正社員の場合、勤続年数に応じて「有給」つまり「有給休暇」をもらうことができますが、この「有給」はアルバイトやパートスタッフも条件を満たせば取得することができます。本記事では、「有給」とは何かに始まり、アルバイトの「有給」の条件や支給日数について解説しました。また、「有給」の取得義務についても触れています。
アルバイトの「有給休暇」とは?
「有給休暇」とは「給料が発生する休み」のこと
まず、「有給休暇」とは、正式には「年次有給休暇」のことで、「給料が発生する休み」を意味します。一般には「有給」と略される他、「年休」「有休」といった名称でも知られています。
アルバイトでも「有給休暇」は発生する
「有給」は、労働基準法に定められた休暇制度で、一定条件を満たせば、正社員だけでなくアルバイトやパートタイム労働者、契約社員などすべてのスタッフに付与されることが法律によって定められています。つまり、条件こそあれど、すべての労働者に対する権利なのです。
アルバイトの「有給」、給料の計算方法は3パターン
「有給」は「給料が発生する休暇制度」であることは先述した通りですが、その際の給与はどう計算されるのでしょう。アルバイトのように時給勤務の場合には3通りの給与計算方法があります。
まず、過去3か月間の合計賃金から「平均給料」を出す方法、日ごろの労働時間を基に「通常賃金」を出し支払う方法が挙げられます。また、これとは少し違う方法で、「標準報酬日額」を用いて「有給」取得時の給与を計算する方法もあります。いずれの方法で計算するかは、会社のやり方に従うことになるため、個人に決定権はありません。
アルバイトの「有給」支給条件とは
勤続半年ではじめて「有給」が支給される
「有給」が支給されるひとつ目の条件が勤続期間です。働き始めてから、半年経ちはじめて「有給」が発生します。すべての労働者に認められた制度であると先述しましたが、勤続半年未満の段階では「有給」は発生しません。
所定労働日の8割勤務していることも条件のひとつ
「有給」の支給にはもうひとつ条件があり、所定の労働日のうち8割を勤務していることが必要です。この「所定の労働日」とは、契約時に定められた出勤日数を意味します。
たとえば、半年で100日出勤するよう契約を結んでいた場合、その8割である80日を出勤していれば半年後に「有給」が支給されることになります。この場合、20日までの欠勤は「有給」の支給条件には差し支えません。なお、遅刻や早退も「出勤」とみなされます。
アルバイトに付与される「有給日数」は勤務日数・時間で変わる
アルバイトの「有給」の日数は、勤務日数と勤務時間で増減します。この場合、契約上の所定の労働日・労働時間で計算され、実際の残業時間等はカウントされないので注意が必要です。
たとえば、週30時間以上、あるいは週5日(または年間217日以上)勤務の場合は、年間10日の「有給」が付与されます。さらにその一年後、8割以上出勤した場合には11日が付与され、上限を20日とし、年を追うごとに付与日数が増える仕組みとなっています。
週1回の勤務でも有給はもらえる
一方、週30時間未満、かつ週4日以下(または年間48~216日)勤務という場合は、労働日数に応じて、段階的に「有給」が付与されます。たとえば、週の労働日数4日で年間169~216日の場合は年間7日の「有給」が付与されます。これ以下に関しては、段階的に年間5日、3日と定めがあり、週1日もしくは年間48~72日の場合で、初年度の付与日数が1日となります。いずれの場合も、勤続年数を追うごとに「有給」の日数が増える点は同じですが、所定の労働日が少ないほど、「有給」の増加も緩やかです。
「有給」は雇用契約書・就業規則で確認を
先述のように、「有給」の付与日数には、契約時の労働日数・労働時間が大きく関係します。そのため、自分の「有給」については雇用契約書を基に計算するのが良いでしょう。加えて「有給」の付与や規程については、雇用契約書あるいは就業規則に記載があるはずです。あわせて確認してみてください。
「有給」を取得する方法とは
早めに上司に打診をして調整を図るのがポイント
アルバイトが「有給」を取得するとなると、その分のシフトを誰かが埋めることになるでしょう。そのため、上司には早めに希望を伝え、調整を図る必要があります。特に繁忙期にどうしても休みたい場合などは、1ヶ月以上前に打診できると周囲への影響を抑えることができます。
なお、「有給」取得の理由は、原則不問ですが、中には上司に聞かれて返答に困ったという例も少なくありません。その際は角が立たないよう「遠出の用があって」「予定が入りまして」等、不信感を与えない程度に濁して問題ありません。
理由なく有給がもらえない・消化できないはNG
「有給」の取得には、会社側は原則として応じなければなりません。会社側には、「有給」の取得日を従業員にずらしてもらう「時季変更権」があり、特に繁忙期などは時季変更の打診を受けることもあります。ただし、あくまでも日程をずらすことができるだけであり、「有給取得不可」とすることはできません。
辞める時にまとめて取得するのは避けた方がベター
「有給」の取得はアルバイトにも認められた権利ではありますが、退職時にこれまでの「有給」をまとめて取得する際には注意が必要です。退職までにすべて消化したいという場合は、「退職届」を提出する前に上司や同僚に相談するのがマナーです。退職届と同時に「有給」取得を打診してしまうと、会社側の印象も悪くなりがちです。円満退職のためにも、先にスケジュール調整をすることをお勧めします。
アルバイトでも「有給取得の義務」に該当する場合も
「有給」の取得に関しては、2019年の法改正以降、年10日以上「有給」が付与される労働者に対し、年5日の取得が義務づけられました。これにより、アルバイトスタッフであっても、年10日以上の「有給」を付与される人は年に5日は「有給」を消化しなければならなくなったのです。アルバイトでも積極的に「有給」を活用しましょう。
まとめ
知らない人も多いアルバイトの「有給」制度ですが、所定労働日数が週1日の場合でも所定の条件(勤続半年以上、かつ勤務日の8割出勤)を満たせば「有給」が付与されます。契約時の労働日数・労働時間によって「有給」の付与日数も増減するため、まずは雇用契約書や就業規則で確認しましょう。その上で、労働者の権利としてうまく「有給」を活用してみてください。