夏のギフトとして知られる「御中元」は、なかなか会えない人への贈り物としてその価値を再認識する人も増えているようです。本記事では、地域によって異なる「御中元」の時期やお礼状のマナーについて紹介します。また、「御中元」の「中元」とは何か、「御中元」と「お歳暮」の違いについても解説します。
「御中元」の意味とは?
「御中元(お中元)」の意味は”夏のご挨拶・贈り物”
「御中元」の意味は、“日ごろお世話になっている人への感謝を込めた贈り物”のことです。「夏のご挨拶」としても知られています。「厳しい夏の暑さで体調を崩していませんか?」「お気を付けください」と相手を気遣うような意味もあり、涼がとれる食べ物を贈ることもしばしばです。
尚、のしには漢字で書くのが一般的ですが、「お中元」とひらがなを交えた表記を用いることもあります。
「中元」とは旧暦7月15日の”神の誕生日”
「御中元」の「中元」とは旧暦の7月15日のことです。この「中元」とは、上元(1月15日)・下元(10月15日)とともに三元とよばれ、元々は中国において「人を許す神の誕生日」として祝われていたそうです。そのため、本来「中元」には”罪を償う”という意味もあったとされています。
時代を経て、この「中元」の風習が仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と重なり、日本では主に江戸時代以降、「お盆」に仏前に備える品物を贈る習慣、お世話になった人へ贈り物をする習慣へと発展したとされています。
「御中元」は日本の風習、英語では”Summer Gift”
「お中元」は日本の風習であるため、英訳する際は単に”Summer Gift(夏の贈り物)”と表現されることが多いでしょう。「真夏・盛夏」の意味を持つ「mid-summer」を使って、「mid-summer gift」と表現することもできます。「夏のご挨拶」という意味では「Summer greeting」との表現も可能です。
「御中元」の時期とマナーとは?
「御中元」の時期は贈る地域に合わせる
「御中元」の時期には地域差があり、関東や東北では7月上旬から7月15日頃が一般的であるのに対し、北海道や西日本では7月中旬から8月15日頃に贈る風習があるなど、地域によって大きく異なります。相手の地域に合わせて贈る時期を調整するのが望ましい「御中元」ですが、一方で、全国的には7月上旬から中旬頃までに統一されつつあります。時期が不確かな場合は、早めの手配が無難です。
- 北海道 7月15日~8月15日
- 東北地方 7月1日~7月15日
- 関東地方 7月1日~7月15日
- 関西地方 7月15日~8月15日
- 中国・四国地方 7月15日~8月15日
- 九州地方 8月1日~8月15日
立秋以降は「残暑御見舞」になる
地域差がある「御中元」ですが、時期を過ぎてしまった「御中元」は呼び名が変わります。7月中旬から立秋(8月8日頃)までであれば「暑中御見舞」、立秋以降は「残暑御見舞」として取り扱われます。
ただし、先述のように地域によっては「暑中御見舞・残暑御見舞」と「御中元」の時期が重なることもあります。たとえば、九州地区は8月上旬から8月15日頃に「御中元」を贈る風習があるため、8月15日を過ぎた場合に「残暑御見舞」とすることが多いです。
のし書きは漢字で「御中元」が一般的
「御中元」にはのしをつけるのが一般的です。「御中元」には、慶事で用いられる蝶結びののしを使用します。のし書きには「御中元」と漢字で記載するのが通例です。また、細長い「短冊のし」を使用した簡易包装を勧める販売者も増えていますが、「短冊のし」でも失礼には当たりません。
尚、「暑中御見舞」「残暑御見舞」ののし書きは目上の人には使うことができないため注意が必要です。目上の人には「暑中御伺い」「残暑御伺い」を使用します。
「御中元」を受け取ったら?例文も解説
「御中元」の感謝はお礼状や電話で伝える
「御中元」をもらったら、まずはお礼を伝えましょう。電話とお礼状の両方を活用するのが一番丁寧ですが、お礼状のみでも失礼には当たりません。電話やメールの方が先方へは早くお礼を伝えることができますが、「お礼状」が最も正式なマナーとされています。ごく近しい間柄をのぞき、電話のみ・メールのみにはせず「お礼状」を送りましょう。
なお、「御中元」をもらったら何かお返しを…と考える人も多いですが、「御中元」は必ずお返しが必要なものではありません。ただし、お礼状が遅いのは無礼ととられるため、お返しを贈る場合でもまずは「お礼状」は先に手配するのがマナーです。
「御中元」のお礼状は”はがき”が一般的
「御中元」のお礼状には、「はがき」が多く選ばれます。スペースが限られるはがきは、簡潔なお礼状にちょうど良いためです。内容が長くなりそうな場合には封書でおくることもありますが、その場合縦書きのシンプルな便箋がよいでしょう。また、文章中では「御中元」「お中元」のどちらの表記でも問題ありません。
「御中元」のお礼状:例文①
盛夏の候、貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度は結構なお中元の品を頂きまして、誠に有り難うございました。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
まずは略儀ながら、書面をもちまして御礼申し上げます。
敬具
「御中元」のお礼状:例文①
うだるような暑さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
おかげさまで、私共は元気に過ごしております。
さて、このたびはお心のこもったお中元の品をいただき、誠にありがとうございました。
温かなお心遣いに、感謝の気持ちでいっぱいです。
酷暑の続きます折、くれぐれもご自愛ください。
まずは暑中のご挨拶と御礼まで。
早々
「御中元」と「御歳暮」の違いとは?
「御歳暮(お歳暮)」は12月に贈る一年のご挨拶
「御中元」と同じく、時節に応じた贈り物では「御歳暮」も挙げられます。「御歳暮」は、読んで字のごとく「歳の暮れ」つまり12月に贈られるものです。「御中元」が”夏のご挨拶”であれば「御歳暮」は”一年の締めくくりのご挨拶”ともいうことができるでしょう。一般には12月10日頃から20日を目安に贈られます。
「御中元」と「御歳暮」はどちらか一方でもOK
「御中元」と「御歳暮」は必ずしもセットで贈らなければならない、というものではありません。そのため、どちらか一方でも無礼には当たらないのですが、どちらか片方を選ぶ場合には、一年の感謝を込めて「御歳暮」にすることが多いでしょう。「御歳暮」は一年間の感謝だけでなく、”来年もまたよろしくお願いします”という意味もあるため、「御中元」よりは重んじられる傾向にあるのです。
まとめ
「御中元」の「中元」とは旧暦の7月15日を指し、古くは宗教的な意味合いを持ちますが、現代の日本における「御中元」は、感謝の気持ちや夏の暑い時期を労う意味を持つ風習として受け継がれています。「御中元」は地域によって贈られる時期が異なるのがポイントです。特に、年配の方に贈る場合には居住地に合わせた時期に贈るのが良いでしょう。また、もらった「御中元」にはお礼状のマナーも忘れないようにしたいものです。