「産業技術の発展に寄与する」「労働環境の改善に寄与する」などのように、「寄与する」という表現を使うことがあります。本記事では、この「寄与」という単語の意味とその使い方について、例文を交えながら詳しく解説しました。また、類語「貢献」との違いや対義語、英語訳についても触れています。
「寄与」の意味とは
「寄与」は「人の役に立つこと」という意味
「寄与(きよ)」とは、「力を尽くし、人や社会の役に立つこと」という意味です。人だけでなく、物事に働きかける様にも使うことができ、「物事の変化に影響を与えること」という意味もあります。
「寄与」の使い方と例文
「寄与する」と使うのが一般的
「寄与」は「寄与する」「寄与した」の形で用いられるのが一般的です。様々なシーンで用いられますが、中でも「社会に対して役に立つことをした(する)」という文脈で用いられることが多いでしょう。
- 〇〇教授の研究は、日本の感染症対策に大きく寄与するだろう。
- この国の発展には、先進国の援助が寄与していることは間違いない。
- 労働環境改善に寄与した彼の功績は大きく評価されるべきだ。
「寄与度」「寄与率」は影響の度合いを表す
「寄与」を「寄与度」あるいは「寄与率」と使うと「物事の変化に影響を与える度合い・程度」を意味する表現となります。この「寄与度」や「寄与率」は、経済用語としてもよく用いられる表現です。
たとえば、ある経済指標の上昇(下落)に対し、個々の構成要素の上昇(下落)率がどの程度影響しているのかをはかる際に「寄与度」というワードを用いて表現することがあります。
「寄与」が悪い意味で用いられることは少ない
「寄与」は「人の役に立つこと」「良い影響を与えること」という意味で用いられることが多いのが特徴で、ネガティブな影響に対して使うことはあまりありません。先述した「寄与度」の例のように、経済用語としての「寄与」はネガティブな影響を指すこともありますが、限定的です。
たとえば、「彼が大きく寄与した」というと「役に立つことをした・良い影響を与えた」と好意的な意味合いにとられるのが一般的です。
化学では「寄与が大きい・小さい」という表現も
「寄与」を化学の分野で使用する場合は、「寄与が大きい」「寄与が小さい」と表現することがあります。化学の分野では共鳴構造の状態などを比較し、「どの構造が寄与が大きいのか」などといった使い方をします。
先述したように、「寄与」は一般には好意的な意味合いで用いられることが多いため、「彼の研究に対する寄与は小さい」という言い回しはあまり耳にしませんが、化学においては「寄与が小さい(小さい寄与)」などの表現でも使用可能です。
「寄与」の類語
「寄与」と類語「貢献」の違い
「寄与」と似た意味の単語には「貢献」が挙げられます。「貢献(こうけん)」にも「何かのために力を尽くして役に立つこと」という意味があり、ほぼ同じ意味として使うことができます。
この「貢献」には「貢物を贈る・奉る(たてまつる)」という意味もあり、「目下から目上へ」というニュアンスを含みます。これに対し「寄与」は元々、「贈り与える」という意味があったようで、「目上から目下へ」というニュアンスを伴うのが特徴です。とはいえ、「力を尽くして役に立つこと」という意味では同じような使い方をしても大きな問題はないでしょう。
類語「貢献」を使った例文
- 入社して半年、やっと会社の売上に貢献することができた。
- 彼は、戦後の社会福祉の拡充に貢献したひとりとして知られている。
「寄与する」の言い換えは「尽くす」「役に立つ」など
「寄与する」をほかの表現に言い換える場合には、「尽くす」や「尽力する」「役に立つ」などといった表現を使用することができます。
- 社会の発展に尽力する。
- ○○教授の研究は社会の役に立つものだ。
「寄与」の対義語
「寄与」と反対の意味を持つのは「阻害」や「障害」
役に立つことを意味する「寄与」と反対の意味を持つ単語には、「阻害」や「障害」が挙げられます。
「阻害(そがい)」とは、「物事の進行をじゃますること」を意味し、「障害(しょうがい)」には、「正常な運営・運航を遮りとどめること」という意味があります。いずれも、「役に立つ」という意味の「寄与」とは対義的表現と言えるでしょう。
「寄与」の英語表現
「寄与」は英語で「contribution」、動詞は「contribute」
「寄与」は英語で「contribution(寄贈・貢献・寄与など)」と表現し、「寄与する」は動詞の「contribute(寄付する・寄贈する・貢献するなど)」を使用します。
- to contribute to cost reduction(コスト削減に寄与する)
- a contribution to cost reduction(コスト削減への寄与)
- I want to contribute to society with this job.(私はこの仕事で社会に貢献したい)
まとめ
「寄与」とは、「力を尽くし、人の役に立つこと」または「物事の変化に影響を与えること」という意味です。経済用語としてはネガティブな文脈でも使用されることがありますが、一般には良い影響に対して用いられる表現です。また、元々の単語の意味から「寄与」は目上から、「貢献」は目下から、といった違いが指摘されることもありますが、ほぼ同じ意味の単語ですので明確な使い分けをすることなく使用される例も多いようです。