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後期高齢者を家族の社会保険(協会けんぽなど)の扶養にできる?

75歳以上の後期高齢者は医療制度において独立した「後期高齢者医療制度」に加入します。自分の社会保険(協会けんぽなど)の被扶養者であった親が75歳になったとき、扶養を継続することはできるのでしょうか?

この記事では、現役世代にはなじみのない保険制度である後期高齢者医療制度において、扶養に焦点を当てて解説します。参考のため社会保険と後期高齢者医療制度の違いについても解説しています。

「後期高齢者」は医療保険の扶養に入れられる?

75歳以上の後期高齢者になると、原則として全員が「後期高齢者医療保険制度」に加入します。その場合、それまで加入していた国民健康保険などからは脱退することになります。両親などを自分の健康保険の扶養に入れていた場合はどうなるのでしょうか?

あるいはまた、「後期高齢者医療保険制度」の被保険者となった後期高齢者が妻や子どもなどを自分の保険の扶養者とすることはできるのでしょうか?

「後期高齢者」を健康保険(社会保険)の扶養に入れることはできない

「後期高齢者医療保険制度」は、加入する後期高齢者が個人ごとに加入する保険制度であり、個人ごとに保険料を負担します。

そのため、後期高齢者を家族の健康保険(社会保険:協会けんぽや組合健保など)の扶養に入れることはできません。あるいは、「後期高齢者医療保険制度」には扶養の概念がないため、後期高齢者医療保険制度の被保険者が、妻や子どもなどを自分の保険の扶養に入れることもできません。

後期高齢者となった人にそれまで扶養されていた人は別の制度に加入する

前述のとおり、後期高齢者は家族を医療保険の扶養に入れることはできません。それでは、妻が夫の社会保険の被扶養者であるケースで、夫が75歳になって後期高齢者医療保険制度に移行した場合は、その妻はどうしたらよいのでしょうか?

妻は夫とともに社会保険の資格を喪失するため、他の制度に加入することになります。息子や娘など他の家族の会社の健康保険に加入できる場合は被扶養者として加入するか、個人で市町村の国民健康保険に加入するなどの手続きが必要です。

74歳まで家族の健康保険の扶養に入っていた人は75歳になると脱退

74歳まで、家族の健康保険の扶養に入っていた高齢者は、75歳の誕生日からはその保険から脱退し、後期高齢者医療制度に加入します。後期高齢者医療制度は自動的に加入されるため、手続きは必要ありませんが、健康保険の脱退(資格喪失)手続きが必要となる場合があります。加入している健康保険で手続き方法をご確認ください。

被扶養者から後期高齢者医療制度の被保険者となった人には負担軽減措置がある

75歳の誕生日を迎えて後期高齢者医療制度に加入する直前まで、家族等の健康保険の被扶養者であった人は、後期高齢者医療制度の保険料の支払いが突然始まることになり、負担となる場合があります。

そのため、負担軽減措置として、後期高齢者医療制度の被保険者となった月から2年間、保険料の「所得割」の負担は免除され、「均等割」は一定割合が軽減されます。

※「後期高齢者医療制度」の保険料は「所得割」と「均等割」の合計額です。詳しくは下記をご確認ください。

◆参考記事
「後期高齢者医療制度の保険料」はいくら?計算方法や保険料率も

「後期高齢者医療制度」と「健康保険(社会保険)」の違いとは?

医療保険には「被用者保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療保険」がある

日本の公的な医療保険制度には、「被用者保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療保険」の3つの制度があります。

「被用者保険」とは、中小企業が加入する健康保険の「協会けんぽ(全国健康保険協会が運営)」と、大企業の健康保険組合が運営する組合保険、加えて船員保険と国家公務員が加入する各種共済保険のことをいいます。「被用者」とは「勤め人」のことです。一般的に「社会保険」と呼ばれている保険制度は被用者保険のことを指します。

会社勤めではない農業者や自営業者などが加入するのが「国民健康保険」で、75歳以上の後期高齢者全員が加入するのが「後期高齢者医療制度」です。

2008年より新たに「後期高齢者医療保険」が新設された

会社に雇われて給料を得ている被用者「勤め人:雇用労働者」のグループと、農業・自営業などによって自分で生産手段を持って収入を得ているグループの2つの働き方のグループに加えて、75歳以上の後期高齢者が独立した制度として2008年から加わりました。

老人医療の対象年齢は、従来は70歳以上でしたが、2002年10月から2007年度にかけて5年間にわたって引き上げが行われました。2008年度に後期高齢者医療制度が導入され、75歳以上に引き上げが決定されました。

この制度の特徴のひとつに、老人保健を一本化することで財源を明確化したことが挙げられます。高齢者の保険料が約1割、現役世代からの支援金は約4割、公費が約5割の負担割合となっています。

まとめ

日本では、国民すべてが公的な医療保険に加入することが義務付けられています。これを国民皆保険といいます。ただし、生活保護を受けている人は医療扶助から医療を受けるため、医療保険に加入することはありませんが、別の形で医療保障がなされています。

このようなしっかりとした医療保障が行われている国は、世界の中で実はそれほど多くはなく、世界に誇れる仕組みであることは当の日本人があまり意識していないことかもしれません。

しかし、超高齢社会を迎えた日本は、手厚い医療保険制度を今後も継続していくために、さまざまな改革を行っています。独立した制度である後期高齢者医療制度も医療制度の様々な問題を解決するために新たに作られた仕組みです。制度内容は頻繁に改定されることが予想されるため、最新の情報はお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。