「通夜の挨拶」では、どういった言葉が選ばれるのでしょう。一口に「通夜の挨拶」と言っても、喪主や遺族、受付、参列者など参加する立場によって発する言葉は変わってきます。本記事では、立場別に「通夜の挨拶」のマナーや文例を紹介します。
「通夜」に参列した際の挨拶とは?
参列者の挨拶は「この度はご愁傷さまでございます」が一般的
「通夜」の参列者の挨拶は、「この度はご愁傷様でございます」と声をかけるのが一般的です。この「この度は~」というフレーズは、受付での第一声としても使えるほか、遺族や喪主に対する言葉としても用いられるもので、最もオーソドックスな表現といえるでしょう。「この度はご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申し上げます」と続けることも多いです。
一方で、急な訃報に戸惑いが隠せない場合は「この度は…」の後に言葉が続かないこともあるでしょう。きちんとした文章で挨拶できるにこしたことはありませんが、「この度は」で口をつぐんでしまっても大きなマナー違反とはされません。
遺族や喪主への挨拶は手短かに行うのが基本
遺族や喪主に対面した際も「この度はご愁傷さまでございます」と声をかけます。長々と引き留めてお悔やみを述べるのではなく、手短に済ませるのがマナーです。死因などを伺うのも避けましょう。
- この度はご愁傷さまでございます。さぞかしご無念とお察し申し上げます。
- この度は誠にご愁傷さまです。お力を落とされていることと存じます。
- 突然のことで言葉もございません。本当に残念です。
- この度は誠に残念なことになりまして、心よりお悔やみ申し上げます。
- この度は突然のことで大変驚きました。心よりお悔やみ申し上げます。
- この度はご愁傷さまでございました。生前大変お世話になり、ありがとうございました。
- 愁傷さまでございます。本当に残念でなりません。
宗教による挨拶の違いに注意
「通夜の挨拶」は宗教による違いに注意が必要です。たとえば「この度はご愁傷さまでございます」や「お悔やみ申し上げます」という表現は仏教や神道で用いられるもので、キリスト教では用いられません。このほか、「ご冥福をお祈りします」も仏教において用いられる表現です。
キリスト教式の通夜や告別式に参列した場合は、「安らかな眠りにつかれますようお祈りいたします」と声をかけるのが一般的です。
「くれぐれも」などの重ね言葉はNG
「通夜の挨拶」では同じ言葉を繰り返す「重ね言葉」は、不幸が重なることを連想させるため「忌み言葉(いみことば)」として嫌われます。たとえば、「くれぐれも・度々・返す返す」などがその代表的な例です。また、「再び」や「続く」などといった言葉も「忌み言葉」に該当します。
そのため、「○○さんには仕事以外でも度々お世話になりました」は”いつもお世話になりました”に、「くれぐれもお力落としなさいませんように」は”どうぞ、お力落としなさいませんように”に言い換えます。
また、「忌み言葉」ではありませんが通夜の場で「大変でしょうが頑張ってください」のような声掛けもNGです。亡くなられて日が浅い中、「元気を出して」「頑張って」と参列者が声をかけるのは少々無神経です。故人を軽視した発言ともとられかねませんので避けましょう。
「通夜」の受付担当としての挨拶とは?
受付担当者は参列者へお礼の言葉が第一
「通夜」の受付担当者となった場合は、遺族に代わり、参列者にお礼の言葉をかけるのが主となります。たとえば、弔問に来た人が「この度は~」と挨拶したら、「ありがとうございます」とお礼を述べるのが一般的です。また、香典を差し出されたら「お預かりします」といって受け取ったり、芳名帳への記入を促したりするのが受付担当者の役目です。
本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。
(香典を受け取ったら)お預かりします。
(芳名帳へ記入を促す際)こちらにお名前とご住所をお願いいたします。
(芳名帳を指し)こちらにご記帳をお願いします。
会場や当日の流れもおさえておく
香典を受け取り、芳名帳への記入を終えた参列者は、順次会場へと向かいます。その際、化粧室の場所を聞かれることも多いため、会場については一通り頭に入れておきましょう。
一般に、受付担当の役割は、簡単な挨拶を交わし、芳名帳の記入を依頼し、会場へと案内して終了となりますが、中には遺族の要望に沿った対応をすることもあります。たとえば、遺族から香典辞退の申し出があった場合は「申し訳ございませんが、故人の遺志(ご遺族の意思)によりご香典はご辞退申し上げております」と述べ断るなどの対応が必要になります。
「通夜」の喪主挨拶のポイントとは?
喪主挨拶では感謝の気持ちを述べるのが通例
喪主となった場合、通夜の締めくくりとして「喪主挨拶」を行います。「喪主挨拶」では参列していただいたこととこれまでの感謝を伝えるのが一般的です。また、通夜ふるまいの案内を加えたり、葬儀・告別式について案内することも多いですが、長くても3分程度にまとめるのが通例です。
参列者の挨拶マナーとしても述べましたが、喪主挨拶でも「忌み言葉」は使用しないのがマナ―です。特に、つなぎ言葉としての「また」や「重ねて御礼申し上げます」などの表現はクセで使ってしまうこともあります。「喪主挨拶」はメモを見ながら話しても失礼には当たりませんので、あらかじめ挨拶文を用意しておくのが良いでしょう。
喪主挨拶文例
ここでは喪主挨拶の文例を紹介します。
本日はお忙しい中足をお運び頂きまして、ありがとうございました。突然のことにもかかわらず、多くの方にお越しいただき、故人もさぞ喜んでいると存じます。
生前は、ひとかたならぬご厚情を賜りましたこと、故人に代わりまして御礼申し上げます。
葬儀、告別式は明日○日11時からでございます。ささやかではございますが、別室にて粗茶をご用意いたしましたのでどうぞお召し上がりください。
本日は誠に、ありがとうございました。
親族が喪主代理として挨拶する場合は「続柄」を述べる
喪主に変わって、親族が「通夜の挨拶」を務めることもあります。その場合、まずは喪主との続柄を述べるのが一般的です。
喪主に代わりまして、親族を代表し、一言ご挨拶申し上げます。長男の○○でございます。
本日は○○の通夜にご参列くださいまして、誠にありがとうございました。
おかげさまを持ちまして、滞りなく通夜を終えることができました。
葬儀、告別式は●日●時からでございます。
本日は誠に、ありがとうございました。どうぞお気をつけてお帰りください。
家族葬での場合の挨拶文例
葬儀は家族葬として執り行う場合の通夜では、葬儀への参列は遠慮してほしい旨を「通夜の挨拶」で述べます。
本日はお忙しい中、故人○○の通夜に足をお運び頂き、ありがとうございます。
故人○○はかねてより病気療養中ではございましたが、帰らぬ人となってしまいました。
生前は、ひとかたならぬご厚情を賜りましたこと、故人に代わりまして御礼申し上げます。
葬儀・告別式は故人の遺言により、家族のみで執り行う予定でございます。香典や御供物もご辞退させていただきます事、何卒ご理解いただけますようよろしくお願いいたします
本日はまことにありがとうございました。
喪主・遺族は僧侶への挨拶も忘れずに
通夜で参列者と直接会話する場合、「喪主挨拶」と同様に「お忙しいところありがとうございます」や「ご多用のところ足をお運び頂き恐れ入ります」などの感謝を述べますが、一方で僧侶や手伝ってくれる会社の人などへの感謝の言葉も忘れてはいけません。
たとえば、僧侶へは「ご足労頂きありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いします」と声をかけます。また、受付担当者にも「本日はどうぞよろしくお願いいたします」などと挨拶しましょう。
まとめ
「通夜の挨拶」は立場によって大きく異なります。弔問客としては「この度はご愁傷さまです」などが一般的で、親しい間柄でも手短に済ませるのがマナーです。一方、受付担当者は遺族と同じ側になりますので、弔問客へは感謝の言葉を述べ、丁寧な対応を心がけます。なお、いずれの立場であっても「重ね重ね」や「また」「度々」などは忌み言葉として「通夜の挨拶」では嫌われます。言葉を選びながら話すことが求められますので、あらかじめ挨拶文を考えておくのがベターです。