神社で神主さんが朗々と読み上げる「祝詞」ですが、「祝詞」という言葉はビジネスシーンでも使われていることをご存知ですか。この記事では、神事における「祝詞」の意味と読み方のほかに、代表的な祝詞や「かしこみかしこみ」などの用語を解説します。またビジネスで使われる「祝詞」の意味や読み方なども紹介します。
「祝詞」の意味と読み方とは?
「祝詞」の意味は”神に申し上げる言葉”
「祝詞」の意味は、“神道において神に対して申し上げるための言葉”です。神職が神社での催事などで唱えます。例えばお祭りが始まるときに、神主がお祭りの参加者やお供えするもの、お祭りで使うものをお祓いして、無事にお祭りが開催されることを願って祝詞が読み上げられます。
「言霊信仰」が支える「祝詞」の霊的な力
日本には古くから「言霊(ことだま)信仰」があり、言葉には特別な力が宿っていて、言葉を発することで言葉に込められた力が出てくると言われています。神道ではこの言霊信仰が生きているため、祝詞を言うときには一字一句を間違えないようにして丁寧に述べることが大切です。
「祝詞」の読み方は”のりと”
「祝詞」の読み方は“のりと”です。「神に対して奏上する言葉」という意味です。「のりと」という読み方は、「宣る(のる)」が由来していると言われています。「宣る」とは口に出して言うという意味なのですが、特に神や天皇に重大なことを述べるときに使われる表現です。
「祝詞」の起源と使い方とは?
「祝詞」の起源は天照大御神が隠れた天の岩屋
「祝詞」の起源は、かの有名な天照大御神(あまてらすのおおみかみ)が天の岩屋に隠れた一説にあります。天照大御神がお隠れになっときに、天児屋命(あめのこやねのみこと)が読んだ「布詔戸言(ふとのりとごと)」が祝詞の起源だと言われています。
「祝詞をあげる」や「奏上する」と表現する
祝詞を読むことは、「祝詞を上げる」や「祝詞を奏上する」という言い回しをします。
「祝詞を上げる」の「上げる」は神に対して何かをするときの表現で、「供物を上げる」のように使います。一方「奏上する」は、神に申し上げることという意味の言葉です。
「祝詞」の構成と文体とは?
「祝詞」の基本的な構成
祝詞の基本的な構成は、神に供えられる供物(「神饌(しんせん)」)や神に捧げられた供物(「幣帛(へいはく)」)が供えられて、神をたたえて、最後にお願いごとをするという形です。
「祝詞」の文体の種類”宣下体”と”奏上体”
「祝詞」には「宣下体(宣明体)」と「奏上体」という2つの文体が使われています。
- 宣下体:その場にいた人たちに宣誓(宣読)する形式。奏上体よりも古い。
- 奏上体:神さまに申し上げる形式。現在、読まれる祝詞のほとんどに使われている。
「祝詞」の種類と有名な祝詞・用語の意味とは?
最古の祝詞『延喜式』と『台記別記』
最も古い祝詞と言われるのは平成時代に編成されたと言われる『延喜式(えんぎしき)』巻8所収に収録されている27篇の祝詞と、藤原頼長の『台記別記』収録の1編です。
日本の古典文学のひとつとしても評価も高く、これ以降に作られる祝詞には『延喜式(えんぎしき)』と『台記別記』の文体や語彙などが受け継がれています。
代表的な祝詞「大祓詞・祓詞・天津祝詞」
「祝詞」の種類は多く、神事や祈る目的などによってたくさんある祝詞の中から選ばれて奏上されます。ここでは代表的な祝詞を紹介しましょう。
神職によって作られるオリジナルな祝詞
祝詞は古い祝詞を読み上げるだけでなく、神職が祈願者の願いを聞いて作ることもできます。オリジナルの祝詞も既存の祝詞に習い、神を讃えて儀式の目的などを述べて、神のご加護があるように祈る内容になっている場合がほとんどです。
神式で行われる結婚式で奏上される祝詞もオリジナルな祝詞が使われていて、斎主が祝詞を述べている間は参列者は頭を軽く下げて聞きます。
「高天原」とは”天上の世界”のこと
祝詞の冒頭に出てくる「高天原」とは、日本の神話に出てくる天上の世界のことです。天上の世界には天照大御神などの多くの神が住んでいると言われています。
「高天原」の読み方は「たかまがはら」や「たかあまのはら」、「たかまのはら」などさまざまな読み方があります。
「かしこみかしこみ」とは”恐れ多い”という意味
祝詞の最後の方に出てくる「かしこみかしこみ」とは、恐れ多いという意味の表現です。漢字では「恐み恐み」や「畏み畏み」と書き、神への尊敬を表しています。「恐」という漢字が使われているからといって「恐れている」や「恐ろしい」という意味があるわけではありません。
参照:「かしこみかしこみ」とは?意味とシーン別の使い方を紹介
ビジネスシーンで使われる「祝詞」とは?
「祝詞」とは”お祝いの言葉”のこと
ビジネスシーンで使われる「祝詞」とはお祝いの言葉、またはそれを書いた文章のことです。会社の創立記念や忘年会などの催し物、プライベートでは結婚式などのお祝いの席で、出席者の中から代表者が「祝詞」を述べたり、「祝詞」が紹介されたりします。
「祝詞」の言い換え表現は”祝辞”
「祝詞」の言い換えとして”祝辞(しゅくじ)”があります。意味は「祝詞」と同じく「お祝いの言葉」で、「祝辞を述べる・主賓の祝辞」などビジネスシーンでは「祝詞」よりも「祝辞」を使った表現が多いでしょう。
「祝詞」の読み方は”のりと・しゅうし・しゅくし”
お祝いの言葉という意味で使われる「祝詞」には、”のりと・しゅうし・しゅくし”とさまざまな読み方があります。読み方の使い分けに決まった決まりはないので、「祝詞」にはいろいろな読み方があることを知っておけば十分でしょう。
また、「祝詞」は”祝詞を述べる”という言い回しがよく使われます。祝詞を言うという意味ですが、硬めな表現なのでかしこまった席で使われる言い回しです。
まとめ
「祝詞」とは神道で読まれる「祝詞」とお祝いの席で読まれるお祝いの言葉という意味の「祝詞」があります。「のりと」という読み方も独特なのですが、お祝いの言葉という意味では「しゅうし」や「しゅくし」などとも読まれていて複雑です。まずは「のりと」という読み方を覚えて、神事で神主が読み上げるものは「祝詞」だと理解しておきましょう。
罪や穢れ、災厄をはらう祝詞と言われていますが、解釈の仕方によっては明日への希望や開運なども期待される祝詞です。読み上げると3分を超える長い祝詞ですが、読まれる機会が多いです。
「大祓詞」の由来は、6月と12月の月末に行われる行事「大祓(おおはらえ)」に奏上された『延喜式』の中にある祝詞です。「大祓」とは、親王や大臣など百官が平安宮の朱雀門(すざくもん)に集められて、人民の罪をお祓いするために行われた神事です。
「はらえことば」や「はらえごと」と呼ばれる「祓詞」は、お祓いのための言葉です。神事を始めるときに「祓詞」を読んで、斎主自身の他に参列者の罪や穢れ(けがれ)を清めます。
「天津祝詞」は謎の多い祝詞で、その意味がはっきりしない祝詞です。
「天津祝詞」は『大祓詞』の中段あたりに出てくる「天津祝詞の太祝詞事」という言葉から取られているのですが、「天津祝詞」という祝詞は何かという点で諸説あります。その中でも有力なのが、国学者の平田篤胤が編んだ「禊祓詞」で、これを基礎にして現在読まれる「天津祝詞」になりました。