スイスの首都は「ベルン」で正しい?国旗や時差・歴史的背景も解説

スイスの首都は「ベルン」なのですが、首都としての存在が薄い気がします。チューリッヒやジュネーブほど国際的に有名ではないということも理由のひとつなのですが、実はスイスの法律上でも「ベルン」を首都として定めていません。

今回はスイスという国の概要と、表向きに首都となっている「ベルン」について紹介します。

※この記事の担当:Light1(海外在住20年。スイス在住経験あり。アルプス山脈のトレッキングは最高です!)

スイスの首都「ベルン」とは?

スイスの首都「ベルン」は熊がシンボルの町

スイスの首都は「ベルン」は、スイスでも中規模の都市です。ライン川の支流アーレ川沿いに広がる街並みが美しく、中世の面影を残す旧市街地は1983年に世界遺産にも登録されました。

「ベルン」という名前は熊を意味するドイツ語「Bär(発音すると「ベア」に近い)」が由来しています。逸話によると、ベルンの町を作ったツェーリンゲン公ベルヒトルト5世が初めて捕獲した動物が熊だったため、それを記念して「ベルン」と名付けられたそうです。

ベルンの英語表記は「Bern」

「ベルン」はドイツ語の「Bern」と表記して、英語でもドイツ語表記のまま「Bern」になります。スイスの別の公用語であるフランス語では「Berne」、イタリア語とロマンシュ語では「Berna」になります。

ベルンは首都だとは法的には定められていない

ベルンには連邦議会、内閣、各省庁が置かれているため首都としての体裁をどうにか保っていますが、法的には「首都(Hauptstadt)」ではなく「連邦都市(Bundesstaat)」です。ベルンを首都と決める過程で、フランス語圏やイタリア語圏との折り合いをつけるために国家の中心という意味合いを持つ「首都」という表現を避けたかったのです。その妥協案として「連邦都市」という表現が使われました。

スイスの首都はチューリッヒでもジュネーブでもない

スイスの首都と勘違いされやすいのが、チューリッヒやジュネーブです。ベルンよりも知名度が高いため、スイスの首都と間違えられやすいようです。

チューリッヒはスイス最大の都市で、北部に位置する金融都市で、スイス経済の中心はチューリッヒにあります。一方「ジュネーブ」は、フランス語圏にある都市で、国連本部が置かれていることもあり耳にすることも多いでしょう。

チューリッヒやジュネーブと比べるとベルンはニュースなどでも聞かれることが少ないため印象が薄いのかもしれませんが、スイスの首都はベルンですので覚えておきましょう。

ベルンがスイスの首都になった理由とは?

スイスが連邦国家となるまでの歴史的背景

現在のスイスとなる地域は、ローマ帝国やフランク王国、神聖ローマ帝国、ハプスブルグ家に次々と支配されてきましたが、1291年に独立を目指した3つの州が同盟を結成したことがスイスの原型となります。そして1499年に神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世との戦争に打ち勝ち、スイスは独立しました。

16~17世紀のヨーロッパでは宗教改革および宗教戦争が続きましたが、最後の宗教戦争となった三十年戦争後に結ばれたウェストファリア条約(1648年)でスイスは国際的に国家として認められました。

しかしフランス革命でナポレオン率いるフランス軍によって支配されてヘルベティア共和国が成立します。ところが、ナポレオン没後のウィーン議定書(1815年)で革命以前のスイスへと戻り、同時に永世中立国となりました。その後、内戦などを経てスイス独自の民主政治を実現するために、1848年連邦国家になりました。

首都はチューリッヒではなくベルンになる

1848年に連邦国家となったスイスは首都をどこにするのかが議論がされました。経済的にも繁栄していたチューリッヒがその候補として挙がるものの、これ以上の負担をチューリッヒには強いらない方がいいという反対意見がありました。

そこでベルンが首都の候補になるのですが、その理由はベルンがスイスのほぼ中心に位置していることと、ベルンはドイツ語圏の都市ですがスランス語圏の州からも賛同を得られたため、首都はベルンとなりました。

スイスとはどんな国?

スイスはアルプスの山々が美しい自然が豊かな国

スイスを一言で表すならば、マッターホルンもあるアルプスの山々が美しい自然が豊かな国ではないでしょうか。チーズフォンデュのような乳製品やチョコレートもおいしく、スイスの時計産業は世界的に有名です。

ヨーロッパのほぼ中心にあり、その大きさは九州と同じくらいの約4.1㎢で、人口は約854万人でゲルマン人が中心です。

スイスの国旗は主権・力・キリスト教を象徴している

スイスの国旗の赤地は主権と力を、白十字はキリスト教を象徴しています。スイスの原型となる旗はすでに13世紀に使われていたという記録が残っています。そして、現在のスイスの国旗は、スイスを構成する26州のひとつである「シュウヴィーツ州」の州旗をモチーフにしてデザインされました。この「シュウヴィーツ州」は、スイスという国名の由来にもなりました。

4つの公用語

スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語です。ドイツ語圏、フランス語圏のように地域ごとに主にひとつの公用語が話されているのですが、場所によっては複数の言語が使われているところもあります。

スイスの言語に関しては、下記のページに詳しく解説してありますのでご参照ください。
「スイスの言語」とは?4つの公用語と理由・不便さと早期教育も

スイスと日本との時差は8時間

スイスと日本との時差は8時間、サマー時間が導入される夏の間は7時間になります。時間は日本の方が進んでいるので、日本にいてスイスの時間を知りたい時は、日本時間から時差を差し引きます。

まとめ

特に大きくもない「ベルン」がスイスの首都になったいきさつには、スイスという比較的小さな国にもかかわらず4つの公用語が行きかうため折り合いを付けなくてはならなかったという事情があったからでした。法的には今でもベルンは首都として定められていないという点も複雑な国の事情が想像されます。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。