「やむなし」の意味とは?使い方・例文と敬語・類語表現も解説

「中止もやむなし」などに使われる「やむなし」には、どういった意味があるのでしょう。本記事では、「やむなし」の意味や漢字表記、その使い方について詳しく解説しました。また、「やむなし」と似たワード「やむなく」との違いや敬語への言い換え、類語・英語訳などにも触れています。

「やむなし」の意味とは

「やむなし」とは「やむを得ない・仕方がない」こと

「やむなし」とは、「やむを得ない・仕方がない」という意味です。「どうしようもなく仕方がないこと」「他にはなすすべがなく、そうするよりほかないこと」に対して「やむなし」と使用します。

この「やむなし」は元々は「やむない」という単語です。「やむない」が変化した形が「やむなし」で、意味は「やむない」も「やむなし」も同じです。

漢字では「止む無し」あるいは「已む無し」

「やむなし」を漢字で書くと「止む無し」となります。「止まることが無い」つまり、先述した「どうしようもなく、やむを得ない」という意味につながります。また、「やむなし」の漢字表記は「已む無し」でも問題ありません。「已む」には「止む」と同じ意味がありますが、常用外漢字のため、「止む無し」の漢字表記が用いられることが多いでしょう。

「やむなし」の使い方と例文

「~もやむなし」の表現でよく用いられる

「やむなし」という単語は、「~もやむなし」の表現でよく用いられ、「そうするより他、なすすべがない」という風に強調のニュアンスを持った表現となります。たとえば、「中止もやむなし」というと「中止するしかない(中止以外に選択肢はない)」という意味です。

例文
  • 先のスキャンダルで辞職もやむなしとの声が上がっている。
  • 今夏の花火大会は中止もやむなしと判断された。

このほか、「~はやむなし」や「やむなしだろう」といった表現もよく用いられます。

例文
  • 子供の急な発熱とあっては、旅行の延期はやむなしだ。
  • 相場より高いが、これだけの品質ではこの高値はやむなしだろう。
  • 近年の情勢を考慮すると、社長の判断もやむなしだ。

ビジネスシーンでは「やむなく~する」もよく使う表現

ビジネスシーンでは、「やむなし」と似た表現「やむなく」を用いることも多いでしょう。「やむなく」もまた、「やむない」の変化形(連用形)で、「やむなく~する」の形で副詞的に用いられます。意味は「やむなし」と同様で、「やむを得ず・仕方なく」となります。

例文
  • 社会情勢から判断し、やむなく中止することとなった。
  • 上客の頼みとあって断れず、やむなく承諾した。
  • 夫婦円満のためと思い、妻の言い分をやむなく受け入れている。

敬語に言い換える場合には「致し方ない」がベター

「やむなし」は「やむなしですね」のように会話で使用することがあります。この場合「仕方ありませんね」といったニュアンスにとることができます。

例文

オリンピックが延期になりましたね。-この状況ではやむなしですね。

ただし、敬意を込めた表現として「やむなし」を用いるのであれば、「致し方ない」の方がよいでしょう。「致し方ない」とは「仕方ない」の敬語表現で、「致し方ありません」や「致し方ございません」などの形で用いられます。

例文
  • この状況では致し方ありません。
  • 中止という判断も致し方ないでしょう。

「やむなし」の類語・言い換え表現とは

似た意味の表現は「余儀なくされる」「詮方ない」

「やむなし」と似た意味の表現では、「やむを得ない」や「やむを得ず」などのほかに「~を余儀なくされる」や「詮方ない」も類義表現と言えるでしょう。

「余儀なくされる」とは、「やむを得ず、そうせざるを得ない様」を表します。たとえば、「中止もやむなし」は「中止を余儀なくされた」と言い換えることができるでしょう。

一方、「詮方ない(せんかたない)」とは「仕方がない・なすべき方法がない」という意味で、こちらも「やむなし」と似た意味を持ちます。「今更そんなことを言っても詮方ない」などと使うことができます。

「やむなく~する」は「仕方なく~する」と言い換え可

先に紹介した「やむなく~する」は、「仕方なく~する」とも表現できます。たとえば、「やむなく延期する」は「仕方なく延期する」と言い換えられるでしょう。ただし、「やむなく」という表現の方がやや強いニュアンスを伴うのが特徴で、「他になすすべがなく仕方なく」を強調したい場合には「やむなく~」を使用したほうがベターです。

「やむなし」の英語訳

「やむなし」は英語で「避けられない」と表現する

「やむなし」を英語にする場合は、「~することは(が)避けられない」と意訳するのが通例です。「避けられない」という意味を持つ英単語には「inevitable」や「avoidable」などがありますが、「it cannot be helped~」や「there is no other way」などの「~せざるを得ない」という意味の定型表現もよく用いられます。

また、「there is no choice」も「やむなし(~するより仕方がない)」の意味で使用できます。

例文
  • Well, you can’t help it.(まあ、やむなしだね)
  • I can’t help doing that.(そうせざるを得ないんだ)
  • There is no other way.(ほかに方法はない・やむなしだ)
  • There is no choice in this matter.(この件についてはやむなしだ)

まとめ

「やむなし」は「やむを得ない・仕方がない」という意味です。「やむなし」よりも頻繁に耳にするのが「やむなく(~する)」という表現ですが、いずれも同じ「やむない」という単語に由来します。意味は同じですが、使い方・言い回しには違いがあります。例文を参考に使い分けてみてください。