「アンシャンレジーム」は世界史に関する用語ですが、日本では比喩表現として使われることもあります。言葉を覚えていなくても、農民が貴族や司祭を背負っている風刺画に見覚えがあるかもしれません。「アンシャンレジーム」の意味・使い方をご紹介します。また、問題点やフランス革命との関係も、分かりやすく簡単に説明します。
「アンシャンレジーム」とは?
「アンシャンレジーム」の意味は”旧体制”
「アンシャンレジーム」の意味は、“旧体制”です。「アンシャン・レジーム」のように、区切って表記することもあります。フランス語のスペルは「Ancien Régime」です。
本来は、フランスの特定の政治体制を意味しています。しかし、日本では、フランス以外も含めた「旧体制」を表現する比喩として使われることがあります。
狭義では16~18世紀のフランスの政治体制
本来の「アンシャンレジーム」は16世紀から18世紀のフランスの政治体制の名です。革命が起きる前の、絶対王政期の政治体制です。
「旧体制」という意味の名前をつけられたのは、名付けたのがフランス革命の後のためだと言われています。革命後の新しい政治体制と比較して、過去の政治を「旧体制」と呼んだようです。その後、19世紀半ば頃には歴史用語としても使われるようになりました。
「アンシャンレジーム」の使い方と例文とは?
「アンシャンレジーム」は旧体制の比喩に使う
日本では「アンシャンレジーム」を”旧体制”の比喩表現として用いることがあります。古い習慣に縛られている制度や組織などを批判するような、ネガティブな意味合いで使われます。
会話で使う場合、相手によっては意味が伝わらない可能性があることに留意してください。世界史が苦手な人と話す際は、特に配慮が必要です。無理に「アンシャンレジーム」を使わず、「旧体制」と言った方が分かりやすい場面も多いでしょう。
「アンシャンレジーム」を使った例文
「アンシャンレジーム」を使った例文をご紹介しましょう。
- アンシャンレジームを変えていくために、組織の内側から改革していかなければならない。
- 人の権利を尊重しないアンシャンレジームは、打倒するべきだ。
- あの部長は、アンシャンレジームの中で私たちを守ってくれた優しい人だよ。
「アンシャンレジーム」の特徴と問題点とは?
ここからは、フランスの政治体制としての「アンシャンレジーム」をご紹介します。
「アンシャンレジーム」の特徴は身分制度
「アンシャンレジーム」の特徴は、3つに分かれた身分制度です。王を頂点として、以下の身分に分かれていました。
それぞれの身分の中でも貧富の差がありました。市民出身の下級聖職者や地方貴族などは、苦しい生活をしていたと言われています。
「アンシャンレジーム」の問題点は不平等さ
「アンシャンレジーム」の問題点は、不公平な身分制度です。第一・第二身分の貴族たちに富が集中し、第三身分は貧しい生活に耐えながら彼らの贅沢を支え続けていました。身分による格差は「アンシャンレジームの矛盾」と呼ばれています。
また、参政権が不平等なのも問題点の1つです。本来は3つの身分がそれぞれ代表者を参加させる「三部会」という議会がありました。しかし、アンシャンレジーム期にはほとんど開催されなかったので、第三身分は参政権がないのと同じ状態でした。
「アンシャンレジーム」とフランス革命
「アンシャンレジーム」の崩壊の始まりはフランス革命
アンシャンレジームが崩壊し始めたきっかけは、1789年から始まったフランス革命です。フランス革命の後、わずかな期間だけアンシャンレジームは復活しましたが、1830年から再び革命が起き、完全に崩壊しました。その後は近代化が進んでいったと言われています。
フランス革命が起きた要因は複数ありますが、最も大きな理由がアンシャンレジームに対する市民の怒りだと言われています。ただし、革命推進派の中でも派閥ができて対立していました。絶対王政を続ける他国の介入もあり、革命後のフランスは混乱が続きます。そのため、一時期はアンシャンレジームが復活してしまいました。
フランス革命の年号の覚え方
フランス革命の開始と言われる1789年を覚えるのに便利な語呂合わせをご紹介します。自分にとって一番しっくりくるものを使ってください。
貴族が避難、革命軍の爆走だ。
(ひな→17、ばく→89)
火縄くすぶるバスティーユ
(ひなわく→1789)
※市民がバスティーユ牢獄を襲撃したことが、フランス革命の始まりと言われています。
非難爆発フランス革命
(ひな→17、ばく→89)
まとめ
「アンシャンレジーム」とは16~18世紀のフランスの政治体制です。一部の王族・貴族の贅沢を貧しい人々が支える不平等な仕組みだったため、革命により崩壊しました。
日本では「旧体制」を批判する際の比喩として使われることもあります。世界史に詳しくない人には通じない可能性があるため、注意が必要です。
聖職者が属する身分です。高位聖職者は貴族出身者が多く、裕福な者が多かったと言われています。
貴族が属する身分です。資金のある商人などの市民が貴族の位を買い、第二身分になることもありました。自分の支配する土地から税金を徴収していました。
聖職者と貴族以外の身分です。当時の人口の98%を占めています。国、貴族、教会から重い税金を強いられていました。