「戦時下におけるプロパガンダ」というとややネガティブな印象を受ける人も多いですが、「プロパガンダ」は戦時下に限らず、「コーポレートプロパガンダ」などの表現で用いられます。「プロパガンダ」とはどのような意味なのでしょう。その意味と使い方や例文、類語について解説しました。
「プロパガンダ」の意味と由来とは?
「プロパガンダ」の意味は”特定の思考・行動をとらせるための宣伝活動”
「プロパガンダ」の意味は、“特定の思想による影響を与え、意図した方向へと思考や行動を向かわせようとするための宣伝活動”のことです。たとえば、ある特定の考えを一方的に植え付けようとしたり、特定の主義をすり込もうとするような宣伝行為が「プロパガンダ」です。
とりわけ「政治的意図を持った宣伝」を意味することが多い
「プロパガンダ」は特に、”政治的な意図を持った宣伝活動”を意味して用いられることの多い表現です。「戦時下における政治的宣伝活動=プロパガンダ」と認識する人も少なくないでしょう。
戦時下では情報操作・世論喚起が頻繁に行われ、その手段として政治的な意図を持った「プロパガンダ」が多用されることが理由として挙げられます。
英語「propaganda」に由来する表現
「プロパガンダ」は英単語”propaganda”をカタカナ読みしたものです。英単語の「propaganda」は、ラテン語で”種をまく・繁殖させる”という意味を持つ「propagare」に由来するとされていて、そこから派生し”考えを広める”というニュアンスが加わったようです。
なお、英単語の「propaganda」も”宣伝”を意味する点ではカタカナの「プロパガンダ」と同じですが、英単語では”うわさ・デマ”のニュアンスを伴うことがあります。そのため、「政治的な意図を持つ宣伝」という意味では「political propaganda(政治宣伝)」、虚偽の宣伝は「false propaganda」の表現がベターです。
「プロパガンダ」の使い方と例文とは?
芸術作品に対して「プロパガンダ」と用いられることが多い
「プロパガンダ」は政治的意図や政治的な主張を込めた芸術作品を指して用いられることが多いでしょう。戦時下では特に、芸術作品の制作に国や政治団体が関わっているケースが多く、芸術作品を用いて情報操作を行う手法がとられていました。
たとえば、「プロパガンダ映画」や「プロパガンダ小説」などが代表的な使用例です。また、「プロパガンダポスター」とは、戦意高揚や国民に勝利を確信させるなどの目的で用いられたポスターを意味することが多いでしょう。
一方で、政治的意図を持つもの以外でも、見る人の意識に訴えかけ印象を操作するような意図を持つ作品・活動は「プロパガンダ」に該当します。たとえばメディアで見かけた「感動の実話」も、何者かによって意図された情報であれば「プロパガンダ」と呼ぶことができます。
「コーポレートプロパガンダ」は企業による宣伝行為のこと
企業による「プロパガンダ」は”コーポレートプロパガンダ”と呼ばれます。端的に言うと企業が利益を生むために行う宣伝行為を意味し、一般に「コーポレートプロパガンダ」はデマや噂ではなく事実に基づいた情報であることから「ホワイトプロパガンダ」とも呼ばれます。企業がブランドイメージなど市場や消費者の意見を操作するために行うもの、ともいえるでしょう。
たとえば、「家の中はあらゆる菌に脅かされている」という思考を植え付け、「除菌商品を購入して除菌する」という行動をとらせる、あるいは「除菌商品に対して好意的な印象を持つよう影響を与える」ためにテレビCMや広告を展開することが「コーポレートプロパガンダ」です。
また、企業が料理ブロガーにPR依頼として自社製品を使ったレシピの投稿を依頼し、「使いやすい・おいしい・おしゃれ」などの印象を植え付けるのも「プロパガンダ」の一種と言えるでしょう。
「プロパガンダに踊らされる」とは”惑わされる”の意味に
「プロパガンダに踊らされる」とは、”何らかのプロパガンダに惑わされる”という意味です。たとえば、真偽が確かではない情報を鵜呑みにして高額な商品を購入したり、過度に不安に思ったりといった例が挙げられるでしょう。「プロパガンダ」に踊らされないためには、情報の取捨選択をする能力(リテラシー)が求められます。
「プロパガンダ」を使った例文
「プロパガンダ」を使った例文をご紹介しましょう。
- これも政府によるプロパガンダに違いない。
- 選挙戦も後半にさしかかり、候補者によるプロパガンダ合戦が過熱している。
- キャッシュレスを促すプロパガンダをよく見かけるが、金銭感覚がマヒしやすいのでメリットばかりではないはずだ。
「プロパガンダ」の類語とは?
日本語に言い換えると「政治的宣伝」「世論操作」
「プロパガンダ」は”宣伝”という意味ですが、より具体的な表現を使うと「政治的宣伝」あるいは「世論操作」といった言葉に言い換えられます。「政治的な意図を含んだ宣伝」というだけでなく、大衆の意識を導くような意図が感じられる場合には「世論操作・情報操作・世論誘導」などといったワードに置き換えることも可能です。
一方で、企業による「コーポレートプロパガンダ」などは単に「宣伝活動」あるいは「広報活動」などに言い換えることができるでしょう。
「アジテーション」は”煽る”という意味が強い点で異なる
「プロパガンダ」と似た意味を持つカタカナ語に「アジテーション」があります。「アジテーション(agitation)」とは”扇動・撹拌”などの意味があり、「人々の気持ちを煽り、ある行動をとるよう仕向けること」を指します。「世論を動かす」というニュアンスでは「プロパガンダ」に近いものがありますが、「アジテーション」は”煽り”の意味合いが強いのが特徴です。
まとめ
「プロパガンダ」は”特定の行動をとらせるための宣伝活動”を意味する単語で、しばしば「政治的意図を持つ宣伝」を指して使用されます。たとえば、戦時中に国民の戦意を高めることを目的として作成されたポスターなどは「プロパガンダポスター」と呼ばれ、「プロパガンダ」の代表例として知られています。一方で「プロパガンダ」は、「自社製品を購入してもらうための宣伝」のように、戦争とは無関係の宣伝活動に対しても使用することが可能です。「何らかの行動をとらせるための宣伝活動」の意味で覚えておきましょう。