価格の表示には、「定価」をはじめ「希望小売価格」や「オープン価格」など様々な表示例が挙げられます。本記事では、「定価」の詳しい意味や定義とともに、「独占禁止法」との関連についても触れています。また、「定価」と類似する様々な価格表現との違いもわかりやすく紹介しました。
「定価」の意味とは
わかりやすくいうと「前もって定められた価格」のこと
「定価」とは、文字通り「前もって定められた価格・決めてある売値」を意味します。「定価で販売する」というと、「前もって定められた価格で販売する」という意味です。英語では「List price」と表示されます。
この「定価」という単語は、元々は、「メーカーなどが小売業者に製品を卸す際につけた価格」に対して用いられていた表現です。現在でも「メーカー側が定めた価格」の意味で「定価」と使うこともありますが、一部を除き、小売業者に対し販売価格を一方的に決めることは法律で禁じられています。
「定価」の維持は一部を除き、独占禁止法違反に
先にも触れたように、「定価」として販売価格を小売業者に維持させることは独占禁止法において禁じられています。自由な価格競争・価格設定を拒むためです。
ただし市場に流通する製品のすべてにおいて「定価」が禁じられているかというとそうではありません。一部の商品では、「再販制度(再販売価格維持制度)」として「定価」が用いられています。
除外対象はたばこや新聞、書籍、CDなど
独占禁止法において除外されているものには、まず「たばこ」が挙げられます。また、新聞や書籍、CDなどといった「著作物」に関しても「定価」が用いられます。これらは、文化振興を促す目的からも、全国一律の価格で販売されるのが望ましいとされていて、「再販制度(再販売価格維持制度)」が適用されます。
「定価」は価格が拘束されるため、値引きは不可
「再販制度(再販売価格維持制度)」が適用され「定価」で販売される商品は、すべて価格が拘束されます。そのため、原則として「定価」から値引きして販売することはできません。ただし、発売後一定期間を過ぎた雑誌など「時限再販」や「非再販」の形で割引価格で販売されることもあります。
「定価」は消費税込・税抜きどちらの場合もある
「定価」はあくまでも「あらかじめ定められた価格」という意味の単語なので、消費税込み・消費税抜きのいずれでも問題ないとされています。そのため、記載されている「定価」が「税込み」と「税抜き」のどちらに該当するかは、その商品の価格欄で確認します。
「定価」と「希望小売価格」「オープン価格」の違いとは
「希望小売価格」は「メーカーが希望する価格」
「希望小売価格」とは、「メーカー側が小売店にこの価格で売ってほしいと希望する価格」のことです。「定価」が、小売店に対して拘束力のある価格(値下げができない価格)であるのに対し、「希望小売価格」はあくまでも「希望」であり、これを参考に、実際の販売価格は小売店が決定することができます。たとえば、「希望小売価格1500円」とわかる商品を1000円で販売した場合、消費者には「お得感」が生まれます。
価格の最終的な決定権は小売店にあることから「参考価格」や「標準小売価格」とも呼ばれます。いずれも同様の意味を持つ価格表示です。
「オープン価格」とは「小売店が自由に決める価格」
「オープン価格」とは、「メーカー側は出荷額のみを決め実際の販売価格は小売店が自由に決めることができるもの」を意味します。
たとえば、「希望小売価格7万円の50%オフ」というと聞こえは良いですが、実際には割引後の価格(3万5,000円)が相場であった場合、消費者は「安くもないのに安く見せられている」ということになります。これは「二重価格表示問題」と呼ばれ、一時期大きな問題となりました。
これに対し、一定の基準が設けられたこと、また値引き率の誇張を避けることなどの理由から、「オープン価格」という表現が広く浸透したようです。
現在は「オープン価格」が主流に
ここまで、「定価」を含めいろいろな価格表示について触れてきましたが、近年では「オープン価格」とする表記が主流となっているようです。「定価」は今では一部の再販制度に該当する商品に限られているため、また「希望小売価格」は先述の二重価格表示問題があることが理由となっています。「オープン価格」の表記は、市場価格に近付けやすいというメリットも一因として挙げられるでしょう。
「定価」とその他の類語との違い
「売価」とは「売る時の値段」のこと
「売価(ばいか)」とは、文字通り「売る時の価格・うりね」のことです。つまり、実際に店頭などで販売されている価格が「売価」と呼ばれます。
「標準価格」はメーカーが表示した価格のこと
「標準価格」とは、先述した「希望小売価格」と同様の意味を持つ表現で、「メーカー側が販売価格として表示した価格」を指します。また、「行政が特定の製品に対して店頭表示するように指定した価格」という意味もあります。
「単価」は売上単位ひとつあたりの値段
「単価」とは、「ひとつあたりの値段」のことで、商品ひとつ、あるいは売上上の単位ひとつの値段を意味します。「@」を用いて表示されることもあります。
たとえば、店頭で売値100円の商品を3つ使った場合の「単価」は100円です。一方、定価500円のものを2点買った場合の「単価」は500円になるように、「定価」「売値」などどの販売価格に対しても「単価」は存在します。
「原価」は「仕入れの値段・もとね」のこと
「原価」とは、「仕入れの際の値段・もとね」を意味します。端的に言うと、「その製品をつくるために使った金額」が「原価」です。材料費だけでなく、製造にかかるお金やサービスを提供する人の賃金(人件費)など、様々な費用が「原価」には含まれます。
まとめ
「定価」とは、「メーカー側があらかじめ定めた価格」という意味で、元々はあらゆる商品に対して用いられていましたが、現在では独占禁止法などとの関係でたばこや新聞・出版物・CDなどの著作物に対して用いられています。これに対し、「小売店側が自由に価格を設定できる」ことを意味する表示には「オープン価格」などがあります。