「采配」の意味とは?采配を振るの使い方や類語「差配」との違いも

「勝てたのは監督の采配のおかげだ」とスポーツで監督を称える声を耳にすることがありますが、この「采配」はビジネスでも「采配を振る」のような言い回しでも用いられます。

この記事では「采配」の意味と使い方について例文で解説、「采配する」「采配を上げる」など間違えやすい表現や類語、英語訳についても紹介します。

「采配」の意味とは

「采配」とは「指図、指揮」という意味

采配とは「指図、指揮」という意味です。もともと「采配」は戦で大将が手に持ち、士卒を指揮するために振った道具のことです。木や竹の柄に紙を細長く切ったものをつけた道具を振る大将の姿は、時代劇などで目にしたことがあるのではないでしょうか。

「采配」の使い方がもとになり、「上の者から下に対する指図、指揮」という意味で使われるようになりました。

「采配」の読み方は「さいはい」

「采配」の読み方は「さいはい」です。「さい」の漢字は「採」とよく混同されますが、「采」という字には「良いものを選ぶ、選びとる」の意味があります。「戦や試合で指揮官が良い選択をする」というイメージで覚えておくとよいでしょう。

「采配」の使い方と例文

「采配」は野球などのスポーツでよく使う

「采配」は野球の解説やニュースなどスポーツの分野でよく耳にします。たとえば「監督の采配」「ゲームの采配」といった表現が可能です。この場合「監督の指揮」「ゲームの指揮」といったニュアンスになります。

例文

今日の試合、選手の実力は五分五分だ。勝利は監督の采配にかかっているだろう。

「采配が良い」「采配のおかげ」と使う例

上に立つ人の「指揮」を褒めるニュアンスでは「采配が良い」「采配のおかげ」という表現で用いられます。たとえば「今日の勝利は監督の采配のおかげだ」といった使用が可能です。また、「采配が良い」の表現はスポーツに限らずビジネスでも使うことができます。

例文

上長の采配が良いと職場は自ずと雰囲気が良くなるものだ。

「采配ミス」とは「采配が悪いこと」

一方「采配が悪い」という意味では「采配ミス」という表現をよく耳にします。「采配ミス」とは「上に立つ者の指揮が悪かった」というニュアンスです。

たとえば「監督の采配ミスだ」は「監督の指揮のせいだ」という意味になり、選手ではなく監督に責任があることを示唆する表現です。

「采配のゆくえ」は先を見据える表現

「ゆくえ」とは「進んでいく先」という意味です。「采配のゆくえ」と使うと、「(その人の)指揮によってこの先どこに進んでいくのか、どう歩んでいくのか」という意味になります。

例文

A氏は今期監督に就任したばかりだ。まずはその采配のゆくえを見守りたい。

「采配」の間違いやすい表現

「采配する」ではなく「采配を振る」「采配をとる」

「采配」を「采配する」と使うのは誤りです。単純に考えて「采配する=指揮する」という意味にとりがちですが、「采配」は元々戦の指揮に用いられる「道具」を指すため、「采配+する」では意味をなさないのです。

「指揮する、指図する」というニュアンスを正しく表現するには「采配を振る」「采配をとる」と使います。なお、「采配を振る」が変化して「采配を振るう」という表現で用いられることもありますが、本来は誤用とされていた使い方です。

例文
  • 4月から部長として采配を振ることになった
  • 彼が采配をとるとチームが一致団結する

「采配を上げる」ではなく「軍配を上げる」

「采配を上げる」というと「采配」を高く掲げるイメージがありますが、「采配を上げる」という言い回しで用いることは一般的ではありません。似た表現の「軍配を上げる」と混同している可能性が考えられます。

「軍配」とは「采配」と同じく、軍を指揮するために用いられた楕円やひょうたん型の道具のことで、現代では相撲の行司が持つ道具として使用されます。「軍配を上げる=勝利や優勢の判定を下すこと」という意味です。

「采配」の類語とは

「采配」の類語は「指揮」「統率」

「采配」の類語では「指揮」や「統率」が挙げられます。「指揮」とは「命令をして人を動かすこと」を、「統率」は「多くの人をまとめて率いること」を意味します。

たとえば「采配を振る」は、「指揮する」「統率する」と言い換えることが可能です。

「采配を振る」の言い換えは「陣頭指揮をとる」

「采配を振る」は「陣頭指揮をとる」と言い換えることもできます。

「陣頭指揮をとる」とは「先頭に立ち指揮をする」という意味です。軍隊の先頭に立って指揮することを指すほか、組織の偉い人が現場に出て部下を指揮することを指して用いられます。「先頭に立って」というニュアンスがポイントです。

「差配」と「采配」はニュアンスが異なる

「差配」とは「とりあつかうこと、世話をすること、指図すること」という意味を持つ言葉です。「差配する」の形で「誰かの代わりに行う、またはその指示をする」というニュアンスで用いられることがあります。

「差配」と「采配」は混同される例も多いですが、「采配」は「指揮をとる」という意味であり、「代わりに行うよう指図する」という意味の「差配」とは厳密には異なります。

「采配」の英語訳とは

「采配」は英語では「command」を使う

「采配」の英語訳では「command」という英単語が使用できます。「command」とは「命令する、指揮する、率いる」などの意味を持つ語です。名詞として「命令、指揮」などの意味もあります。また、「采配を振る」という意味の慣用表現で「lay down the law」という言い回しを使うことも可能です。

例文
  • He had fifty men under his command.
    彼は50名の部下を相手に采配を振った
  • He lays down the law at his office.
    彼は職場で采配を振っている

スポーツの「采配」には「strategy」を使う

スポーツにおける「采配」では「strategy」を使った英訳が一般的です。「strategy」は「戦略」という意味で、たとえば「監督の采配のせいで負けた」は「We lost because of the manager’s strategy」と英訳することができます。

また、「監督の采配のせいで負けた」は単に「That was the coach’s fault.(監督のせいだ)」と英訳する例もあります。

まとめ

「采配」とは「指図、指揮」という意味です。戦を率いる大将が掲げた道具「采配」に由来する語で、「群を指揮する、部下に指図する」という本来の用途がそのまま現代の意味として用いられています。

なお「采配する」という使い方はせず、「采配を振る」「采配をとる」と使うのが一般的です。またスポーツの分野でも「監督の采配」のような表現でよく用いられます。