「こんなご時世ですが…」「大変なご時世なので…」というフレーズを耳にすることがありますが、「ご時世」とはどのような意味を持つのでしょうか。「ご時世」の意味や使い方をビジネスで使える例文とともに解説します。また「ご時勢」との違いや類語、英語訳も紹介しましょう。
「ご時世」の意味とは
「時世」とは「時代、世の中」の意味
「時世」とは「時代、ある時代における世の中」という意味です。もう少し言うと「時と共に移り変わる世の中」という意味があります。
「ご時世」の「ご」は丁寧なニュアンス
「ご時世」の読み方は「ごじせい」で、「時世」を丁寧にした語です。接頭辞「ご」は、相手を敬う意味(尊敬語)として使うことも可能ですが、「ご時世」の場合は「時世」を丁寧なニュアンスにするために用いられています。「ご」を漢字で書き「御時世」とすることもあります。
「ご時世」のビジネスでの使い方とメール例文
「このご時世」とは「今の時代、現代」という意味
「ご時世」は「このご時世」の形で用いられることが多いです。「このご時世」とは「今の時代、今の世の中、現代」という意味です。「今のご時世」としても同じニュアンスになります。
- このご時世キャッシュレスなんてそう珍しいものでもないだろう
- 今のご時世自分の身は自分で守らないと
「こんなご時世ですが(なので)」と表現する
「ご時世」の使い方のひとつとして、「こんなご時世ですが…」や「こんなご時世なので…」という使用例が挙げられます。ストレートにとると「このような時代、世の中ですが(なので)」という意味です。
ビジネスシーンでは「大変な時期ですが…」と似たニュアンスでも用いられ、メールの締め文に使うこともあります。
- こんなご時世なので定例会議もオンラインに切り替えます
- こんなご時世ですが、引き続きよろしくお願いいたします
「世知辛いご時世」「暗いご時世」と嘆く
「ご時世」の前に形容詞をつけ、その時代を言い表すこともあります。たとえば、「世知辛いご時世」は「暮らしにくい世の中」というニュアンスです。他にも「暗いご時世」や「嫌なご時世」というフレーズでもよく耳にします。
なんとも世知辛いご時世になったもんだ
「ご時世柄」ではなく「時節柄」と使う
「ご時世」は「時世」に丁寧の意味を持つ接頭辞「ご」をつけた表現で、「ご時世柄」というフレーズでは使用しません。おそらく、「時節柄」の誤りと考えられます。
「時節柄」とは「その季節、時機にふさわしいこと」という意味です。たとえば「時節柄お体にはお気をつけください」などの言い回しでよく用いられます。
「ご時世」は明るい話題には使わない
これまでの使用例からもわかりますが、「ご時世」が明るい話題に用いられることは少ないでしょう。景気や政治など世の中批判する際に使用するのが通例で、「暮らしやすいご時世だ」とは使用しない表現です。
「ご時世」と「ご時勢」の違いとは
「ご時勢」とは「時代の情勢」という意味
「ご時世」と同じ読みの語に「ご時勢」が挙げられます。「ご時勢」の「時勢」とは「時代の情勢、世の中の動き」という意味です。単に「時代」を表す「ご時世」とは異なり、時代の流れや変化する世の中に言及する際に使用するのが「ご時勢」です。
「ご時勢」ではなく「時勢」と使うことが多い
「ご時世」と同じ読みの語として「ご時勢」を挙げましたが、厳密に言うと「ご時勢」という表現は一般的ではありません。「時勢」という熟語は接頭辞をつけて用いるよりも、そのままの形で使用するのが通例です。
- 先の時勢を予測するのはビジネスの鉄則だ
- これまでずっと現金主義だったが、時勢には抗えずキャッシュレスを併用することにした
「ご時勢」の類語と言い換え表現とは
「時代」「世の中」などに言い換えられる
「ご時世」は「時代」や「世の中」といった語に言い換えることができます。また、「このご時世」は「この時代」「この世の中」と表現してもほぼ同義です。丁寧語としての意味はなくなりますが、意味に大きな違いはありません。
「世情」も類語のひとつ
「世情(せじょう)」とは「社会の有り様、世の中の状態」という意味です。たとえば「世情に疎い」は「世間の事情に疎い、世の中の動きをよく知らない」という意味になります。
「世の中の有り様に詳しい、よく知っている」という意味で「世情に明るい」「世情に通じている」という言い回しで用いられることも多いです。
「ご時世」の英語訳とは
「ご時世」は「in this day and age」と英訳
「このご時世」の英訳では「in this day and age」という慣用表現が挙げられます。「in this day and age」のワンフレーズで「このご時世、今のご時世」という意味です。
Everyone has anxiety in this day and age.(このご時世誰もが不安を抱えている)
「ご時世」の英語訳には「world」「times」も
「ご時世」は「world」や「time」などを用いて表現されることもあります。たとえば「in this digital world」は「このデジタルのご時世に」と和訳することもできます。「times」を使った例では、「hard times」も「大変なご時世、とんだご時世」の和訳が宛てられる表現です。
また、「大変なご時世だ」は「situation」を使って、「The world is in a difficult situation now.」と英訳が可能です。
まとめ
「ご時世」とは「世の中、時代」を意味する「時世」に、丁寧の意味を持つ接頭辞「ご」をつけた表現です。「世の中、時代」を丁寧に言い表したいときに使う表現で、「こんなご時世ですが…」などビジネスシーンでもよく見聞きします。「ご時世」は大変な状況、世情を嘆く際に使うのが通例で、「世知辛いご時世」などの表現でもよく用いられます。