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「博愛主義」の意味と特徴とは?対義語や「魔笛」との関係も解説

誰にも平等に優しく接する人を博愛主義者と呼ぶことがありますが、そもそも「博愛主義」とはどのような意味なのでしょうか?この記事では、「博愛主義」の意味や特徴について解説します。あわせて博愛主義の対義語や英語表現、加えて博愛主義団体のために作曲されたモーツァルトのオペラ「魔笛」についても触れています。

「博愛主義」の意味とは?

「博愛主義」の意味は”人類は広く平等に愛し合うべきとする主義”

「博愛主義(はくあいしゅぎ)」の意味は、“人種や宗教などの違いを超えて、人類は広く平等に愛し合うべきとする主義”のことです。また、すべての人を平等に愛する精神性を「博愛の精神」とも表現します。

なお、ここでの博愛の「愛」とは、”恋愛”の愛ではなく、慈善的意味合いを持つ普遍的な人類愛を指します。「博愛」はギリシャ語を由来とするヨーロッパ由来の概念であり、日本語の”愛”とは異なる意味合いを持ちます。

「博愛」の意味は”博(ひろ)く愛すること”

「博愛」とは、”博(ひろ)く愛すること”という意味です。「博(はく)」の語は、”広く行きわたる”という意味を持ち、「博士・博覧会・博識」などにも用いられます。

「博愛主義者」とは”博愛主義”の態度を取る人

普遍的な人類愛の理念に基づいて行動する人を「博愛主義者」と呼びます。特に恋愛占いにおいては、優しい性格の人を「博愛主義者」と分類することがあります。

「博愛主義」の特徴とは?

誰にでも分け隔てなく接する

博愛主義の人は、相手によって態度を変えることはしません。嫌いな人を作らないことも特徴で、誰に対しても愛情を持って優しく接することができます。八方美人とは異なり、人間関係に利益を求めることがないかわりに、えこひいきを嫌います。相手を尊重するため、自分の意見を押し付けることもありません。

揉め事を嫌う

博愛主義の人は、基本的に争い事を好みません。それゆえ、めったに怒ることはなく、穏やかな性格をしています。人間関係に波風が立つのも嫌いますので、人を傷つけるようなことを言ったり、人を責めたりすることもあまりありません。何か問題が起きた場合でも、事態を寛容に受け止めます。

人を助けようとする気持ちが強い

博愛主義者は助け合いの精神を持っています。困っている人がいたらすぐ手を差しのべますので、日頃からボランティアに取り組んでいる人も多いです。

「博愛主義」の対義語と英語表現とは?

「博愛主義」の対義語は”利己主義”

「博愛主義」とは広く普遍的な人類愛の概念であるため直接的な対義語はありませんが、博愛主義と共通の意味を持つ”利他主義(りたしゅぎ)”の対義語として「利己主義(りこしゅぎ)」を挙げることができます。

利己主義とは、自分だけの利益や幸福を求めて、他人のことを全く考えない態度のことをいいます。それに対して利他主義とは、他人の幸福や利益を第一に考えることを行動の規範とする主義のことで、博愛主義とも通じる精神を持ちます。

また、他人を尊重して誰にも優しく接する人を博愛主義者と呼ぶのに対し、自分のことばかりを優先して他人に冷たい人を利己主義者と呼ぶことがあります。

「博愛主義」は英語で”philanthropism”

「博愛主義」は英語で“philanthropism”と書きます。博愛主義者は「philanthropist」です。

「博愛」は”philanthropy”と書き、カタカナ語で「フィランソロピー」と呼ぶこともあります。

「philanthropy」はギリシャ語の「philos(フィロス:愛すること)」と、「ánthrōpos(アントロポス:人類)」が語源の言葉であり、”人類愛/人を愛すること”という意味があります。

「philanthropy」は、日本語では”博愛”の他に「慈善活動・人類愛」などに近い意味もあります。「philanthropist」は博愛主義者の他に”篤志家(とくしか)”と訳されることもあります。「篤志家」とは、社会奉仕や慈善活動などを熱心に行う人のことをいいます。

「博愛」の語は、普遍的な愛の概念としてヨーロッパで生まれ、日本に輸入された概念であり、日本語ではさまざまな意味を含んで使われています。

「博愛主義」に関連する出来事やモーツァルト『魔的』との関係

フランス革命のスローガンは「自由・平等・博愛」

18世紀に起こったフランス革命のスローガンは「自由・平等・博愛」でした。フランス革命は封建的な身分制度などを一掃するとともに人民主権・経済的自由権等を確立し、近代民主主義の発展における契機となった革命です。

「自由・平等・博愛」は近代民主主義の価値理念を表現したものとされ、フランス国旗のトリコロールもまた「自由・平等・博愛」を表すものとされています。

諸子百家の墨子における「兼愛主義」は”博愛主義”と同じ

中国の戦国時代の思想家「墨子(ぼくし)」は諸子百家の中の「墨家」の開祖です。墨子は「兼愛公利(けんあいこうり)」の倫理を説きました。

「兼愛」とは”兼(ひろ)く愛する”という意味で、「公利」とはお互いの利益という意味です。つまり兼愛とはお互いのことを考えて公平に広く愛する「博愛」と同じ意味を持ちます。

墨子の説は「兼愛説」や「兼愛主義」と呼ばれます。墨子は戦国時代に争乱を否定し、普遍的な愛を説いた異端の思想家でした。

「魔笛」は博愛主義団体”フリーメイソン”のためのオペラ?

モーツァルトの最後の作品となったオペラ曲「魔笛(まてき)」は、フリーメイソンのためのオペラとして知られています。「魔笛」とは”魔法の笛”を意味します。

フリーメイソンとは、18世紀初頭のイギリスにおいて組織され、その後世界中にひろがった博愛主義団体です。博愛主義団体とは博愛主義を理念に掲げる団体を指します。

フリーメイソンは、博愛・自由・平等の理念を持ち、人種や階級を超えた平和人道主義を奉じて社会奉仕活動などを行い、多くの名士が会員となりました。会員のみの秘密とされる独特な儀式や教義があるとされますが、その全容は明らかではなく、秘密結社であるかのように語られることもあります。モーツァルト自身も会員でした。

「魔笛」は、フリーメイソンのシンボルや教義に基づく登場人物や歌詞、設定が登場し、入会儀式に沿ったストーリーとされる作品です。また、モーツァルトは「魔笛」以外にも多くのフリーメーソンのための作品を作曲しています。

まとめ

「博愛主義」とは、人種や宗教などの違いを超えて、人類は広く平等に愛し合うべきとする主義のことをいいます。ヨーロッパで生まれた普遍的な人類愛の概念ですが、日本ではその意味とは別に、分け隔てなく人に優しい態度をとる人を博愛主義者と呼ぶこともあります。

また、博愛主義は、広く大きな人類愛を信奉するものですが、その一方で博愛主義の考えを尊大な自己愛や欺瞞と背中合わせだと感じる人もいるようです。あるいは、博愛主義者は大きな人類愛に関心があるが、身近な人には共感することができないと指摘する心理学者もいます。

博愛主義がそのような二面性を持つとすれば、全容が明らかでない博愛主義団体のフリーメーソンにも、何か通ずるものがあるのかもしれません。