状態や姿を言い表す際に「様相を呈している(呈する)」や「~な様相を見せる」などと表現することがあります。この「様相」とはどういった意味で、「様子」とは何が違うのでしょう。「様相」の意味と使い方を解説します。また「様相を異にする」など様々な例文と類語、英語訳も紹介します。
「様相」の意味とは
意味は「有り様、すがた」読み方は「ようそう」
「様相」とは「物事のありさま、すがた、状態」という意味です。「様相」と書いて「ようそう」と読みます。
「様」「相」はいずれも「かたち、ありさま」などの意味を持つ字で、「様相」とふたつ重ねて使うことで「外側からみたすがた、かたち」や「物事のすがた、ありさま」という意味になります。
哲学においては「事物の存在の仕方」を意味する
哲学において「様相」は、「事物の存在の仕方」を指します。現実的、必然的、偶然的などといった「判断の仕方の種類」を表す言葉としても用いられます。
「様相」と「様子」の違いは客観性とスケール
「様相」とよく似た単語に「様子」があります。「様相」は、主に客観的に判断できる情報や視覚的に判断した情報に対して使用するのが特徴です。これに対し「様子」は、相手の心情など主体的に見た状態に対しても使用する点で異なります。
また、「様相」のほうが硬い表現で、社会・組織・政治などといったスケールの大きな事柄に使用する点もポイントです。「様子」は日常の些細な事柄にも使うことができます。
「様相」の使い方と例文
「様相を呈する」「様相を呈している」と使う
「様相」の最も多い使用例が「様相を呈する」です。「呈する(ていする)」とは「差し出す、進呈する、ある状態を表す」という意味があります。
「様相を呈する」は「~のような状態になる」というニュアンスで、「様相を呈している」は「~のような状態を表している、有り様を示している」というニュアンスです。たとえば、「深刻な様相を呈している」は「深刻な状態を表している、深刻な状態になっている」ということを表します。
「~の様相を見せる」は「~な状態がうかがえる」
「~の様相を見せる」とは「~な状態がうかがえる、見て取れる」という意味です。「~のような感じになる」という意味にとることもできます。
たとえば、「ただならぬ様相を見せた」は「ただならぬ状態がうかがえた、ただならぬ様子だった」という意味です。「様相を呈する」と似たニュアンスで用いられます。
「様相を帯びる」は「~のような感じになる」
「様相を帯びる」とは、わかりやすく言うと「~のような感じになる」というニュアンスで、何かを思わせる状態になることを意味します。「様相を呈する」と似た意味合いで使うことができます。
大型ショッピングモールの開店により、地元商店街は廃墟の様相を帯びてきた。
「様相を異にする」「様相が異なる」は状態が違うこと
「様相を異にする」「様相が異なる」とは、すがたや状態がいつもと違う様を意味します。普段とは異なった雰囲気をまとっている様を指す表現です。
- 社長が急遽同席したことで様相を異にした打ち合わせとなった。
- このフロアだけ様相が異なるのは経理部のフロアで今日が締め日だからだろう。
「様相論理」とは必然性や可能性を扱う論理
「様相論理」とは端的に言うと、「様相」と呼ばれる必然性や可能性などを扱う論理のことです。命題の真と偽だけでなく、たとえば必然・可能・不可能といった「命題の様相」を用いて論理的に解釈しようとする、現代論理学の一分野です。
「様相」の類語とは
「様相」の類語に使える「有り様」
「様相」と似た意味の語では「有り様(ありさま)」が挙げられます。「有り様」とは「物事の状態やありよう、様子」という意味です。たとえば「悲惨な有り様」「~のような有り様」といった表現で用いられます。
「動静」も「様相」の類語の一つ
「動静(どうせい)」もまた「物事の有り様、様子」を意味する語で、「様相」の類語の一つです。「動き、推移」といたニュアンスのほか、「人の行動の有り様」という意味もあります。
たとえば「首相動静」として日々首相の行動が公表されますが、これは「動静」のもつ「人の行動の有り様」という意味合いを使った表現です。
「様相を呈する」の類語は「相貌を呈する」
「様相を呈する」と似た表現では「相貌を呈する」が挙げられます。「相貌(そうぼう)」とは「顔かたち、物事の様子」という意味で、「相貌を呈する」の形で主に人の様子に言及する際に用いられます。たとえば「異様な相貌を呈している」というとただならぬ雰囲気の人物がイメージされるでしょう。
このほか「様相を呈する」の言い換えでは「~になる」「~と化す」「~に陥る」などといった表現が使用できます。いずれもある状態、状況へと変化する様を意味する表現です。
「様相」の英語訳とは
「様相」の英訳では「aspect」を使う
「様相」の英語訳では「aspect」が挙げられます。「aspect」には「面、様相、容貌」などの意味があり、たとえば「ただならぬ様相」は「serious aspect」、「新しい様相」は「new aspect」と英訳することができます。
動詞「assume」を使った英語訳も可能
動詞「assume」は「思い込む、きめてかかる」などの他、「(ある性質、様相などを)帯びる、呈する」という意味を持ちます。たとえば、「assume a serious aspect」は「ただならぬ様相を呈する」という意味です。また、「aspect」を使わずに「Her face assumed a look of anger.(彼女は怒りの様相を呈した)」といった使い方も可能です。
The case has assumed a new aspect.(事件は新しい様相を呈している)
まとめ
「様相」とは「有り様、状態、すがた」などの意味を持つ語です。たとえば「様相を呈する」は「~な状態になる、~な有り様である」、「様相を見せる」は「~な有り様がうかがえる」というニュアンスになります。「様子」と字面も意味も似ていますが、「様相」は政治や社会など規模が大きな話題に用いられ、客観的な様を言い表す際に使うのがポイントです。
要人来日とあって、空港周辺はただならぬ様相を呈している。