「家督」の意味と使い方とは?例文や「家督相続」についても解説

「家督を継ぐことにした」「家督を継ぐもの」など「家督」というワードは現代でも時折耳にします。また、旧民法の制度である「家督相続」も、今なお相続問題として持ち上がることがあると言います。本記事では「家督」の意味・使い方を例文で解説するほか、制度としての「家督相続」の概要についても紹介します。

「家督」の意味とは?

「家督」の意味①その家の財産

「家督」の意味は、“相続すべき、その家の財産”のことです。財産だけでなく、「相続すべき事業や権利」を指して”家督”ということも可能です。また、相続に関して言うと、旧民法の規程における「戸主の地位、あるいは戸主の身分に備わる権利・義務」を指す表現としても用いられます。

「家督」の意味②跡継ぎ

「家督」には“跡継ぎ(あとつぎ)”という意味もあります。その家を継ぐべき人(子)、つまり「跡取り」を指し「家督」と使うこともできます。

「家督」を使った表現・例文とは?

「家督を譲る」とは”財産・事業を譲る”という意味

「家督を譲る」とは、”財産を譲る”あるいは”事業を譲る”という意味になります。事業を営む家では、家長である社長がその地位を退き、息子に経営者としての地位や権利を引き渡す、という場合に「家督を譲る」ということができます。

例文
  • そろそろ息子に家督を譲ろうと思っている。
  • 私もいずれは家督を譲る日が来るだろう。

「家督を継ぐ人」とは”跡取り”のこと

「家督を継ぐ」とは”家督を譲り受ける”ことを意味し、たとえば「事業を継ぐ・財産を譲り受ける」といった表現と似たニュアンスになります。そのため「家督を継ぐ人」は”事業を継ぐ人=跡取り”という意味にもなるのです。また、事業の有無にかかわらず「財産を受け継ぐ人」という意味でも使用することができます。

例文
  • 家督を継ぐ人がおらず、廃業する老舗も少なくない。
  • 家督を継ぐため、故郷に戻ってきた。

「家督相続」とは”家の財産を引き継ぐこと”

「家督相続」とは、端的に言うと「家督を継ぐこと」「家の財産をすべて継ぐこと」という意味になります。一方で、「家督相続」とは民法の旧規定における制度としての「家督相続」を指して用いられることもあります。この制度については後ほど詳しく紹介します。

「家督問題」とは一般に”相続や跡継ぎに関するもめ事・問題”を指す

「家督問題」とは、一般に”相続に関するもめ事”や”跡継ぎ問題”を指すことが多いでしょう。単に「遺産相続に関するもめ事」の意味で使用される場合のほか、「家督を継ぐ人がいない=跡継ぎの問題・後継者問題」の意味にもとることができます。

「家督相続制度」とは?

「家督相続」とは旧民法における遺産相続の方法のこと

「家督を相続する」というと「家督を継ぐ」と同じニュアンスにもなりますが、一方で「家督相続」とは遺産相続方法のひとつを意味して用いられることもあります。日本では昭和22年の法改正までは旧民法にのっとった公的な遺産相続方法として「家督相続」の制度がとられていました。

この場合の「家督」とは、”戸主の身分に備わる権利と義務・戸主の地位”などの意味になり、その「戸主」としてのすべてを相続するのが旧制度としての「家督相続」です。この「家督相続制度」では、被相続人が亡くなった場合に限らず、「隠居」した場合にも相続を行うことができたのも大きな特徴です。

「家督相続人」となる戸主は原則長男、ただし女性も可

「家督相続」では、現在のように配偶者や子で遺産を分配するのではなく、その相続人をひとりに限定していました。それが「戸主」です。今でいうところの「戸籍筆頭者」ですが、「戸主」には「戸主権」として様々な権利が与えられていた点で異なります。

「家督相続」では原則としてその家の長男が「戸主」となるのが通例でしたが、女性が引き継ぐことも可能でした。また、子に限らず他人を「戸主」とする例もあったようです。

現在でも「家督相続」の考えを持つ人も

現在では「家督相続」の制度は利用されていませんが、中には前時代的な考えから「遺産は長男がすべて引き受け、管理をするもの」との考えを持つ人もいるようです。遺言状などで特に指定がない場合、遺産分配は現行の法律に則って行われるべきものです。感情論になりすぎないよう、専門家を間に挟むなどして冷静な話し合い、解決が求められます。

「家督」の英語表現と例文とは?

「家督」は英語で”a family estate”

「家督」は英語で、“a family estate(家の財産)”を使います。同じく「財産」という意味を持つ”fortune”を使用し「a family fortune」と表現したり、「遺産・相続」などの意味を持つ”inheritance”を使用して一語で表現したりすることも可能です。また、「その家の長」という意味では”the headship of a family”という英訳もできるでしょう。

「家督」の英語表現を使った例文

「家督」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • succeed to a house(家督を継ぐ)
  • transfer the headship of the family(家督を譲る)
  • a sun who inherits the family business(家督[家の事業]を継ぐ息子)
  • He renounced his rights to the inheritance.(彼は家督相続の権利を拒否した)

まとめ

「家督」は”相続すべき財産・事業・跡取り”という意味で用いられる単語です。主に戦前行われいた相続方法を指して「家督相続」と用いられることもありますが、この「家督相続」は現行法とは異なる相続方法です。そのため、一般には「遺産相続の方法」ではなく「受け継ぐべき遺産」や「引き継ぐ事業」などのニュアンスで用いられます。