「ケルベロス」とはギリシャ神話に登場する「冥府の番犬」です。似た名前をもつ「オルトロス」という怪物との、違いが分からない方もいるでしょう。
この記事では「ケルベロス」の特徴や弱点、神話での登場シーンを紹介します。くわえて「オルトロス」との違いや「ケルベロス」の英語表現も解説しましょう。
「ケルベロス」とは?
「ケルベロス」とはギリシャ神話に登場する番犬
「ケルベロス」とは、“ギリシャ神話に登場する番犬”です。大きな身体に3つの頭が付いている姿が一般的ですが、文献によっては50や100の頭を持つとも記されています。竜の尻尾を持ち、背中には蛇がたてがみのように生えていたとされ、その姿は獅子のようでもあると書かれています。
冥府の門番としてハデスに忠実
「ケルベロス」は冥府の神ハデスの僕(しもべ)です。冥府の入り口を守るケルベロスは、訪れた死者の魂を通す仕事を任されています。しかし、冥府から逃げ出そうとした者や、生きていながら冥府へ侵入しようとした者へは激しく牙をむきます。この様子から、ハデスに忠実な地獄の番犬と言われているのです。
頭が3つあるため完全に寝ることはない
ケルベロスは頭が3つ、または3つ以上あります。複数ある頭が交互に睡眠をとっているため、ケルベロスが完全に眠ることはありません。冥府から逃げ出そうとする者や侵入しようとする者がいても、3つのうち1つの頭が起きているため必ず気づけるのです。
「ヘラクレスの十二の偉業」に登場する
ケルベロスは「ヘラクレスの十二の偉業」の1つに登場します。「ヘラクレスの十二の偉業」とはヘラクレスが自身の罪を償うため、エウリュステウスから命じられた12個の課題を意味します。
そのうちの1つが「地獄の番犬ケルベロスを捕まえる」というものだったのです。ヘラクレスはケルベロスの所有者であるハデスと交渉し「傷つけないし殺さない」という条件で、ケルベロスを捕獲します。本当にケルベロスを連れてくるとは思わなかったエウリュステウスは恐れ、番犬を解き放つことを命じて無事ケルベロスはハデスの元へ帰れたのです。
「ケルベロス」の弱点とは?
非常事態に対応できない性格である
地獄の番犬として恐れられる「ケルベロス」ですが、非常事態に対応できない性格をしていると言われています。「ヘラクレスの十二の偉業」で地上に連れていかれたケルベロスは、初めてみる太陽のまぶしさに驚き吠えました。
驚いたときに飛んだ唾液から、植物界で最強と呼ばれる毒をもつ「トリカブト」が発生したという話もあります。
美しい音楽を聞くと眠ってしまう
ケルベロスの2つ目の弱点は「美しい音楽を聞くと眠ってしまう」というものです。ケルベロスは3つの頭が交互に睡眠をとっているため、完全に眠ることはないと説明しました。しかし、楽器が奏でる美しい音色を聴いてしまうと全ての頭が眠ってしまうのです。
実際、ハープの名手であったオルフェウスはハープを演奏してケルベロスを落ち着かせ、冥界の王ハデスに会いに行くことが叶います。
「ケルベロス」は好物である甘味に弱い
ケルベロスの3つ目の弱点は「好物である甘い食べ物」です。ケルベロスは甘いものに目がないため、お菓子を食べている間は注意力が散漫になります。ギリシャ神話では神でもない人間の娘プシュケが、お菓子に夢中になっているケルベロスの横を通り抜けた話が有名です。
「ケルベロス」と「オルトロス」の違いとは?
「ケルベロス」と「オルトロス」は頭の数が違う
「ケルベロス」と似た名前をもつ「オルトロス」は、頭の数が異なります。「ケルベロス」は一般的に3つの頭をもつと言われていますが、「オルトロス」は2つの頭を持つのです。どちらもテューポーンとエキドナという怪物から生まれており、オルトロスはケルベロスの弟にあたります。
「オルトロス」はせっかちな性格
「オルトロス」は落ち着きがなく、せっかちな性格と言われています。ケルベロスは地獄の番犬ですが、オルトロスはゲーリュオーンが飼っている牛の番犬でした。ある日「ヘラクレスの十二の偉業」の1つとして、ヘラクレスが牛を盗みにきます。
他の怪物たちと一緒にヘラクレスを撃退すればよかったものの、せっかちな性格が災いして1人で飛び出し、オルトロスはヘラクレスに殺されてしまったのです。
「ケルベロス」の英語表現とは?
「ケルベロス」は英語で”Kerberos”
「ケルベロス」の英語表現は“Kerberos”です。「Kerberos」の表記はギリシャ語が元となっており、ラテン語では「Cerberus」と表します。ちなみに「オルトロス」は「Orthros」と表します。
まとめ
「ケルベロス」とは、ギリシャ神話に登場する、3つの頭をもつ怪物です。冥府の神ハデスの忠実な僕として働き、地獄の番犬とも呼ばれていました。人間を容赦なく食べる凶暴さや、物々しい見た目から、ゲームアプリや映画のキャラとして登場することもあります。