が伝わらない
「なるほど」自体は最初に説明したとおり、副詞または感嘆詞として使う言葉であり、敬語ではありません。これがわかっている人であれば、「なるほど、なるほど」という相槌は、「うん、うん」や「あぁ、あぁ」と言われているのと同じことで、気安い印象を受けてしまいます。
「なるほどです」は敬語?
「なるほどです」は間違った日本語
「なるほど」は副詞・感嘆詞なので、「なるほど」自体に敬語表現はありません。また、副詞として使う場合も、感嘆詞として使う場合にも、「です」を続けて使う用法は間違いとなります。副詞の「意外と」に「です」を付けて「意外とです」とは言わない、感嘆詞である「あぁ」に「です」を付けて「あぁです」と言わないように、「なるほどです」も日本語として間違いです。
「なるほど」を丁寧に使うのであれば、「なるほど、そういうことですね」のように「なるほど」の後に続く言葉を丁寧に伝えましょう。
「なるほどですね」も間違い
ビジネスマン、特に新入社員の中には「なるほどですね」という言葉を使っている人が多くみられます。「なるほど」は敬語ではないので、少しでも丁寧な表現にしようと丁寧語である「です」を語尾に付けて「なるほどです」としているのでしょう。
先に説明したように、「なるほど」に「です」を続けて使うのは間違いとなりますので、別の敬語表現に置き換えるように気をつけましょう。言い換え例は次で解説します。
ビジネスで使える「なるほど」の言い換え例
相槌は「はい」
相槌としての「なるほど」はそのまま「はい」に言い換えることができます。「はい」は丁寧語なので「なるほど、なるほど」と相槌を打つよりは「はい、はい」の方がいくらか丁寧な印象を与えることができます。
納得したときは 「わかりました」
相手の指示に納得し、それに従う意思を示す場合は「わかりました」と言うのがいいでしょう。「承知しました」とするとより丁寧です。
同意のときは 「おっしゃる通り」
相手の意見に同意であることを表す場合は、「おっしゃる通りです」と言うのがいいでしょう。
正しいと感じたときは 「確かに」
相手の意見が正しいと感じたときは「確かに」と言い換えることができます。「確かに、おっしゃる通りですね」などとするとより丁寧な印象になります。
理解を示すときは 「左様でございますか」
相手の意見に納得や理解を示す場合は「左様でございますか」や「そうですか」、「そういうことでしたか」と言うのがいいでしょう。
まとめ
普段何気なく使っている「なるほど」という言葉も、相手によっては不快感を与えてしまうことがお分かりいただけたでしょうか?「なるほど」自体には失礼な意味はないものの、ビジネスシーンでは暗黙の了解として使用を避けたほうがいいとされています。目上の人との会話はもちろん、ビジネスシーンではできる限り別の言葉に言い換えるといいでしょう。