「私情」の意味とは?「私情を挟む」など例文と類語・対義語解説

「ビジネスに私情を挟むな」「私情が入るとうまくいかない」など、ビジネスシーンでは「私情」はあまり良いものとはされていません。この「私情」という単語は実際にはどういった意味・内容を指すのでしょう。本記事ではその意味をはじめ、使い方を例文で解説します。また、類語・対義語や英語訳についても触れています。

「私情」の意味とは

「私情」の意味は「個人的な感情」

「私情(しじょう)」とは、「個人的な感情」という意味の単語です。また、「自分の欲求を遂げようとする心」という意味があり、「私的感情」や「私的欲求」などが「私情」と呼べるでしょう。たとえば、「仕事に行きたくない」「会議に出席したくない」などといった個人的な感情は「私情」のわかりやすい例です。

「私情」の使い方と例文

「私情を挟む」「私情が入る」とよく使う

「私情」は、「私情を挟む」あるいは「私情が入る」といった表現でよく用いられます。「私情を挟む」とは、「その場にはふさわしくない個人的な感情を持ち出す」という意味です。「私情が入る」も同様で、「個人的な感情が入り込むこと」を意味します。同様のニュアンスでは「私情を持ちこむ」という表現も挙げられるでしょう。

たとえば、「この日は休みを取りたいから、打ち合わせの日を再調整してもらえないか?」というような依頼は「私情によるもの」と判断されるでしょう。

他にも、「A社の担当者とは前職からの付き合いだから、できるだけ良い条件で契約したい」というような感情も「私情」と呼ばれます。

「私情を挟む」「私情が入る」を使った例文

  • 私情が入ると中立的な判断ができない
  • 私情を挟むことはビジネスシーンでは控えた方がよいだろう
  • 私情を持ち込まれても困る

「私情により欠席」ではなく「私事により欠席」がベター

「個人的な事情」という意味で「私情のため欠席します」を使う人がいますが、この言い回しはあまりおすすめできません。

「私情」は確かに、「個人的な事情・理由」といった意味合いでも用いられることがありますが、この場合「個人的な感情(行きたくないから行かない)」という意味にもとることができるため、とても軽い印象を与えます。そのため、「私情のため欠席します」「私情のため休みます」といった表現は使わない方が無難です。

「ほかの人にはあまり知られたくない、プライベートな事」という意味を表現したいのであれば、「私事」という単語がベターです。「私事により欠席します(休みます)」であれば、不快な印象を与えることは避けられるでしょう。

「私情により退職」とは使わない

先述したように、「私情」はやや軽い印象を与える懸念があるため、「私情により退職」という表現もあまり使用しません。「退職」に関しては、「一身上の都合により退職」という表現が良く用いられます。

「一身上の都合」とは、「個人的な都合」という意味です。似た表現では「自己都合」という表現も用いられます。

「私情」の類語とは

「私情」の類語は「私見」「私意」

「私情」と似た意味を持つ表現には、「私見」や「私意」が挙げられます。「私見」とは、「個人的な意見・見解」という意味の単語で「私見を述べる」などの表現でよく用いられます。

「私意」とは、「自分ひとりの考え・意見」という意味のほか、「自分だけの利益を考える心・自分の思うままにふるまう心」という意味も持つ単語です。「私意はない」などの言い回しでよく見聞きします。

「私情を挟まない」の言い換えは「公私混同しない」

ビジネスシーンではよく「私情を挟むな」などと言われますが、この「私情を挟まない」と似た意味の表現としては「公私混同しない」が挙げられます。「公私混同(こうしこんどう)」とは、文字通り「公的な事柄と私的な事柄をきちんと区別せずに扱うこと」を意味します。つまり、「公私混同しない」とは、「公的なシーンに私的な感情や事情を持ち込むな」という意味になるのです。

似た表現にはほかにも、「公私を区別する」「公私のけじめをつける」などといった表現もあります。

「私情」の対義語

「私情」と反対の意味を持つのは「世論」や「一般論」

「私情」は「私的な感情」を意味するため、反対の意味を持つ表現には「公」つまり、世間で広く用いられている意見や多くの人が同調するような意見を指す言葉が該当します。具体的には、「世論や「一般論」などが挙げられます。

意味
  • 世論:世間の大勢を制している意見・議論
  • 一般論:世間に広く認められていると考えられる議論

「私情」の英語表現

「私情」は英語で「personal feelings」

「私情」は英語では「personal feelings」と表現されます。「私情にとらわれない」という意味では、「regardless of one’s personal feelings」が形式的な表現として用いられるようです。

例文

We must not let our personal feelings decide.(私情で物事を判断してはいけない)

また、「私情を用いずに~する」は、「公平に・偏らずに」という意味の「impartially」という単語を用いて表現することもあります。

例文
  • I deal impartially with all men.(すべての人を公平に扱う)
  • It should be impartially evaluated.([私情を用いずに]公平に評価されるべきだ)

まとめ

「私情」とは「個人的な感情」を意味します。「個人的な事情・理由」という意味でも用いられますが、文章中では「個人的な感情」の意味にもとれるため「私情により欠席します」や「私情により退職します」といった使い方はしないのが通例です。感情など個人的事柄を表す際にのみ使用したほうが誤解もなく、無難でしょう。