「後期高齢者医療制度」の仕組みとは?該当年齢や負担割合も解説

「後期高齢者医療制度」は、増え続ける高齢者医療費の問題を解消するために2008年より導入された医療保険制度です。現役世代も財源の4割を負担していますが、制度について詳しくはよくわからないという人が多いのではないでしょうか。

この記事では、「後期高齢者医療制度」の仕組みについて詳しく解説します。あわせて制度の設立の背景と今後の課題についても触れています。

「後期高齢者医療制度」の仕組みとは?

該当年齢は「75歳から」

「後期高齢者医療制度」はすべての後期高齢者が加入する独立した医療保険制度です。後期高齢者とは75歳以上の人を指します。

ただし、一定の障害もある方は65歳から加入することができます。加えて生活保護受給者は対象外です。

◆該当年齢についての詳細は下記記事をご確認ください。
「後期高齢者医療制度」対象年齢は何歳から?障害者や保険料も

「保険証」は自動的に交付される

「後期高齢者医療制度」への加入は申請をしなくとも自動的に手続きが行われます。75歳の誕生日の前日までに、お住まいの市区町村から保険証が送付されます。

◆保険証についての詳細は下記記事をご確認ください。
「後期高齢者医療制度」の「保険証」有効期限や自己負担割合は?

毎月の「保険料」は所得に応じて決定される

「後期高齢者医療制度」の被保険者は、毎月一定の保険料を支払います。保険料はそれぞれの所得に応じて決定されます。

具体的には、被保険者の所得に応じて負担する「所得割額」と、被保険者全員が均等に負担する「均等割額」の二つの合計額です。

「所得割額」を定めるための所得割率と、「均等割額」は、各都道府県に設置されている広域連合ごとに決定されるため、自治体ごとに保険料金は異なります。

◆保険料についての詳細は下記記事をご確認ください。
「後期高齢者医療制度の保険料」はいくら?計算方法や保険料率も

医療機関等にかかった際の「窓口負担」は1割~3割

毎月支払う保険料とともに、医療機関等にかかった際は、医療費のうち1割から3割を自己負担します。基本は1割負担ですが、現役並みの所得がある人は3割負担となります。

また、2022年度より、現在1割負担の区分の人のうち一定の所得以上の人に2割負担を求める方針が決定しています。

◆医療費の自己負担割合についての詳細は下記記事をご確認ください。
「後期高齢者医療費制度」自己負担割合と上限は?財源も解説

限度額を超えた分が支給される「高額医療費支給制度」

窓口での自己負担金額が一定の額(限度額)を超えると、超えた分が支給される「高額療養費制度」があります。医療費の自己負担が過重とならないよう、この制度によって一定の歯止めが設けられています。

医療機関の窓口で自己負担額を支払ったのち、月ごとの限度額を超える分があった場合は保険者(広域連合)から償還払い(※費用をいったん全額支払い、その後払い戻しを受けること)される制度です。限度額は所得に応じて決められています。

◆高額療養費についての詳細は下記記事をご確認ください。
「後期高齢者医療費制度」の「高額療養費」申請方法や上限額は?

「扶養」の概念はない

「後期高齢者医療制度」は、すべての後期高齢者が個人ごとに加入する制度であるため、「扶養」の概念はありません。

そのため、家族の社会保険の被扶養者であった人が後期高齢者医療制度に加入することになった場合、社会保険の扶養から外れて保険料の支払いが発生します。

あるいは、それまで自身の加入する社会保険に家族を被扶養者として加入させていた人が後期高齢者医療制度に加入する際には、その家族は国民健康保険等に加入することになります。

◆扶養についての詳細は下記記事をご確認ください。
後期高齢者を家族の社会保険(協会けんぽなど)の扶養にできる?

「後期高齢者医療制度」設立の背景と今後の課題とは?

高齢者医療費の急激な増加により老人保健制度に改革が求められた

「後期高齢者医療制度」が設立された背景には、急激な高齢化に伴う高齢者の医療費の増加があります。高齢者の医療費は年々増加し、それまでの老人保健制度の仕組みにはざまざまな問題が指摘されていました。

たとえば、世代間の費用負担の関係が不明確・不平等であったり、加入する制度や地域によって保険料額に格差が生じていました。そこで現役世代が4割、後期高齢者が1割を負担するという仕組みを作り、加えて独立した医療制度とすることで財政や運営責任を明確にしました。

現在の財源は「公費50%、支援金40%、保険料10%」に

以前の老人保健制度における財源は、公費50%と国民健康保険・社会保険からの支援金50%の2種類でした。それが前述の改革により、今の「後期高齢者医療制度」における財源は、被保険者からの保険料が加わることとなりましたので、公費50%、支援金40%、保険料10%から成り立っています。

後期高齢者自身にも相応の負担を求めることと、広域連合が運営する独立した制度であることが、「後期高齢者医療制度」の特徴です。

2025年問題への対応が喫緊の課題

「後期高齢者医療制度」は、それまでの制度の問題を解消しましたが、その一方で今後も増え続ける高齢者の医療費を支える持続可能な制度とするために、さまざまな課題を抱えています。

厚生労働省の資料によれば、平成29(2017)年度の国民医療費は約43兆円で、そのうち後期高齢者医療給付分は約15兆円となり、約34%を占めています。

また、経済財政諮問会議によれば、2025年の医療費は約58兆円、後期高齢者医療費は約25兆円となることが予測されています。

2025年には団塊の世代が75歳を迎え、後期高齢者の人口は約2,200万人となり、国民の4人に1人が後期高齢者となる時代を迎えることがわかっています。いわゆる2025年問題です。

増え続ける医療費に対して、誰がどのようにその費用を分担していくのか、あるいは現役世代がどこまで高齢者の医療費を支えていくことができるのかが高齢者医療の今後の大きな課題であり、中でも2025年問題への対処が喫緊の課題であるといえます。