相手の厚意を裏切るような行いに対して「不義理をした」「不義理を働く」などと表現することがあります。ビジネスシーンでもしばしば耳にする表現ですが、本記事ではその「不義理」の意味や「不義理を通す」など様々な使い方について解説しました。また、「不義理」の類語や英語訳についても触れています。
「不義理」の意味とは?
「不義理」の意味は”義理を欠くこと”
「不義理」の意味は、“義理を欠くこと・その様”や“礼儀を欠く様”です。ここでいう「義理」とは”物事の正しい筋道・人として守るべき道”のことです。つまり、「不義理」とは”人として守るべき道・礼儀を欠いている”という意味になります。
「不義理」には”借りたお金を返さないでいる様”という意味も
「不義理」は様々な無礼に対して用いられますが、中でも特に“借りたお金や物を返さないでいる様”という意味があります。たとえば、「彼に借りたお金を返さずになかったことのように過ごしている」という様は「彼に対する不義理」ということができるでしょう。
「不義理」の使い方と例文とは?
「不義理をする」「不義理をした」の形が一般的
「不義理」は”不義理をする・不義理をした”という形で用いられます。「不義理を働く」や「不義理なこと」といった言い回しもよく用いられる表現です。
- もちろん悪気などなかったが、結果的に不義理なことをしたと反省している。
- 不義理をしたのなら、速いところ謝罪したほうがよい。
- 不義理を働くつもりなどなく、社長には本当に感謝している。
- 叔父の口利きで入社した会社を3か月で辞めてしまったことは、自分でも不義理だと自覚している。
「不義理を重ねる」とは”不義理”なことが続く様を表す
「不義理を重ねる」とは、”不義理”なことが続く様、つまり「義理が果たせないことが続く様」を表しています。また、借金を重ねる様を言い表す際に「不義理を重ねる」と表現することも多いです。
- 父による親族への不義理が重なり、母も私も肩身の狭い思いだ。
- 転居の挨拶を怠っただけでなく、引っ越し先の連絡もしないままで恩師には不義理を重ねている。
- 不義理を重ねてしまい、お詫びの言葉すらない。
「不義理を通す」は自分の意志を貫く場合に使われる
「不義理を通す」とは”不義理”を貫くこと、つまり「不義理になることは承知で自分の意志を貫くこと」を表現しています。
「これまでの恩は決して忘れていないが、今回ばかりは不義理を通させてもらう」というと、”相手への恩を考えると不義理であることは重々承知しているが、その不義理を通す”という意味にとることができるでしょう。
「不義理に終わる」は義理立てができないままである様
「不義理に終わる」は”不義理のままである様”を意味します。たとえば、お世話になった人への恩返しができていない様を表したり、借金の返済ができていない様を表したりする場合に使います。
「不義理を欠く」とは言わない
「不義理を欠く」の形で「不義理」を使う人がいますが、これは「義理を欠く」の誤りと考えられます。そもそも「欠く」という単語には”なくては困るもの、必要なものが備わっていない”という意味があり、「義理を欠く」とは”義理がない=不義理”の意味になります。
この「義理を欠く」という表現と混同したのが「不義理を欠く」と推測できますが、「不義理」に対して「欠く」という動詞を用いることはありません。
「不義理者」とは”不義理をした人”のこと
「不義理者」とは、文字通り”不義理をした人”のことを指す表現です。「退職したとはいえ、一度も連絡をよこさないとは不義理者と呼ばれても仕方ないだろう」などの表現で用いることができます。
「不義理」の類語とは?
「不義理」の類語は「恩知らず」
「不義理」と似た意味を持つ表現には、“恩知らず”が挙げられます。「恩知らず」とは人から恩を受けても返そうとしないことです。この言葉には感謝の気持ちがない意味が込められています。
たとえば「不義理を働く」を言い換えるならば、「恩知らずな行動」になります。恩知らずと同じ意味を持つ熟語「忘恩(ぼうおん)」も同じように使えます。
「不誠実」は誠意がない場合に言い換えできる
「不義理」の類語には「不誠実」もあります。「不誠実」とは誠実ではないこと・まごころのないことです。他者を思いやらず、真面目に向き合わないことを意味します。「誠意がない」とも言い換えできます。
たとえば「不誠実な有様」「誠意がない態度」のように表現します。「不義理」の意味する礼儀を「誠実さ」だと言いたいときには、「不誠実」がぴったりでしょう。
「不義理」をしたらお詫びが必要?
仕事では「退職」が良い例
「不義理をする」とは、たとえば、お世話になった人に連絡を怠り疎遠になってしまった、などの例がありますが、ビジネスシーンでは会社を辞めることを指して「不義理」と使うことが多いでしょう。
たとえば、目をかけてくれていた上司に十分な活躍を見せることなく退職した場合などがその一例として挙げられます。お世話になった人への感謝や恩義、またその裏にあるうしろめたさなどから「不義理」と表現されると考えられます。
「不義理」な事柄は気づいた時点で謝罪を
「不義理をした」と気づいた場合には、その時点で何らかの連絡を入れるのが妥当です。「不義理」を続けるほど、連絡が滞ってしまうため、できるだけ早く「不義理」のお詫びを伝え、これまでの感謝の意を伝えるのが良いでしょう。また、「不義理」とならないよう努力を重ねることも恩返しにつながるかもしれません。
「不義理」の英語訳とは?
「不義理」は英語で”ingratitude”と表現する
「不義理」を英語で表現する場合には“ingratitude”を使用することができます。「ingratitude」は”恩知らず・感謝の念がないこと”などの意味を持つ単語です。たとえば、「It is a person doing only ingratitude」と使うと”不義理ばかりするやつ”という意味になります。
また、同じ「恩知らず」という意味を持つ単語には”ungrateful”もあります。
まとめ
「不義理」とは”礼儀を欠く様・義理を欠くこと”という意味の表現で、「本来は通すべき筋を通していない様・恩知らずなこと」を言い表す際によく用いられます。ビジネスシーンではお世話になった会社を突然退職する様を言い表す際に使われることも多いです。
もし、自分の行いが「不義理」だと気づいた場合は、連絡を取り近況を報告して、仕事にまい進している姿を知らせるのもいいのではないでしょうか。