「器量」には複数の意味があり、たとえば「彼女は社内で一番器量がいい」と「リーダーとしての器量がない」では意味が異なります。「器量」の詳しい意味をはじめ、その使い方を例文で解説します。類語「気立て」や「度量」との違い、英語訳など関連用語とともに見ていきましょう。
「器量」の意味とは
「器量」とは「顔立ち、容貌」の意味
「器量」のひとつめの意味は「顔立ち、容貌」です。主に女性に対して用いられる意味で、男性でもその容姿を褒める際に使うことがあります。「顔立ち」に限らず、ものの姿かたちに言及する際にも用いられる意味です。
「器量」には「能力、人徳」や「評価」の意味も
「器量」には「あることをするのにふさわしい能力、人徳、力量」という意味や、「その人について世間が与える評価、面目」という意味もあります。「評価」という意味での「器量」は多くの場合男性に対して用いられます。
「器量」は古語において「名人」の意味も
上記以外にも「器量」には「巧みなこと」「上手、名人」という意味もあります。この意味は主に古語として用いられるため、現代での使用例は多くはありません。
「器量」の使い方とは?例文付きで紹介
「器量よし/器量がいい」とは容姿を褒める表現
「器量」の使用で最も多いのが「器量がいい」「器量よし」で、女性の容姿を褒める言い回しです。わかりやすくいうと「美人」や「スタイルがいい」ことを表しています。なお、「器量よし」を漢字で表記する場合は「器量良し」や「器量好し」となります。
- 彼の妻は退職前は社内でも器量よしと評判の事務員だった。
- 器量がいいだけでなく、細やかな気配りもまた彼女の魅力だ。
「器量が悪い」は、ぶしつけな言い回し
「器量がいい」の対義的な表現は「器量が悪い」となります。ただし、ぶしつけな言い回しであるため避けたほうが無難でしょう。また、「彼女は器量がいいとは言えないが…」として使う例も容姿に言及する表現になるため控えたほうが良いフレーズです。
「器量がない人/ある人」とは能力の有無を表す
「器量がない人」や「器量がある人」という場合の「器量」は「能力」を意味します。つまり、「器量がない」というと「ふさわしい能力がない」という意味で、「器量がある」は「(それに足りるだけの)能力がある」という意味になります。
「器量がない」は「器量が乏しい」「器量に欠ける」といった表現も可能です。
- 彼はリーダーとしての器量に欠ける。
- 人の上に立つ器量を備えるまでは重要なポジションは任せられない。
「器量を上げる/下げる」とは評価を意味する
「器量を上げる」あるいは「器量を下げる」は世間からの評価の上がり下がりに言及する際の表現です。「面子」「面目」の意味にもとることができます。
今回の件が僕の器量を下げたことは言うまでもない。
「器量が狭い」とは言わない
「器量」はその意味に応じて様々な使い方をされますが、「器量が狭い」という言い回しでは用いられません。「器量」の持つ「容姿」「能力」「評価」のどの意味にとっても「狭い」という表現は不適切です。
おそらく「了見が狭い(考えが偏っていること、思慮が浅いことの意味)」などほかの表現と混同された誤用例と考えられます。
「器量」の類語・類義語とその違いとは
「器量」の類語①:気立て
「気立て」とは「その人の態度などに現れる心の持ち方、気質」という意味です。「気立てがいい人=性格がいい人、心根の優しい人」といったニュアンスにとるとわかりやすいでしょう。
「器量」と同様に、女性に対する誉め言葉としてしばしば用いられますが、「器量」が単に容姿を褒める表現であるのに対し、「気立て」はその人の内面・気質を褒める点で異なります。
「器量」の類語②:度量
「度量」とは「人の言動を受け入れる、広くおおらかな心」という意味で、端的にいうと「心の広さ、寛容さ、包容力のある様」を表す語です。たとえば「度量が広い」というと「心が広く、寛容である様」を意味します。
「器量」と似た語ではありますが、「器量」は「能力」を意味する語です。「器量を備えている」と使うと「ふさわしい能力がある」というニュアンスになり、寛容さを意味する「度量」とは異なるニュアンスになります。
「器量」の類語③:能力・資質など
「器量」の言い換えに使える類語は、文脈と使用されている意味によって使える語が変わってきます。たとえば、「器量よし」の「器量」は、顔立ち・容姿・面立ちなどに言い換えが可能です。
一方、「能力」という意味では技量・才能・実力などに言い換えられるでしょう。「世間からの評価」という意味では面子・面目といった語が類語として挙げられます。
「器量」の英語訳とは
「器量」の英語訳は「ability」
「ふさわしい能力」という意味での「器量」の英語訳では「ability」が使用できます。たとえば「ability as a teacher」は「教師としての器量」と和訳できます。
「器量」で容姿を表す場合は「good-looking」
「器量がいい」「器量よし」という意味の「器量」は、「good-looking」や「beautiful」を使った英語訳が可能です。たとえば「a good-looking woman」は「器量のいい女性」という意味になります。「社内一の器量よし」という意味では「She is regarded as the best-looking girl in this office.」と英訳できるでしょう。
「評価」を意味する「器量」の英語訳
英語で「評価」を意味する単語では「estimation」が挙げられます。たとえば「彼は器量を上げた」は「He has risen in the public estimation」と英訳できます。一方で「器量を下げた」という場合は「He has fallen~」の表現を使用するとよいでしょう。
また、「器量を下げた」は「lose face(面子を失う)」と英訳することも可能です。
まとめ
「器量よし」の表現で知られる「器量」には「容姿」という意味の他、「能力」「評価」など複数の意味があります。「器量がある/ない」と使うと「能力」について、「器量を上げる/下げる」と使うと「評価、面子」の意味になるように、文脈に応じた正しい意味の読み取りが求められる熟語です。