「言いがかりにも程がある」は定型句のように用いられる表現ですが、この「言いがかり」とは具体的にはどういったことを指すのでしょう。本記事では、この「言いがかり」の意味と使い方を例文を交えて解説しています。また、「言いがかり」の類語や似た意味を持つ「クレーム」との違い、英語訳など関連用語についても紹介しています。
「言いがかり」の意味とは
「言いがかり」とは「難癖をつけること・筋の通らない文句」
「言いがかり」とは、「難癖(なんくせ)」や「筋の通らない文句」を意味します。たとえば、わざわざ見つけ出したような些細な相手の非を責め立てたり、難癖をつけたりすることを「言いがかり」と言います。「誰の目から見ても悪い」という決定的な文句ではなく、根拠が薄く筋の通らない主張であることも多いでしょう。
漢字では「言い掛かり」と書くことも
「言いがかり」は、漢字では「言い掛かり」と書きます。他にも、「言掛かり」あるいは「言い掛かり」などの表記例もありますが、いずれも誤りではなく意味に違いはありません。
「言いがかり」の使い方と例文
「言いがかりだ」「言いがかりをつける」などと使う
「言いがかり」は、「そんなのは言いがかりだ!」というように主張する際に用いられる他、「言いがかりをつける」の形で用いられることが多いでしょう。
- サービス業に従事していると、客の言いがかりにしばしば遭遇する。
- 通勤途中に見知らぬ男性に言いがかりをつけられた。
- 言いがかりをつける人は、きっと誰かに憂さ晴らしをしたいだけだ。
「言いがかりにも程がある」とは呆れた様を表す
「言いがかり」は、「言いがかりにも程がある」という言い回しで用いられることも多いでしょう。「程がある」とは、「許容できる範囲・程度にも限りがある」という意味で、「~言いがかりにも程がある」とは「言いがかりにも限度があるが、その限度を超えている」というニュアンスで用いられます。
端的に言うと、相手の度を過ぎた言いがかりに呆れている様を表します。似た表現では、「とんだ言いがかりだ」も驚き呆れた様を表すものとして挙げられます。
- その件で先方を責めるなんて言いがかりにも程があるぞ。
- 誤った使い方をして破損したのに製造元を非難するとは、とんだ言いがかりだ。
「言いがかり」の類語
「言いがかり」と似た意味の表現は「因縁」や「いちゃもん」
「言いがかり」と似た意味の単語では「因縁」や「いちゃもん」が挙げられます。「因縁(いんねん)」には「定まった運命・以前からの関係」「理由・由来」など複数の意味があり、そのひとつに「言いがかり」もあります。「因縁をつける」の表現で用いられるのが一般的です。
「いちゃもん」もまた、「いちゃもんをつける」と使われますが、「言い争い・もめ事・苦情」などの意味を持つ単語です。そのほか「筋の通らない文句」という意味では、「屁理屈(へりくつ:筋の通らない理屈)」も類似表現と言えるでしょう。
「クレーム・苦情」は「言いがかり」とは限らない
「言いがかり」と混同しやすい表現に、「クレーム」や「苦情」が挙げられます。「クレーム」とは、英語の「claim」に由来する単語で、元々は「契約違反に対する損害賠償請求」の意味がありますが、カタカナ語としては「苦情・異議」あるいは「理不尽な要求」などの意味で用いられています。
そもそも「苦情」とは、「不利益に対する不平・不満」という意味の単語です。「他人から害を受けている」ことが前提となるため、「筋の通った不平・不満」ということができるでしょう。これに対し「言いがかり」は理不尽である点で大きく異なります。
一方、先述した「クレーム」は、「苦情」の意味で用いられる他、「理不尽な要求・苦情」の意味でも使われるため区別が難しくなります。「クレーム=言いがかり」の意味で用いられることもありますが、単なる「苦情」を指す場合もあるため、その場その場で判断が求められることとなるでしょう。
「言いがかり」への対処・対応方法は?
「言いがかり」をする人の心理
「言いがかり」をする人の多くは、「相手よりも優位に立ちたい」という思いがあると考えられます。同時に、「自分が絶対的に正しいと疑っていない」「相手に言いがかりをつけることで自分が賢い人だと思われたい」などの心理も考えられるでしょう。
また、「言いがかり」をつける人の中には、単に「ストレスが溜まっている」という人も考えられます。自分の中にあるイライラを他人にぶつけるというのは、どんな背景があるにせよ幼稚な行動です。
「言いがかり」は無反応を貫くのもひとつの方法
「言いがかり」をつけてくる人へは、無反応を貫くのが効果的と言われています。反応をすればするほど、相手は手ごたえを感じ、ヒートアップする懸念があるからです。
また、職場など同じコミュニティの人の場合は周囲を味方に付けるのも一つの方法です。周囲が助けてくれることで、「言いがかり」をつけてきた人は居心地が悪くなるものです。
「言いがかり」の英語訳
英語では「unreasonable」を使って表現する
「言いがかり」を英語で表現する場合には、「理不尽・筋が通っていない」という意味の「unreasonable」を使って表現すると良いでしょう。たとえば、「an reasonable claim(理不尽な主張)」で「言いがかり」のニュアンスを出すことができます。
なお、英単語の「claim」は「(権利としての)要求・請求、主張」などの意味であるため、単に「claim」だけでは「言いがかり」の意味にはなりません。
That is an unreasonable claim.(それは言いがかりだ)
また、「言いがかり=明らかに間違った主張」と意訳し、「a false accusation(間違った指摘)」「a false statement(間違った定義)」といった英語訳も可能です。相手の主張に対しては「It is just wrong.(それは間違っている)」と反論することもあるようです。
まとめ
「言いがかり」とは、「難癖をつけること・筋の通らない文句」という意味の表現で、端的に言うと「非がないのに責められること」を指します。そのため、正当な理由があり不平・不満をぶつける「苦情」「クレーム」とは異なると言えるでしょう。ただし、「クレーマー」に代表されるように、いわれのない事柄に対してしつこく申し立てるような場合の「クレーム」例外です。細かいニュアンスの違いに注意しながら使用したい表現です。