「実業家」の意味とは?類語「経営者・起業家」などとの違いも解説

「若き青年実業家」「著名な実業家」など経営者を指す言葉として「実業家」が用いられることがあります。この「実業家」とはどのような人を指し、また「経営者」とはどう違うのでしょう。「実業家」の意味と使い方をはじめ、「経営者・起業家・企業家」など類語との違いについて解説します。

「実業家」とは?

「実業家」の意味は”生産・流通・販売などの事業を営む人”

「実業家」の意味は、“生産や流通、販売などの事業を営む人”です。「実業家」の”実業”とは、農業・工業・商業・水産業といった生産や販売にかかわる事業のことです。多くの企業がこの「実業」に該当することから、しばしば「企業経営者=実業家」との誤解を生むことがありますが、厳密には「実業を営む人」というのが正しい解釈です。

「実業」の対義語は”虚業”

「実業」と反対の意味を持つ単語に“虚業”が挙げられます。「虚業」とは”投機取引(相場の変動による差額を得ようとする売買取引)などの堅実ではない事業”を意味します。こうした「虚業」を営む人は当然、「実業家」ではありません。他にも、権利譲渡を目的とした名目だけの会社を設立するような例も「実業家」ではなく「虚業家」と呼ばれます。

しかし、「実業家=お金持ちの経営者・はやりのビジネスを行う経営者」などの意味で用いられることも多く、中には「実業ではない」経営者に対して用いた誤用もあります。

「実業家」を使った例文

「実業家」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 彼は今話題の青年実業家だ。
  • 彼女は若いころは女性実業家として名を馳せた。
  • 私の家は、曾祖父の代から実業家だ。
  • 芸能人としての人気だけでなく、実業家としての実績も大したものだ。

「実業家」と類語「経営者・起業家」などとの違いとは?

「経営者」とは”会社を経営するすべての人”を意味する

「経営者」とは、文字通り”会社を経営する人”のことです。自分で会社をおこしたり事業を始めたりしていなくても、現在経営の権利を持っている場合には「経営者」と呼ばれます。

「実業家」が「実業」に限った表現であるのに対し、「経営者」はあらゆる事業の経営を意味する点で、より幅広い意味を持つ表現と言えるでしょう。

「企業家」とは”企業を起こした人”、アクティブな経営者を意味することも

「企業家」とは、文字通り”企業経営に取り組む人”という意味です。「企業者」と表現されることもあります。アメリカの経済学者である「J.シュンペーター」による定義(特に経済に新しい局面をもたらすような創造的でアクティブに経営を進める人)にならい、新技術の開発や経営改変などに積極的に取り組む経営者を指して用いられることもあります。

たとえば、人気製品を次々と生み出し、社会へ変化を与え続けるような企業の経営者は「企業家」と呼ぶことができるでしょう。「実業家」が事業内容に着目した表現であるのに対し、「企業家」はその手腕に着目した表現ともいうことができます。

「起業家」とは”新しく事業を起こす人のこと”

「起業家」とは、”新しい事業を起こす人”を意味します。先述の「企業家」もこの意味で用いられることがありますが、「起業」という漢字の意味を考慮すると”新しい事業を起こす人(起こした人)”の意味では「起業家」の方が分かりやすい表現といえるでしょう。

「起業家」は同じ経営者でも親の会社を継いだり、事業を譲り受けたりした場合には使用することができません。「自分自身で新しい事業をおこした」という点が大きな特徴です。また、「実業家」のように「実業」に限らず”あらゆる事業をおこした人”を指して使うことができます。たとえば、ベンチャー企業として新しく事業をおこした人などは「起業家」の代表例です。

「事業家」とは”事業を企て経営する人”の意味

「事業家」とは、”事業を企て経営する人、事業経営に巧みな人”を意味します。単に「事業を行う」という意味だけでなく「事業経営に巧みである」という意味でも用いられることの多い表現です。たとえば、2代目として経営を引き継いだのちサービスの改変を行い会社を立て直した、あるいは経営を軌道に乗せサービスを拡大した経営者などは「事業家」と呼ばれます。

職業として「実業家」になるには?

まずは事業内容の決定と資金の準備を

「実業家になりたい」という夢をかなえるためには、まず入念なビジネスプランが必要です。まずは、事業内容を決定します。思いつきのアイディア程度では事業として成立しないため、たとえば世の中の役に立つこと・ニーズがあること・それに伴う収益が見込めることなどを基本として、事業の内容を決めます。この案を細部にまで作りこみ、事業の規模を明確にしていきます。初期費用はもちろん、事業の運転に伴う費用も精査し、準備していく必要があるでしょう。

情報収集や人脈を広げることも「実業家」となるためのポイントに

「実業家」となるための事業内容の決定や明確なビジネスプランの策定には、情報収集は欠かせません。前例を調べることはもちろん、自分で出歩いて生の情報を仕入れることも大切と言われます。

こうした情報収集のためにも「実業家」にとって人脈は重要です。直接アドバイスをもらえたり、コンサルタントや顧客を紹介してもらえたりすることもあります。常日頃から人との縁を大切にしていると、思わぬところで救世主となるかもしれません。

「実業家」の英語訳とは?

「実業家」は英語では”industrialist”

英語で「実業家」は“industrialist”と略されます。「industrialist」とは”(大)実業家”という意味です。また、「実業家」の意味で単に「business-man」や「businessperson」のワードが用いられることもあります。日本語で「ビジネスマン」というと一般的な社会人を指すことも多いですが、たとえば「a female businessperson」は”女性の実業家”、「an up‐and‐coming businessman」は”やり手の実業家”と和訳されます。

まとめ

「実業家」とは、”実業(生産・流通・販売などの事業)を営む人”という意味です。「若き青年実業家」と称して若手経営者を取り上げることがありますが、すべての事業に対して用いるのではなく「実業」に限定した表現であるのが大きな特徴です。事業内容を問わずに使用できる「事業家・経営者」などのワードに比べるとやや意味の狭い言葉ということができます。また、「企業家」や「起業家」などの類語も細かいニュアンスに特徴を持つ単語なので、区別して覚えられるとよいでしょう。