「多くの企業が淘汰された」「企業淘汰の時代」など、「淘汰」はビジネスニュースなどでも耳にする単語です。この「淘汰」の意味とその由来をはじめ、「淘汰される」などの使い方を例文で解説します。また、「淘汰」の類語や対義語、英語訳など関連用語にも触れています。
「淘汰」の意味と読み方とは?
「淘汰」の意味は”不要なものは除くこと”
「淘汰」の意味は、“不必要なもの、不適当なものを除くこと”です。学術の分野でもよく用いられる単語で、生物学的には、環境に適応した生物のみが子孫を残し、その他は滅びる現象を、地学的には、水や風による運搬過程で堆積物がその形状や比重によって選別される現象を指すなど、様々なシーンで用いられます。
「水で洗って選び分ける」という意味に由来する表現
「淘汰」とは、元々は”水洗いして選び分けること”という意味の単語です。「淘汰」の「淘」の字には”よなげる(水洗いして選び分ける)、よりわける”の意味があり、「汰」の字にも似たような意味があります。たとえば、ザルを水の中でゆすりながら異物を選り分けるようなイメージが「淘汰」です。
そこから、「不要なものを取り除き、良いものを残す」という意味になったとされています。
「淘汰」の読み方は”とうた”
「淘汰」の読み方は、“とうた”です。「淘汰」の「淘」の字は「陶」の字と似ていますが、正しくは「さんずい」です。「淘汰」の持つ意味からも分かるように、「淘」の字を使うと覚えておきましょう。
「淘汰」の使い方と例文とは?
「淘汰する」よりも「淘汰される」と使うことが多い
「淘汰」は名詞で使用されるほか、動詞としては「淘汰する」よりも「淘汰される」の表現で使用されることが多いでしょう。「淘汰される」とは”不必要なものや不適切なものは取り除かれる、なくなる”というニュアンスになります。先述のように、生物学的な意味で用いられることもありますが、ビジネスシーンでは人や企業について使われることも珍しくはありません。
- 不良企業が淘汰されるのは当然のことだ。
- 企業の無駄な慣習は早いとこ淘汰されるべきだ。
- 業界再編が著しく、まさに淘汰の時代と呼ばれるにふさわしい。
- この不景気で企業淘汰も進むだろう。
四字熟語「自然淘汰」として用いられることも
「自然淘汰」とは、特に”環境に適応できないものが自然と消えてなくなる”という意味で使用されます。ただし、「淘汰」とほぼ同義ととらえても差し支えないことも多いでしょう。
- 自然界同様、ビジネスにおいては自然淘汰は繰り返されている。
- 自然淘汰によって生き残れるかそうでないかは神のみぞ知ることだ。
「淘汰」の具体的な例
自然界の「淘汰」は、”環境に適応できる生き物が残り、そうでないものが絶滅する”とわかりやすいですが、ビジネスにおける「淘汰」はどういったものを指すのでしょう。
ビジネスシーンで「淘汰」が用いられる例では、企業の倒産や商品の廃盤があります。たとえば、良い製品を生み出す企業は不況の中でも当然生き残りますが、中には不況の打撃を受け業績が悪化し、立ち行かなくなる企業もあるでしょう。
このように、「不況などによりA社が残り、B社は業績が悪く倒産する」というのも「淘汰」の良い例です。商品やサービスも同様で、必然的にニーズをとらえたものや性能のよいものは残りますが、一方で廃盤・廃止となるものもあります。
この他企業の人員削減も、能力の高い人材が残り、評価されなかった者が解雇される、という意味で「淘汰」の例と言えるでしょう。
「淘汰」の類語とは?
「淘汰」の類語は”選別・振るい分け”
「淘汰」と似た意味の表現には、”よりわける”という意味を持つ「選別」や「振るい分け」が挙げられます。「選別」は単に”選び分けること”という意味ですが、「ふるい分け」には”良いものを残し、悪いものを捨て去る”というニュアンスがあるのが特徴です。
「淘汰」と「排除」はニュアンスが異なる
「淘汰」と似た意味を持つ単語では「排除」もあります。「排除」は”取り除くこと”を意味する単語で、たとえば物や人など、不要な物を取り除いたり追い出したりするという意味で「排除」と使用します。
これに対し「淘汰」は”不要なものは除き、良いもの・必要なものを残す”という意味がある点が相違点と言えるでしょう。
「淘汰」の対義語とは?
「淘汰」の対義語は”存続”や”生存”
「淘汰」と反対の意味を持つ表現(対義語)は、“存続”や“生存”が挙げられます。「存続」とは、”引き続き存在すること・引き続き残しておくこと”という意味です。「生存」とは、”生きて存在すること”を意味します。
- 部の存続が危ぶまれる。
- 企業として存続することは難しいかもしれない。
- 生存していくために植物も進化するのだろうか。
「包摂」も対義的表現
「包摂(ほうせつ)」とは、”その範囲の中につつみこむこと”という意味です。たとえば、「社会的包摂」は”社会的弱者も社会の一員として取り込み、支え合う”という意味で用いられます。
「良くない者は取り除く」というニュアンスを持つ「淘汰」に対し、様々なものを包み込むという意味を持つ「包摂」は、「淘汰」とは反対の意味を持つということができます。
「自然淘汰」の対義表現は”人為淘汰”
「自然淘汰」と反対の意味を持つ表現は”人為淘汰”です。「人為淘汰」とは、”人の力による淘汰・人が何らかの手を加えたために起こった淘汰”を指します。
植物の品種改良などでは、人の手によってより強い個体・優秀な個体を育て上げるよう開発がなされますが、こうした「目的にかなう個体を選抜・育成し、一定の方向に変化させること」を指して用いられます。
「淘汰」の英語訳とは?
「淘汰」は英語では”selection”を使う
「淘汰」は英語では“selection”を、「淘汰する」は動詞“select”を使用します。「natural selection(自然淘汰)」「artificial selection(人為淘汰)」などの表現が可能です。
一方、ビジネスシーンで「企業が淘汰される」という場合は「obsolute(廃れる)」や「go out(消える・なくなる)」などを使用することも多いでしょう。「reduce the staff」も「人員を減らす=人員を淘汰する」の和訳が宛てられることもあります。
- In this recession, hundreds of firms went out of business.(この不況で、何百という企業が淘汰された)
- That business will become obsolete.(あの事業は淘汰されるだろう)
まとめ
「淘汰」とは、”不要な物、不適切なものを取り除く”という意味の単語で、単に「取り除く」だけでなく「良いものが残る」というニュアンスを含む点が特徴です。自然界の生存競争において、環境に適応できるものだけが残り、そうでない者が死滅してしまう様はまさに「淘汰」の代表例ですが、ビジネスも例外ではありません。企業の生存競争など、ビジネスでも「淘汰」に該当する事例はたくさんあります。