「たゆたう光と影」「たゆたうままに」など、文学や芸術作品では「たゆたう」という表現を時折耳にします。本記事では「たゆたう(揺蕩う)」の詳しい意味をはじめ、その使い方や類語・英語訳について解説しました。
「たゆたう」の意味とは
「たゆたう」とは「ゆらゆら動いて定まらない様」を意味する
「たゆたう」とは、「物がゆらゆらと動く」「止まらずにずっと揺れ動く」という意味です。たとえば、ゆらゆらと揺れ動いて定まらない様を「たゆたう」と表現することができ、波に揺られる船、風に吹かれる木の葉などはその代表例と言えるでしょう。
「たゆたう」には「ためらう」の意味も
「たゆたう」には、「物が揺れ動く」だけでなく「心が揺れ動く」という意味もあります。そこから、「心が動揺し決めかねる・迷う」「ためらう」などの意味でも使用することができます。
ただし、現代では「迷う」「ためらう」などといった心理描写の意味で使われるケースはあまりなく、先述の「物が揺れ動く」という意味で用いられることが多いでしょう。
「たゆたう」を漢字で書くと「揺蕩う」
「たゆたう」は漢字では「揺蕩う」あるいは「猶予う」と書きます。漢字表記では「揺蕩う」の方がよく用いられています。ただし、漢字とひらがなでは、ひらがな表記の方がメジャーです。「揺蕩う」と、漢字で表現されることは、文学作品でもあまり多くはないでしょう。
「たゆたう」の使い方と例文
「たゆたう光と影」などゆらゆらと揺れる光景を指す
「たゆたう」は揺れ動くものに対して用いられます。やや文学的な印象を与える単語で日常会話で使用されることはあまりありません。また、「たゆたう光と影」のように自然が生み出した光景を描写する際に使われることが多い表現でもあります。
- 漁を終えてたゆたう船をただただ眺めている。
- 木の葉とともにたゆたう光と影が新緑の季節をより一層清々しいものにしている。
- 風鈴が風に吹かれたゆたう姿は何とも風情がある。
- 我が子の髪が風にたゆたう様は何とも愛らしく、それだけで愛おしい。
「たゆたうままに」は「揺れ動くままに」の意味
「たゆたう」は、しばしば「たゆたうままに」の形でも用いられます。この場合、「揺れ動くままに」の意味にとることができ、「自然にまかせて揺れている」様などに対して使うことができます。
- たゆたうままに身を任せると、波の心地よさを全身で感じることができる。
- 何事も、たゆたうままのその自然な姿が美しいものだ。
「たゆたう時」は「のんびりした時間」のこと
「たゆたう時」とは、「のんびりとした時間」「穏やかな時間」という意味合いです。「ぼんやりとした時間」の意味にもとることができるでしょう。いずれも、「ただ時の流れに身を任せたような時間」というニュアンスです。慌ただしい日常とは対極的な表現として用いることができます。
- 現代人には、どん欲に求める時間ではなく、たゆたう時こそ必要なのではないだろうか。
- ただただ、たゆたう時を楽しむこと程贅沢なことはない。
「たゆたう」の類語と例文
似た意味の表現は「ただよう」
「たゆたう」と似た意味の単語は、「ただよう」です。「ただよう(漂う)」とは、「空中や水中にふわふわと浮いている・浮いて運ばれる」という意味です。「さまよい歩く」という意味もあります。
また、「揺れ動く様」を表す「ゆらゆらする」「ふらふらする」なども「たゆたう」と似た意味を持つ表現と言えるでしょう。
「たゆたう」の類語を使った例文
- 波に漂う船をただただ眺めていた。
- ゆらゆらと揺れる木の葉がもたらす風が心地よい。
心情を表す意味の場合には「ためらう」も類語
先述のように、「たゆたう」には、「心が揺れ動いて決めかねる」という意味があります。そのため、「迷う・ためらう」なども「たゆたう」と似た意味の表現として挙げられます。「決心がぐらつく」などの表現で知られる「ぐらつく」という単語も類語表現です。
「たゆたう」の英語訳
「たゆたう」は英語で「waver」を使う
「たゆたう」を英語で表現する場合には、「揺れる・揺らぐ」などの意味を持つ「waver」を使用します。たとえば、「たゆたう影(揺らめく影)」は、「wavering shadows」と表現することができます。
また、「waver」には「たゆたう」同様に、「心が揺らぐ」という意味もあります。たとえば、「She wavered in her convictions.(彼女は考えが揺らいだ)」などと使うことが可能です。「ためらう」という意味を英訳する場合は、「hesitate」を使い表現することもできます。
まとめ
「たゆたう」とは、「ゆらゆらと揺れ動く」という意味の表現です。物に対して用いられることが多いですが、心が揺れ動く様に対して「ためらう」の意味で使うこともできます。「たゆたう」はやや文学的な表現なので日常会話で使うことはまずありませんが、小説作品などで豊かな情景を想像できるよう是非とも知っておきたい単語です。