論文誌や学会誌を渡す際に「謹呈」と書くことがあります。この「謹呈」にはどういった意味があり、また、どういったときに用いられるのでしょう。本記事では「謹呈」の詳しい意味とともに、使い方や熨斗(のし)・封筒やしおりへのの書き方について解説しました。また、「謹白」など類語との違いや反対の意味を持つ対義語についても紹介しています。
「謹呈」の意味とは
読み方は「きんてい」、意味は「つつしんで差し上げること」
「謹呈」は「きんてい」と読み、「つつしんで差し上げること」を意味します。「つつしんで(謹んで)」とは、「敬意を表してうやうやしくする様・かしこまって」という意味です。
つまり、「目上の人に対して敬意を示し、何かを贈ること」という意味になり、かしこまった形で何かを贈る場合に用いられます。
「謹呈」の使い方と例文
「謹呈」は物を贈る際のかしこまった態度を表す
「謹呈」は「謹呈する」の形で目上の人にものを贈ることを表したり、かしこまったシーンで「謹呈させていただく」などの形で使ったりすることが多いでしょう。
- 研究でお世話になった方々にも謹呈する運びとなった
- 創業50周年を記念し、皆様に謹呈させていただくこととなりました
論文誌ではしおりや熨斗(のし)に「謹呈」と書くことも
「謹呈」は、論文誌や記念誌などの書籍を贈る場合に使われることが多いです。会社の記念誌の場合は熨斗をつけ、その上段中央のあたりに「謹呈」と表記します。封筒に入れて渡す場合には、同じく封筒の中央やや上のあたりに「謹呈」と記すことが多いでしょう。封筒の場合、「謹呈」の下に「○○学会誌」のように記載することもあります。
熨斗や封筒以外では、しおりを挟むケースも挙げられます。細長い紙の上の方に「謹呈」と記載し、表紙を開けたところに挟むやり方が一般的です。
「謹呈していただいた」は誤った表現
「謹呈」という単語を使う際に、「謹呈していただいた本」とするのは誤りです。「謹呈」は自分の立場を低く表現する「謙譲語」ですので、相手から「謹呈」としてもらった本でも「謹呈していただいた~」という言い回しは使用しません。「この場合は、○○氏に頂いた書籍」などの表現に言い換えるのが適切です。
「謹呈」を受けたらお礼のメール・手紙を忘れずに
「謹呈」を受けた場合には、お礼状を作成します。先方から郵送などで届いた場合には、取り急ぎ、受け取ったことを知らせる手段としてメールや電話の手法をとることもあります。
なお、書籍類を受け取った場合は、是非とも内容にも触れたお礼状を作成したいところですが、「取り急ぎ」ということであれば送っていただいたことのお礼だけでも構いません。
「謹呈」の類語とその違い
「贈呈」は目上から目下に物を贈る際に使う表現
「謹呈」と似た表現に「贈呈」があります。この「贈呈(ぞうてい)」とは、主に目上から目下に物を贈る際に用いられる表現です。「贈呈」はスポーツシーンでもよく用いられる表現で、「トロフィーの贈呈」「盾の贈呈」など表彰式では身近な表現です。また、目下の者が贈るシーンでも、たとえば結婚式の「花束贈呈」のような使い方も挙げられます。
このように、華やかなシーン・晴れやかなシーンで使われることが多いのが「贈呈」の特徴です。
「進呈」は目下から目上の人に対して使うことが多い
「進呈」もまた、何かを贈るシーンで用いられますが、「進呈」は目下から目上に対して用いられることが多いのが特徴です。「謹呈」のようにかしこまった雰囲気ではなく、「単に何かをあげる」という意味でも用いられます。「粗品を進呈する」のように「つまらないもので恐縮ですが…」といったニュアンスを出したい場合にも使われる表現です。
「謹白」は手紙の結び語、類語ではない
「謹呈」と同じく「謹」の字を使った単語には、「謹白」があります。「謹白」は手紙の結び語のひとつで、「謹啓」とセットで用いられます。手紙を書く際には「拝啓」の頭語で書き始め、「敬具」と結ぶのが一般的ですが、この「拝啓」の敬意を強めた表現が「謹啓」です。
「謹白」も「謹啓」も、相手への敬意を示す表現・かしこまった表現という点では「謹呈」に通じるものがありますが、その意味は全く異なります。混同しないように注意が必要です。
「謹呈」の対義語
「謹呈」の反対語は「恵贈」
「謹呈」と反対の意味を持つ単語は「恵贈」です。「恵贈」とは、「ほかの人が自分に物を贈ること」を意味する敬語表現です。たとえば、お礼状などでは「御恵贈を賜りまして、誠にありがとうございました」といった表現でよく用いられます。
まとめ
「謹呈」とは、「つつしんで差し上げること」を意味する表現で、目上の人に物を贈る場合にかしこまった姿勢を表す目的でよく用いられます。熨斗や封筒の表書きとして「謹呈」と記したり、しおりに「謹呈」と書いたものを書籍に挟んだりするなど、相手に贈るものに記載・添付することも多いでしょう。また、頂いたものに対しては「御恵贈賜りありがとうございます」という風に、反対の意味を持つ「恵贈」を使ってお礼状が出せるとスマートです。併せて活用してみてください。