「個人事業主」と「 社会保険」の関係とは?加入義務や負担額も

会社を退職して個人事業主として独立しようとするとき、心配になるのが社会保険です。会社に雇われない個人が加入する社会保険の制度についてはあまり知られていないかもしれません。

この記事では、個人事業主と社会保険との関係や負担額等について解説します。加入義務のある社会保険と加入できない社会保険に分けて解説します。

「個人事業主」と「社会保険」との関係とは?

個人事業主の加入義務がある社会保険は「年金」「医療保険」「介護保険」

日本の「社会保険」には「年金」「医療保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの制度があります。その性格により、「年金」「医療保険」「介護保険」を社会保険とし、「雇用保険」「労災保険」を「労働保険」と分類することもあります。

個人事業主の加入義務がある社会保険は「年金」「医療保険」「介護保険」の3つです。次の章では個人事業主が加入する3つの社会保険についてそれぞれの内容を解説します。

「個人事業主」が加入する医療保険は「国民健康保険」

個人事業主は地域保健の「国民健康保険」に加入する

日本の公的な医療保険は大きく2つに分けられます。居住する地域を基盤とする地域保健である「国民健康保険」と、職場を基本とする職域保険である「被用者健康保険」です。

個人事業主は地域保健の「国民健康保険」に加入します。会社員が加入するのは健康保険組合や協会けんぽなどの「被用者保険」です。

日本は1961年より国民皆保険制度がとられており、日本国内に住む国民はいずれかの医療保険に必ず加入することと決められています。会社員とその扶養家族は会社が加入する被用者保険に加入しますが、会社を退職して個人事業主となった場合、退職と同時に被用者保険から脱退となるため、国民健康保険に加入する手続きを住所のある市区町村に自分で申請します。

国民健康保険の保険料は「被保険者が全額負担」

被用者保険は会社と被保険者が折半で保険料を負担しますが、国民健康保険の保険料は被保険者が全額負担します。そのため、被用者保険から国民健康保険に移行すると保険料が高額となる場合があります。

移行措置として、被用者保険の資格を失った人が2年間継続して被保険者となれる任意継続被保険者制度があります。しかしその場合は被保険者が保険料の全額を支払います。

保険料は世帯ごとに決まるが扶養制度は無い

国民健康保険の保険料は世帯ごとに計算されます。世帯ごとの被保険者数に応じた定額負担と所得額に応じた負担の合計額です。国民健康保険に加入する際は、世帯主が、その世帯に属する人で他の医療保険に加入していない人の全員について届け出を行います。

なお、会社員が加入する被用者保険には扶養する家族を自分の保険に被扶養者として加入させる制度がありますが、国民健康保険には扶養の制度がなく、世帯員それぞれが個別に加入し、保険料を支払う仕組みです。

医療費の自己負担額は3割

国民健康保険では、かかった医療費の自己負担は義務教育就学後から70歳未満の人は3割負担です。義務教育就学前までは2割、70歳から74歳までは2割(現役並み所得者は3割)負担です。

現役世代が3割負担となるのは、他の公的医療保険でも同様です。

他の医療保険に加入していない人は全員「国民健康保険」に加入

75歳未満の人で職域保険などの他の医療保険に加入していない人は、全員が「国民健康保険」に加入する義務があります。つまり、自営業者を含めて、学生、無職者なども対象です。

なお、国民健康保険の加入期間は0歳から74歳までとなり、75歳からは都道府県の広域連合が運営する「後期高齢者医療制度」に自動的に加入します。

■後期高齢者医療制度について詳しくは以下の記事をご覧ください。
「後期高齢者医療制度」の仕組みとは?該当年齢や負担割合も解説

 
 

「個人事業主」が加入する年金は「国民年金」

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は「全員が国民年金に加入」

個人事業主は、国民健康保険とともに「国民年金」に加入します。日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は全員が国民年金に加入します。働き方によって被保険者の資格が異なり、自営業者や学生などは「第1号被保険者」となります。住所地の市区役所または町村役場で手続きを行います。

会社員や公務員などの被用者は「第2号被保険者」となり、その被扶養者は「第3号被保険者」となります。「第2号被保険者」と「第3号被保険者」は国民年金に加えて厚生年金にも加入することになります。そのため、年金は2階建てと呼ばれ、国民年金が1階部分にあたります。

国民年金の保険料は収入に関係なく一律

国民年金の保険料は収入の多寡にかかわらず一律の定額です。2020年の保険料は月額16,540円です。しかし低所得者には免除の仕組みがあり、収入によって全額または一部が免除されます。

なお、厚生年金の保険料は被用者保険とおなじく労使折半であるため、事業主が半分を負担しますが、国民年金の第1号被保険者は全額を個人が支払います。

また、厚生年金には扶養者の制度がありますが国民年金にはありません。

「個人事業主」は国民健康保険を通じて「介護保険」に加入

「個人事業主」は国民健康保険と一緒に「介護保険料」を支払う

医療保険と年金は会社員とその被扶養者は会社の保険や年金に加入し、手続きは会社が行います。会社などに属さない個人事業主は、国民健康保険と国民年金に個人ごとに加入することを先に説明しました。

それに加えて、原則として40歳以上の人が加入して保険料を支払う「介護保険」はどのように加入するのでしょうか?

介護保険は加入している医療保険を通じて保険料が請求されます。個人事業主の場合は、国民健康保険料と一緒に世帯分の介護保険料を支払います。被用者保険に加入している勤め人などは、健康保険料と同じく労使折半で半額が給与から天引きされます。

65歳からは「年金から天引き」または「口座振替」で支払う

介護保険は65歳からは医療保険を通じて支払うのではなく、年金受給者は年金から天引きとなります。年金未受給者は口座振替などにより支払います。

「労働保険(雇用保険・労災保険)」と個人事業主との関係とは?

個人事業主は「労働者」ではないため「労災保険」の被保険者とはならない

労災保険は「労働者」を使用する事業に適用される保険制度です。労働者とは労働基準法において「事業所等に使用される者で賃金を支払われる者」と定められています。個人事業主は事業所に使用されて賃金を支払われる者ではないため、労災保険に加入することはできません。なお、労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」です。

しかし、「労働者」ではない人のための特別加入制度が設けられています。中小企業の事業主や個人事業主が加入することができ、労働者の行う業務と同じ業務であると保険者に承認された業務の範囲で保護の対象となります。

個人事業主は「労働者」ではないため「雇用保険」にも適用されない

雇用保険は、労災保険と同じく「労働者」を使用する事業に適用される制度です。雇用保険の対象は勤め人のみです。個人事業主は労働者(勤め人)ではないため、雇用保険に加入することはできません。

なお、どんな事業でも労働者を1人でも雇用していれば、雇用保険の適用事業となります。雇用保険は全国を単位として1つのみの制度であり、国が保険者です。

まとめ

会社に雇われて働くのではなく、自ら事業を行う個人事業主は、国民健康保険、国民年金、介護保険に加入します。労使折半の会社員と違い、保険料は全額が個人負担となります。また、国民健康保険や国民年金には扶養の制度がないため、扶養家族がいたとしても個人ごとに保険料を支払います。

加えて、会社員は厚生年金とともに国民年金にも加入するため、年金は2階建てとなり、国民年金よりも有利です。

国民皆保険、国民皆年金制度が取られている日本ですが、仕事の仕方によって社会保障に格差が生じていることが問題となっています。制度が作られた時代には企業の終身雇用を基本とする雇用慣行が背景にあったことが原因ですが、仕事の仕方が多様化した現在、社会保障制度の見直しが求められています。