「邪推」の意味と読み方とは?成り立ちや類語・対義語・例文も

「あれこれと邪推してしまう」「彼は邪推深い」など、「邪推」はネガティブな感情を伴って用いられる表現です。本記事では「邪推」の正しい読み方や意味をはじめ、その成り立ち、使い方について解説します。また、「邪推」と似た意味を持つ「憶測」「猜疑」との違いや対義語、英語訳についても触れています。

「邪推」の意味・読み方・成り立ちとは?

「邪推」の意味は”悪く推測すること・疑ってかかること”

「邪推」の意味は、“他人の心を悪く推測すること・ひがみ、自分への悪意があると疑ってかかること”です。他人の言動を悪い意味に捻じ曲げて解釈したり、ひがみから悪く推量することを指して「邪推」と言います。自分の持つネガティブな感情によって、他人の言動を悪い方に疑ってしまうこと、とも言うことができるでしょう。

「邪推」の読み方は”じゃすい”、修飾関係で成り立つ熟語

「邪推」の読み方は、“じゃすい”です。「邪推」の「邪」には、”正しくない、心がねじけている、よこしま”という意味があります。「邪推」の「推」は”おしはかる”という意味です。この2つの漢字を重ねた「邪推」は端的に言うと”よこしまな気持ちでおしはかる”という意味になり、「邪」が「推」を修飾する関係で成り立っています。

「邪推」の使い方・例文とは?

「邪推する」「邪推してしまう」などと使う

「邪推」は”邪推する”や”邪推してしまう”と使います。一般に、「邪推」はネガティブな意味合いで用いられるのが特徴で、人の言動を疑ってかかる場合に用いられます。

例文
  • 夫の帰りが遅いとつい邪推してしまうのは私の悪い癖だ。
  • 証拠もなしに邪推するのはやめてほしい。
  • 彼女はそんな人ではない。君の邪推にすぎないんじゃないか?
  • 君を陥れようとしているなんて邪推も甚だしい!見当違いもいいところだ。

「邪推する人・邪推深い人」は簡単に言うと”疑り深い人”

「邪推」は”邪推深い”という表現で用いられることもありますが、この場合は「疑り深い人」と解釈するとわかりやすいでしょう。「邪推する人」も同様のニュアンスにとることができます。

例文
  • 僕の彼女は邪推深いので誤解を招くような言動には気を付けている。
  • 邪推深い相手とのビジネスは無駄な駆け引きを迫られるので疲れる。
  • 邪推する人は自分に自信がないのだろう。

「邪推」の類語とは?

「邪推」の類語①勘ぐる

「邪推する」と似た意味の表現には、「勘ぐる」があります。「勘ぐる」とは、”勝手な想像から相手が悪いことをしたと疑う”という意味です。「邪推」の持つ、”悪く推測する、自分への悪意があると疑ってかかる”という意味に似た表現です。

この「勘ぐる」を使った慣用表現には「下衆の勘繰り(げすのかんぐり)」があります。「下衆(品性の低い人・下劣な人)は何事にもとにかく邪推をするものだ」という意味で、暗に「邪推する人は品性がない」とほのめかす表現です。

「邪推」の類語②猜疑

「猜疑(さいぎ)」とは、”相手を信用せずに疑ってかかること、妬むこと”という意味で、「猜疑心・猜疑の目」という表現でよく用いられます。「妬ましい気持ちから怪しむ」という意味もあります。

「邪推」と似たニュアンスを持ちますが、「猜疑」の方が”疑う・怪しむ”という意味合いの濃い表現です。「猜疑」の「猜」は”妬む・疑う”という意味で、「猜疑」と似た意味の漢字を重ねた表現であるため、その意味が強調されるのです。

「邪推」の類語③憶測

「憶測」とは”いい加減に推測すること、当て推量”という意味です。「確固たる証拠がないままに想像だけであれこれ考えること」を指します。「邪推」にも”推測する・推量する”というニュアンスはありますが、「憶測」は”悪意を持って考える”という意味合いが薄いのが特徴です。「いい加減」ではあるものの、明確な悪意があるかどうかは「憶測」ではわかりません。

「邪推する」は”疑る・訝る”とも言い換えられる

「邪推する」は”疑る(うたぐる)”や”訝る(いぶかる)”という単語にも言い換えることができます。「疑る」とは”良からぬ事情があるのではと想像する”という意味、「訝る」は”うたがわしく思う・怪しく思う”という意味です。

「邪推」の対義語とは?

「邪推」と反対の意味は”信任・盲信”

「邪推」には明確な対義語はありませんが、反対の意味を持つ単語では「信任」や「盲信」が挙げられます。「信任(しんにん)」とは”相手を信用して任せること”を、「盲信(もうしん)」とは”ただ信じ込むこと”という意味です。いずれも「疑う」というニュアンスを持つ「邪推」とは反対の意味を持つ単語と言えるでしょう。

「邪推する」の対義的表現”思い込む”

「邪推」とは反対の意味となると、”物事の真偽や内容をうたがわない”という意味を持つ単語も該当します。その意味では、「思い込む」や「鵜呑みにする」「真に受ける」なども対義的表現ということができます。

  • 「思い込む」:事実と異なるのに信じ込み、疑わなくなること。
  • 「鵜呑みにする」:十分に理解しないまま他人の意見などを受け入れること。
  • 「真に受ける」:相手の言うことを本当だと思う、言葉通りに受け取ること。

また、「物事を全面的に正しいと思い、疑念を持たないこと」を意味する「全幅の信頼を寄せる・全面的に信頼する」なども「邪推」とは対極にある言葉ということができるでしょう。

「邪推」の英語訳とは?

「邪推」は英語で”distrust”

「邪推」は英語では“distrust”で表現することができます。「distrust」には”不信・疑惑”などの意味があり、「邪推」の和訳を当てられる単語でもあります。また、「邪推」の”悪い方にねじまげて解釈し、疑ってかかる”という意味を汲むと「groundless suspicion(根拠のない疑い)」や「suspect somebody without reason(理由なく誰かを疑う)」などといった英訳を用いることも可能です。

「邪推」の英語表現を使った例文

「邪推」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • His behavior was related to distrust of his colleagues.(彼の行動は同僚の邪推につながった)
  • It is a groundless suspicion.(それは邪推だ)
  • It is no good to suspect somebody without reason.(邪推は良くない)

また、「邪推深い」という意味では「He is suspicious.(彼は邪推をする)」や「He is distrustful.(彼は邪推する)」などと表現することもできるでしょう。

まとめ

「邪推」とは”他人の心を悪く推量すること・ひがみから自分に対して悪意があると疑ってかかること”を意味します。ネガティブな感情よる疑念を表現するワードなので、良い意味ではまず用いられません。「邪推」と似た意味の表現では「勘ぐる」や「猜疑」「憶測」などが挙げられます。