「アルカイックスマイル」の意味とは?仏像やギリシャ彫刻も解説

「アルカイックスマイル」は飛鳥時代の仏像の特徴を表す美術用語として、学生時代に習った記憶があるという人も多いでしょう。赤ちゃんの微笑を「アルカイックスマイル」と表現することもあります。

「アルカイックスマイル」とは、また「アルカイック」とはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか?この記事では、「アルカイックスマイル」と「アルカイック」の意味と代表的な作品を解説します。

「アルカイックスマイル」の意味とは?

「アルカイックスマイル」の意味は「古拙の微笑」

「アルカイックスマイル」とは、日本語で表現するなら「古拙(こせつ)の微笑(ほほえみ)」という意味です。初期の古代ギリシャ彫刻に見られる特徴的な微笑で、唇の両端がやや上に上がり、微かな笑みを浮かべているように見えるものを指します。

アルカイックスマイルは英語で「archaic smile」

英語では「archaic smile」と書き、「archaic」とは古代ギリシア語で「古い」「太初の」という意味の「arche」から派生した語です。日本語では「古式」あるいは「古拙(こせつ)」が近い意味です。

「古拙」とは、技巧的には素朴であるが、古風で味わいのあることという意味です。

「アルカイック」とは古代ギリシャ美術の様式を指す言葉

「アルカイック」とは、「古風で素朴なさま」という意味を持つとともに、原始性の残る初期ギリシャ美術の様式を指す言葉でもあります。

「アルカイック」は、もともとは初期ギリシャ美術特有の様式を指していましたが、のちには他の地域の初期美術の様式概念としても用いられるようになりました。

その両方の意味を含んで、例えば「アルカイックな音楽」などと芸術の特徴を表現する言葉として用いられることもあります。

「アルカイックスマイル」の代表的な作品

古代ギリシャ彫刻の代表作品「クーロスの頭部」

「クーロスの頭部」
(出典:Wikimedia Commons User: Tetraktys)

古代ギリシャ期に作られた彫刻にアルカイックスマイルが現れます。代表的なものに「クーロスの頭部」があります。クーロスとはギリシャ語で特に高貴な少年や青年を意味し、ギリシャ美術史上におけるアルカイック期に作られた青年の裸体像を指します。

アルカイックスマイルとともに左右の対称性、直立して前に左足を踏み出した姿が特徴的で、古代エジプトやメソポタミアの芸術に影響を受けて作られました。

この時代の彫刻像はエジプトの影響を受けた静止像ですが、生命感や幸福感を演出するためにアルカイックスマイルが生み出されたとの説があります。あるいは神ではなく人間であることを示すために表情をつけたとの説もあります。

ギリシャ、エーゲ海周辺から見つかったこれらの彫刻は、アテネの国立考古学博物館やアクロポリス美術館に収蔵されており、現地で鑑賞することができます。

日本の飛鳥時代の仏像「弥勒菩薩半跏思惟像」

広隆寺「宝冠弥勒」
(出典:Wikimedia Commons)

日本においては、飛鳥時代に作られた仏像がアルカイックスマイルの特徴を備えています。広隆寺の「弥勒菩薩半跏思惟像(宝冠弥勒)」や中宮寺の「半跏思惟像(弥勒菩薩)」などが有名です。

仏像の形式の一つである弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)とは、台座に腰かけて右足先を左大腿部に乗せて足を組み(半跏)、右足の膝頭に右ひじをつき、右手の指先を頬に軽く触れて思索する(思惟)姿の弥勒菩薩像を指します。

この形式は弥勒信仰とともに6世紀から7世紀に大陸より伝わり、多くの作品が作られました。

飛鳥時代の「止利式仏像」

法隆寺金堂本尊の「銅造釈迦三尊像」(623年)を代表作とする鞍作止利(くらつくりのとり)の仏像作品は、止利式と呼ばれる様式に分類され、アルカイックスマイルと杏仁形の眼、左右対称の幾何学衣文などを特徴とします。鞍作止利は飛鳥時代の渡来系の仏師です。

美術史上における「アルカイック期」

「アルカイック」という言葉は、美術史上における古代ギリシャの時代区分を表す言葉としても使われています。古代ギリシャの彫刻は、「ジオメトリック期」「アルカイック期」「クラシック期」「ヘレニズム期」の4期に分類されます。

「アルカイック期」は、紀元前8世紀頃から紀元前5世紀初頭頃までを一般的に指します。

まとめ

「アルカイックスマイル」とは、日本語では「古拙(こせつ)の微笑(ほほえみ)」と訳すことができる美術用語です。古代ギリシャ美術の彫刻像が持つ特徴的な微笑が由来ですが、日本の飛鳥時代に作られた仏像にも同じ特徴の微笑が現れています。

アルカイックスマイルの特徴は、全体的には無表情でありながら、わずかに口元の両端が上に上がり、微笑んでいるように見えるというミステリアスな微笑です。

そのことから、赤ちゃんの自然な微笑や、気持ちを顔に出さず曖昧な微笑を浮かべる日本人の表情を海外の人が「アルカイックスマイル」だと例えることもあります。また、「モナ・リザの微笑み」もアルカイックスマイルの例として挙げられることもあります。