「煩悶」の意味と使い方は?四字熟語「煩悶懊悩」や類語と対義語も

「煩悶する」「煩悶の日々」と苦しい現状や苦しい胸の内を訴えることがありますが、「煩悶」とは具体的にはどういった意味を持つのでしょうか。「煩悶」の意味と使い方を例文で解説するほか、四字熟語「煩悶懊悩」との違いや類語・対義語、さらに英語訳など関連用語についても紹介します。

「煩悶」の意味と読み方とは

「煩悶」とは「悩み苦しむこと」という意味

「煩悶」とは「いろいろと悩み、苦しむこと」「苦しみもだえること」という意味です。単に「悩む」というよりも深い意味を持つ語で、精神的に思いわずらう様・大きな苦しみを意味する表現です。

「煩悶」の読み方は「はんもん」

「煩悶」は「はんもん」と読みます。「煩悶」の「煩」とは「わずらう、なやむ、苦しむ」という意味です。一方「悶」もまた「もだえ苦しむ、もだえる、思い悩む」という意味を持ち、この二つを重ねることで「苦しみもだえること」という意味になります。

「煩悶」と四字熟語「煩悶懊悩」の違いとは

「煩悶懊悩」の意味は「思い悩み、苦しむこと」

「煩悶」は「煩悶懊悩(はんもんおうのう)」または「懊悩煩悶(おうのうはんもん)」という四字熟語でも知られます。「煩悶懊悩」とは「思い悩み、苦しんでもだえること」という意味です。「懊悩(おうのう)」には「悩みもだえること」という意味があり、「煩悶」の類語でもあります。

「煩悶懊悩」と重ねて使うことでそれぞれの意味が強調され、悩みや苦悩が続き苦しむ姿を表現できるでしょう。

例文

煩悶懊悩し、昨夜はまったく眠れなかった。

「煩悶」と「懊悩」の違いは心の内か外か

「煩悶」と「懊悩」は似た意味の表現ですが、厳密にいうと両者には違いがあります。「懊悩」は同じ「悩みもだえること」というニュアンスでも「心の内で思い悩む」様をさします。

一方の「煩悶」は「苦しみもだえること」という意味にあるように、苦しみが表面に出ているニュアンスです。たとえば、頭をかきむしるように悩み苦しむ様が「煩悶」です。そのため、苦しみの度合いでは「懊悩」よりも「煩悶」のほうが強い印象となります。

「煩悶」の使い方と例文

「煩悶する」の形で使われることが多い

「煩悶」は「煩悶する」の形で「悩み苦しむ様」を言い表します。

例文
  • ミスの大きさに気づいて煩悶するも、今さら取り返しはつかない。
  • 独りで煩悶していると深い闇に飲み込まれそうだ。 

「煩悶の日々」とは「悩み苦しむ日々」

「煩悶の日々」とは「悩み苦しむ日々」「苦しみもだえる日々」をさします。大きな苦しみを意味する「煩悶」は、簡単に解決されるのではなく苦しみが長く続いてしまうこともあるでしょう。そうした深く悩み苦しむ日々は「煩悶の日々」と表現できます。

例文
  • 彼女への罪悪感から煩悶の日々を過ごす。
  • 煩悶の日々からようやく抜け出せそうだ。

「煩悶」は日常生活ではあまり使わない

「煩悶」は、「悩む」「もだえる」という表現よりも硬い印象がある表現のため、日常生活で頻繁には使われない言葉です。たとえば「夕飯の献立に煩悶する」「服装選びに煩悶する」のように使うと少し違和感があります。「悩み苦しむこと」の内容や感情の度合いに応じて使うようにしましょう。

「煩悶」の類語とは

「煩悶」と似た意味の語は「苦悶」

「煩悶」と似た意味の語では「苦悶」が挙げられます。「苦悶(くもん)」とは「肉体的、精神的に苦しみもだえること」という意味です。「苦悶の表情を浮かべる」などの表現でよく用いられます。

また、「煩悶」「苦悶」と似た語では「憤悶(ふんもん)」「憤懣(ふんまん)」もあります。「憤悶」「憤懣」はいずれも「怒りや不満などでいきどおってもだえること」という意味です。怒りの感情によって苦しむ様を言い表す際に使用できます。

「悶絶」も類義的な意味をもつ表現

「悶絶(もんぜつ)」とは「苦しみもだえ、気絶すること」という意味です。ただし「気絶する」というニュアンスを伴わずに使用される例も多く、「あまりの可愛さに悶絶した」のように高まる感情やそれを周囲に気づかれないよう抑え込む様をさして「悶絶」と表現されることも少なくありません。

「思い悩む」「苦悩する」に言い換えも

「煩悶する」は硬い表現であるため、日常会話では「思い悩む」や「苦悩する」といった表現への言い換えが適切です。いずれも「苦しみ悩む」という意味を持ちます。

「煩悶」の対義語とは

「煩悶」に明確な対義語はない

「煩悶」には、明確な対義語と呼べる語はありません。先に紹介した「煩悶懊悩」の「懊悩」の対義語では、「愉悦(ゆえつ:心から喜ぶこと)」や「満悦(まんえつ:十分に満足すること)」といった語が挙げられます。

「煩悶する」と対義的な表現「慰む」

明確な対義語ではありませんが、「煩悶する」と反対の意味の語として「慰む(なぐさむ)」が使えるでしょう。「慰む」とは「一次的に気持ちが晴れる、気がまぎれる、なごむ」という意味があります。

たとえば「心慰む話」とは「気持ちが晴れる話、なごむ話」という意味で、「煩悶」とは反対のニュアンスにとることができます。このほか、「楽しむ」も「煩悶する」とは対義的な表現のひとつです。

「煩悶」の英語訳

「煩悶」の英語訳には「anguish」を使う

「煩悶」の英語訳は「anguish」です。「anguish」は「苦悩、激しい苦痛、苦悶」といった意味を持つ英単語で、「feel anguish」や「be in anguish」として「煩悶する」の意味になります。

たとえば「He felt anguish.」は「彼は煩悶した」という意味です。「The man was in anguish.(彼は煩悶した)」という表現もできます。

「worry」や「trouble」「writhe」を使った英語訳も

「煩悶する」の英語訳では「worry(心配)」や「trouble(悩ませる、煩わせる)」「writhe(もがく、もだえ苦しむ)」といった語が用いられることもあります。

例文
  • to writhe in agony(苦しみもがく)
  • I confided my worries about my job to him.(仕事について煩悶していることを彼に打ち明けた)

まとめ

「煩悶」とは「悩み苦しむこと」という意味です。やや硬い印象を伴う語で、日常の悩みではなく大きな問題に苦しむ様を表す特徴があります。よく使われる表現は「煩悶する」や「煩悶の日々」で、四字熟語「煩悶懊悩」としても用いられますが「煩悶」が目に見えるほど悩み苦しんでいるのに対し、「懊悩」は心の内で深く悩む様を表す点で異なるニュアンスの表現です。