「逼迫」の意味とは?「切迫」との違いや類義語・対義語も例文解説

感染症の流行による病床不足は「医療体制が逼迫(ひっぱく)している」と表現されることがあります。この「逼迫」は、医療に限らず経済や生活など様々なシーンで用いられる単語です。本記事では「逼迫」の詳しい意味とその使い方、「切迫」との違いについて解説します。また類義語や対義語、英語訳の関連用語も記載します。

「逼迫」の意味と読み方とは?

「逼迫」の意味は”余裕がない状態になること”

「逼迫」の意味は、“非常に不足すること、行き詰まり余裕がない状態になること”です。危険や災難などが身に迫ること、あるいは事態が差し迫ることも意味します。

「逼迫」の読み方は”ひっぱく”、「逼」は常用外漢字

「逼迫」の読み方は、“ひっぱく”です。「逼」の字には”せまる、さしせまる、近づく”などの意味があり、「迫」にも同様の意味があるため似た意味の漢字を重ねた熟語ということになります。

なお、「逼」の字は常用外漢字であるため、「ひっ迫」とひらがなを交えた表記をされることも多いです。

「逼迫」の使い方と例文とは?

「逼迫する・逼迫している」は余裕がない状態

「逼迫」は余裕がなくなること、あるいは余裕がない状態を表す際に「逼迫する・逼迫している」と使います。数量の不足を意味するだけでなく、経済的に苦しくなることや差し迫った事態を表現する際にも用いられます。

例文
  • 父が若いころは生活が逼迫することも少なくなかったらしい。
  • 医療体制の逼迫が日々報道されている。
  • 祖父の病状が逼迫していると実家から連絡を受けた。

「需給逼迫」や「金融逼迫」などの表現も

「逼迫」は「○○逼迫」の熟語形式でもしばしば用いられます。たとえば「需給逼迫」とは、消費者の需要に対し、供給量が追い付かず余裕がなくなる様を表します。結果として、少ない物資に消費者が殺到するため、価格上昇を招くのが特徴です。

一方「金融逼迫」とは、資金に対する需要が供給を上回ることで、結果として資金の調達が困難になることです。「金融逼迫」においては資金を借りにくくなります。

このほか、財政に余裕がなくなる様を「財政逼迫」と表現するなど、主に市場や経済において「○○逼迫」の形で用いられることが多いでしょう。

「逼迫」と「切迫」の違いとは?

「切迫」とは”差し迫ること”

「切迫」とは”追い詰められた状態になること・期日などが間近に迫ること”という意味です。たとえば、「経済情勢が切迫する」や「切迫した事情がうかがえる」のように、追い詰められた状態や緊張した状態になることを指して使うことができます。

「切迫」は時間や期限にも使える

「逼迫」と「切迫」はどちらも差し迫った状況を言い表す際に用いられます。一般に「逼迫」と「切迫」はほぼ同義とされていて、「逼迫」が常用外漢字であるため「切迫」の方が使い勝手がよい、という意見もあります。

「切迫」と「逼迫」の使い方における大きな違いは、「切迫」は時間や期限に対しても用いられるという点です。例として、「提出期限が切迫している」「査定の時期が切迫してきたので社内はピリピリしている」などと表現できます。

「逼迫」の類義語とは?

「逼迫」の類義語は”緊迫・急迫”

「逼迫」の類義語(似た意味の表現)には“急迫”“緊迫”が挙げられます。「急迫(きゅうはく)」とは”事態が差し迫ること”を意味します。「緊迫(きんぱく)」もまた”情勢が差し迫ること”という意味で、「緊張して今にも事が起こりそうな状態」を指す表現です。

例文
  • 事態が急迫する。
  • 会議室からは緊迫した空気を感じる。

「逼迫した状況」の言い換えは”一刻を争う・非常事態”

「逼迫した状況」とは”差し迫った状況、余裕のない状況”を表しますが、その意味では「一刻を争う・非常事態・緊急事態」などの表現に言い換えることが可能です。「一刻を争う」とは”わずかな時間も無駄にできない様、急を要すること”を意味し、まさに「余裕がない状況」のことです。「逼迫」よりもよりスピーディな対応、即座の対応が必要なニュアンスがあります。

「逼迫」の対義語とは?

「逼迫」の対義語は”余裕”

「逼迫」と反対の意味を持つ単語は“余裕”です。「余裕(よゆう)」とは、”必要以上にあまりがあること、ゆとりがあること”を意味します。また、「精神的に落ち着いていて、あせったりすることがない様」という意味でも使用される表現です。

例文
  • 在庫にはまだ余裕がある。
  • 座席に余裕があり、好きな席が選べた。

反対の意味を持つ表現には「富裕」も

「逼迫」の対義表現では“富裕”も挙げられます。「富裕(ふゆう)」とは”財産が多く、生活が豊かでゆとりがあること”を意味し、「富裕層」という表現でもよく耳にします。たとえば「富裕な生活」は「逼迫した生活」とは真逆の状況と言えるでしょう。

「逼迫」の英語表現とは?

「逼迫」の英語表現は”pressure”や”tight”など

「財政の逼迫」など経済的に余裕がない様を表す際には“pressure”を使用します。「pressure」は”圧力、押すこと”のほか、”苦難、窮迫(困りきること)”などの意味を持つ単語です。同じく、「金融が逼迫した」という意味では“tight”“tightness”も用いられます。

また「差し迫った状況」という意味では“urgent(緊急、至急)”“stringent(厳しい、切迫した)”の単語を使用した英訳も可能です。

「逼迫」の英語例文

「逼迫」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • Money is tight.(金融が逼迫している)
  • We are facing financial pressure.(私たちは今、財政難に直面している)
  • The situation is stringent.(状況は逼迫している)
  • The medical system is under pressure.(医療体制が逼迫している)

まとめ

「逼迫」とは”差し迫った状況、余裕がない状態になること”を意味します。「生活が逼迫する」「財政が逼迫する」のように経済的な事情に対して用いる他、商品やリソースなど様々なものが不足している様、差し迫った状況にあることを言い表す際に使用することができます。「逼迫」は常用外漢字であることから、「ひっ迫」の表記が用いられたり、似た意味の「切迫」に代えられることもしばしばです。ただし、時間や期限が差し迫る様は「逼迫」ではなく「切迫」を使う点には注意が必要です。