「寡占的な動きがみられる」「三社による寡占市場だ」など、ビジネスシーンで時折耳にする「寡占」というワードにはどういった意味があるのでしょう。「寡占」の意味、使い方をはじめ、「独占」など類語との違いや対義語、英語訳について解説します。また「寡占」のもたらすデメリットにも触れています。
「寡占」の意味・読み方と定義とは?
「寡占」の意味は”少数の大企業による市場の支配”
「寡占」の意味は、“同一の産業内で、少数の大企業が市場を支配している状態”のことです。
「寡占」の「寡」の字には”すくない、ひとり者、やもめ(配偶者を失って独身でいる人のこと)”などの意味があります。一方「占」とは”うらなう、しめる、自分のものにする”などの意味を持つ漢字です。漢字の意味にならった言い方をすると「少ない企業が(市場を)占めている」ということもできるでしょう。
「寡占」の読み方は”かせん”
「寡占」の読み方は“かせん”です。
「寡占」の企業数に細かい規定や定義はない
「寡占」における企業数に細かい規定はありません。「何社による市場の支配」という細かい決まりはないようですが、数社の大企業が市場の大半を占めていて、中小企業は出る幕がないと言わざるを得ないような状況が「寡占」です。たとえば、上位3社が市場のシェアの7割を占めるような場合は「寡占状態にある」と言えるでしょう。
「寡占」の使い方と例文とは?
「寡占している」や「寡占市場・寡占業界」と使う
「寡占」は「寡占している」という表現のほか、「寡占市場・寡占業界」の表現でもよく用いられます。「寡占市場」は”寡占状態にある市場”、「寡占業界」は”寡占状態にある業界”のことです。また、市場を「寡占している企業」という意味で「寡占企業」の表現が使われることもあります。
- この業界は大手4社による寡占市場となっている。
- いまやアメリカ企業による寡占が顕著である。
- 寡占企業の一員となれたことは光栄だ。
「寡占化・寡占的」も「寡占状態」を意味する表現
「寡占」を使った表現では”寡占化”や”寡占的”などの表現も挙げられます。「寡占された状態」や「寡占してる状況」になる様を言い表す際に用いられます。
- 市場の寡占化が進むことは避けたい。
- 消費者にとって今の寡占的な状況は不利だ。もっと価格競争が進む市場が望ましい。
「寡占」の具体例とデメリットとは?
寡占の具体例は「〇〇の会社と言えばこれ」
「寡占」の例のひとつに通信業界が挙げられます。格安スマホや格安SIMなどの選択肢が増える以前は、携帯キャリアと言えば大手数社をイメージすることが多かったでしょう。この「携帯のキャリアならAとBとCの3社」という状態が「寡占」です。
また、「宅配便と言えば3社」や「家庭用ゲーム機と言えば2社」「ビールと言えば4社」のように少数の大企業が支配する市場はほかにもいくつか例があります。
こうした売り手側を占める企業が少ない、という場合は特に「売り手寡占」と表現されます。一方で「買い手側が少ない」ことは「買い手寡占」と言います。
「寡占」のデメリットは価格競争がないこと
「寡占」の状態では公正な競争ができないこと、それにより価格競争にも限界が生じるのが大きなデメリットです。「寡占」においては、売り手が一方的に価格を決定してしまうなどして、価格が上昇する恐れがあります。
一方で「寡占」している企業が値下げした場合、市場の大半の商品の値段が下がります。この場合中小企業も値下げをせざるを得ないのですが、大企業と同じ価格設定ができないこともしばしばです。
また、「寡占」が進むことで企業同士の競争が減ると品質の低下につながることもあります。このような理由から、日本では「独占禁止法」を制定し「寡占」が「独占」にならないよう取り締まりが行われています。
「寡占」と「独占」の違いとは?
「寡占」と「独占」の違いは企業の数
「寡占」と「独占」の違いはその企業数にあります。「寡占」は細かい規定はないものの、「少数の大企業」による支配的な状況を指します。一方の「独占」は「特定の資本」つまり「1社」による支配的な状況を指す点で大きく異なります。
先述のように、国内では「寡占」が「独占」につながらないように、「独占禁止法」が制定されています。
「独占」とは”ひとりじめにすること”の意味
「独占」とは端的に言うと”ひとりじめにすること”を意味します。経済においては「特定の資本が、生産と市場を支配している状態」を指し、他の競争者(他の企業)を排除した状況を指します。
「寡占」の類語とは?
「寡占する」の類語は”占める”
「占める」とは”自分のものとする、占有する”という意味です。たとえば「寡占する」は”市場を占める”と言い換えることができるでしょう。また「上に立ち権力を握る」という意味の「一手に握る」も、”市場を支配する”という意味の「寡占する」とは類義的な表現です。
「カルテル」も「寡占」の類語
「カルテル」とは”複数の企業が話し合い、生産数や価格などを共同で取り決めること”です。日本語では「企業連合」とも呼ばれます。
公正な価格競争を避け利益を独占することを目的に、価格の引き上げや制限などを行う「カルテル」は独占禁止法で禁止されています。
「寡占」の対義語と英語表現とは?
「寡占」の対義語・反対語は”乱立”
「寡占」と反対の意味を持つ単語では「乱立」が挙げられます。「乱立」は”多くの者が乱雑に立ち並ぶこと、(選挙などで)多くの者がむやみにでること”という意味です。少数による支配的な状況ではなく、「多すぎるほどのもの」というニュアンスを含む点で対義的といえる表現です。
また、「多くの英雄たちが勢力を張り、対立しあうこと」という意味の四字熟語「群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)」も対義表現のひとつです。
「寡占」は英語で”oligopoly”と表現
「寡占」は英語では「oligopoly」です。「寡占市場」は形容詞の「oligopolistic」を使用し、「an oligopolistic market」とします。「寡占化」は”寡占の状態になる”と意訳し、「growing oligopolistic」の表現が可能です。
まとめ
「寡占」とは”少数の大企業が市場を支配している状態”という意味です。国内の例ではよく、ビールや携帯キャリアが挙げられます。「寡占」は明確な企業数にきまりがあるわけではありませんが、「一社」が市場を支配する「独占」とは明確に区別されます。「市場の独占」は法律で禁止されていますが、「寡占」もまた、公正な価格競争の妨げとなったり、価格が上昇したりといった懸念点があるため、行き過ぎないような監視が必要です。