ビジネスシーンでは書類や荷物の「受け取り」の連絡が欠かせません。しかし状況によってさまざまな敬語の決まり事や言い換え方があり、思いのほか使いこなしが難しいのが「受け取る」表現です。
実務的な連絡やメールでも正しく美しい敬語が使えるよう、「受け取る」の敬語や類語を使った言い換え方について詳しく解説します。
「受け取る」の敬語・意味
「受け取る」の謙譲語は「お受け取りいたします/いたしました」
「受け取る」の謙譲語は、「お受け取りいたします」です。「お(ご)~いたす」の形に言い換えて表現します。さらに「です・ます」の丁寧語を加えると「お受け取りいたします」となります。
柔らかい表現をしたい時は「お(ご)~いたす」の形に言い換えるのがよいでしょう。
- 荷物は明日お受け取りいたす予定でございます。
- 返品の商品は確かにお受け取りいたしました。
「受け取る」の尊敬語は「お受け取りください」「受け取りをお願いします」
「受け取る」の尊敬語は、「お受け取りください」「受け取りをお願いします」です。相手の行いに尊敬語「お」をつけた「お受け取り」に「してください」を付けた依頼の形として「お受け取りください」と言うことができます。
相手にお願いをするため、失礼にならないよう、より丁寧に言いたい場合は「お受け取りくださいませ」と言うのがよいでしょう。
同じく依頼する言い方で「受け取りをお願いします/お願いいたします」という言い方もあります。
- 受付で資料をお受け取りくださいませ。
- 着払いでお受け取りください。
「受け取る」の意味
まずはじめに「受け取る」という言葉の意味を確認します。
【受け取る】
- 渡されたものを、自分の手にする。「荷物を受け取る」
- 渡された金品などを、自分のものにする。「ボーナスを受け取る」
- 自分なりに解釈・納得する。「賛成の意味だと受け取った」
1と2の意味での「受け取る」は「もらう」の意味と同じです。今回は1と2の意味の「受け取る」について解説します。
誰が受け取るのかによって敬語が変わる
「受け取る」という表現は、誰が受け取るのかによって敬語の使い方が変わります。自分が受け取る場合は、【謙譲語】を使い、相手が受け取る場合は【尊敬語】を使います。
ビジネスシーンを前提とした、状況ごとの使い方を次に紹介します。
自分が受け取る時の敬語は?
自分が受け取る時は「謙譲語」を使う
自分が受け取る時は、自分の行いを相手に対して丁寧に述べる【謙譲語】を使います。謙譲語とは、相手を立てて述べる表現と、自分の行いやものごとなどを相手に対して丁重に述べる表現のことをいいます。
「受領いたしました」
「受け取る」という意味を持つ漢語的表現に「受領」があります。「受領」とは、「お金や品物などを正式に受け取ること」という意味です。取引が間違いなく進んでいることを伝えたい時に用います。
ビジネスシーンでは、契約に基づく金品の授受についてのやりとりが行われるため、「受領」を用いる方が適切な場合が多いでしょう。丁寧語で「受領しました」でもよいですが、謙譲語「いたす」を使う「受領いたしました」とした方がより相手を立てることができます。
- 領収書を本日受領いたしました。
- 解約金を受領しましたことをご連絡いたします。
「頂きます」「頂戴します」
「もらう」の謙譲語は「頂く」「頂戴する」です。有難く受け取りました、というお礼のニュアンスを含む時や、受け取ることを丁寧に表現したい時に使います。
- 本日、お歳暮の品を頂戴いたしました。
- 明日頂きに伺います/参ります。
相手に受け取りを依頼する時
相手に受け取りを依頼する時は「尊敬語」を使う
相手に受け取りを依頼する時は「尊敬語」を使います。「尊敬語」は相手側の行いや状態に対して、その人を立てて述べる表現です。
「ご査収ください」
メールに添付したファイルを受け取って内容を確認してほしい時などは「ご査収ください」と書くのが一般的です。「査収」は「よく調べたうえで受け取ること」という意味です。
そのため、調べる必要がないものを受け取ってほしい時に「ご査収ください」と書くのは誤りです。
また「ご査収」の言い回しはよく使われる決まった形があり、「ご査収くださいませ」「ご査収の程よろしくお願いいたします」のほか、「ご査収くださいますようお願い申し上げます」などがあります。
- 請求書を同封いたします。ご査収くださいませ。
- メールに資料を添付いたしました。ご査収の程よろしくお願いいたします。
「ご査収」の使い方は以下の記事も参考にしてください。
「ご査収」の意味と返事の仕方とは?使い方の例文と類語も解説
「お納めください」
「受け取る」を丁寧な言葉に言い換えたい時は、「納める」という言い方があります。「納める」は「自分のものにする」という意味があります。
「受け取ってください」「もらってください」という言い方は、「お納めください」と言い換えることで品の良い雰囲気が出せます。
- どうぞご遠慮なくお納めくださいませ。
- キャンペーンの商品を発送いたしましたのでお納めください。
相手が受け取ったかどうか確認する時
「お受け取りになりましたか?」
相手が受け取ったかどうか確認したい時は「受け取る」の尊敬語「お受け取りになる」を質問の形にして「お受け取りになりましたか?」と言うことができます。
語尾を柔らかく表現したい時は「お受け取りになりましたでしょうか」という言い方があります。
さらに丁寧な言い方としては「お受け取りくださいましたでしょうか」と「お~くださる」の尊敬語の形を使う言い方もあります。
- 受付でお配りしている資料はお受け取りになりましたか?
- 荷物はお受け取りくださいましたでしょうか?
まとめ
「受け取る」という実務的な連絡の言葉でも、状況ごとに適切な敬語の使い方やさまざまな類語がありました。使い慣れていないと、取引先の人の行いに対して謙譲語を使ってしまったり、自分に尊敬語を使ってしまったりします。
敬語は使うことで上達します。よく使う言葉の言い回しから順に覚えて、積極的に使ってみてください。