「経緯」の意味とは?「経過」との違いや類語・対義語も解説

「トラブルの経緯は?」と聞かれたら、何をどう話すのが正しいのでしょう。この「経緯」は一般には「けいい」と読みますが、実は他にも読み方があります。本記事では「経緯」の意味・読み方をはじめ、使い方を例文で解説します。また、「経緯」と似た単語「経過」など類語との違いや対義語、英語訳についても触れています。

「経緯」の意味と読み方とは?

「経緯」の意味は”物事の発端から結末までの流れ”

「経緯」の意味は、“物事の発端から結末に至るまでの流れ”のことです。何が起きて、どのような流れで、最終的にどうなったのか、という一連の出来事が「経緯」です。また、そこに至るまでの「入り組んだ事情」も含めて「経緯」と表現することもできます。

上記以外にも”経線と緯線・経度と緯度”を指す意味も「経緯」にはあります。

「経緯」の読み方は”けいい・いきさつ”

「経緯」の読み方は、“けいい・いきさつ”です。いずれの読みも、「物事の発端から結末までの流れ」を意味しますが、一般には”けいい”と読むことの方が多いでしょう。元々「経緯」の「経」には”縦・縦糸”、「緯」には”横・横糸”という意味があり、それぞれ「たて・よこ」と読み”経緯(たてよこ)”と読むこともできます。

本来は織物の縦糸と横糸を表したことから、「糸のように入り組んだ関係、複雑な事情・これまでの道筋」という意味に発展したとされています。

「経緯報告書・経緯書」とはどんなもの?

ビジネスでは「経緯報告書・経緯書」で事情を説明する

ビジネスには「経緯」を報告するための書類、「経緯報告書」や「経緯書」というものがあります。文字通り、物事がそこに至るまでの流れや事情を説明する書類です。トラブルが発生した際に用いられることが多く、その問題が解決・終了したという事実の証明ともなります。

「経緯報告書」は正しく伝わるよう詳細に書くのがポイント

「経緯報告書」を書く際には、その「経緯」が正しく伝わるようできるだけ詳細に書くのがポイントです。虚偽の報告はもちろん、根拠のないことや曖昧な事実は書きません。記載内容にもよりますが、時系列を箇条書きにしてわかりやすく記載するほか、今後の対応について記載することもあります。

「経緯」の使い方と例文とは?

「経緯」は”経緯を説明する・経緯を尋ねる”と使う

「経緯」は物事のこれまでについて話す際や尋ねる際に「経緯を説明する・経緯を明かす・経緯を尋ねる」などの言い回しで用いられます。この場合、単なる「これまでの道筋、出来事の流れ」や「(それに伴う)入り組んだ事情」という意味のどちらにとることもできるでしょう。

例文
  • これまでの経緯を教えてください。
  • 会社を立ち上げるまでの経緯を話す。
  • トラブルの経緯を報告する。
  • 事件の経緯はいまだに明らかになっていない。

「経緯を経て」は重複表現?

「経緯」という単語を「経緯を経て」という使い方をする人もいますが、できればこの表現は避けた方が無難です。「経緯を経て(経緯を経る)」は「経」の字・意味が重複するため、好まれません。この場合は、「~という経緯で」という表現に言い換た方がベターです。「~というプロセスで」「~といういきさつで」といった言い換えも可能でしょう。

例文
  • どういった経緯でこうなったのか、きちんと聞かせてほしい。
  • 以上のような経緯で、本日はお時間を頂戴した次第です。

「経緯」の類語とその違いとは?

似た意味の表現は「顛末・仔細」

「経緯」と似た意味を持つ単語では「顛末」や「仔細」が挙げられます。「顛末(てんまつ)」とは、”事の最初から最後までの事情・一部始終”という意味です。「仔細(しさい)」には”詳しい事情・一部始終”といった意味があります。このほか、単に「事情」「プロセス」などと言い換えられる場合もあるでしょう。

例文
  • 事の顛末を説明する
  • トラブルの仔細を報告します。
  • 事情を説明してほしい。

「経過」は”時間の流れ”を意味する表現

「経緯」と似た表現に「経過」が挙げられます。「事件の経過を知りたい」などと使うことができますが、「経緯」と「経過」では意味が異なります。

「経過」とは、”時間が過ぎていくこと・物事がうつりゆく様・なりゆき”などの意味です。たとえば、「事件の経過」というと「事件の時間の流れ」を指します。一方で「事件の経緯」というと”その理由から発生、解決に至るまでの詳しい内容”を指し、「事件の経緯」の方がより詳しく、筋道立てられたものとなるでしょう。

「経緯」と「理由」では”経緯”の方が細かい

「経緯」と似た表現では「理由」もあります。「理由」とは”物事がそうなった事情”という意味ですが、「経緯」は”込み入った事情・詳しい事情”というニュアンスを持ちます。「事故の理由を説明する」は”事故の経緯を説明する”とも言い換えられますが、この場合「経緯」の方がより細かい内容を含むのが特徴です。

たとえば「事故の理由は居眠り運転」でも、「事故の経緯」を問われた場合は「昼過ぎに会社を出て営業先へと向かっていたこと、直前に昼食を取り眠気のピークだったこと、さらに一瞬意識を失ったかと思ったら次の瞬間には衝突していた」という風な細かい説明が求められます。

「経緯」の英語訳とは?

「経緯」は英語で”course of event”や”details”を使う

「経緯」を英語で表現すると“course of events(事の成り行き)”となります。しかし、実際に会話等で「経緯」を問う場合には“details(詳細)”“how(どうやって・どんな方法で)”を使うことが多いでしょう。

例文
  • これまでの経緯を教えてください。
  • Please explain the course of events as to how this happened.
  • Please tell me how this happened.
  • Please give me the details.

このほか、「what happened so far(これまでに起きたこと)」や「the whole story(全体の話)」などのフレーズを使っても同様のニュアンスを出すことができます。

例文
  • Please tell me what happened so far.
  • Could you explain the whole story?

まとめ

「経緯」とは”物事の発端から結末までの一連の流れ”という意味で、「込み入った事情」「一部始終」などの意味を持ちます。そのため、「経緯を聞かせて」と言われた場合には、はじめから結末までを詳細に報告することが求められます。加えて、ビジネスシーンで用いられる「経緯報告書」では今後そのようなトラブルを起こさないための予防策、対応策などについても追記するのが通例です。