相手の申し出には応じられない場合に「お断りします」と告げることがありますが、「お断りします」は敬語として正しい使い方なのでしょうか。「お断りします」の意味と敬語、その使い方を例文で解説します。また、より丁寧な言い回しや断る際の別の言い方、英語訳についても紹介しましょう。
「お断りします」の意味とは
「お断りします」は「断る」を丁寧にした表現
「お断りします」とは「断る」を丁寧にした表現です。相手の申し出や依頼には応じられないこと、相手の要求を受け入れることができないという意味で「お断りします」と使用します。
接頭辞「お」は謙譲の意味を持つ敬語
「お断りします」の「お」は謙譲の意味で用いられます。接頭辞「お」は、尊敬・謙譲・丁寧の3通りの解釈が可能できます。「お断りします」の場合、丁寧の意味でも解釈が可能ですが「ます」という丁寧語と重なるため、謙譲の意味にとるのがベターでしょう。丁寧語の意味にとると、「ます」と重複し二重敬語となります。
「お断りします」は、他人に対して自分が断る行為をへりくだった表現としているため、敬語として目上に対して使用しても文法上問題はありません。
「お断りします」の使い方とは
ビジネスメールではクッション言葉を使う
「お断りします」は文法上は敬意を込めた表現ですが、そのまま使うとストレートでやや強いニュアンスになります。特に、雰囲気が伝わりにくいメールや電話では「申し訳ございませんが」や「恐れ入りますが」などのクッション言葉と共に使用するのが一般的です。
また、「〜なためお断りします。申し訳ございません」と後に謝罪の言葉を続けることも多いです。
- 大変申し訳ございませんが、今回はお断りします
- ありがたいお話ではございますが、お断りします
より丁寧に伝えたい場合は「お断りいたします」
「お断りします」をより丁寧な言い回しとして使用したい場合に「お断りいたします」とする例があります。「お断り~」の「お」を謙譲の意味にとった場合、謙譲語「いたす」を後に続けることは厳密には二重敬語になります。ただし広く一般に用いられていることから許容範囲とされることも多く、使用しても問題にはならないでしょう。
今回の件に関しましては、誠に残念ではございますがお断りいたします。
「お断りさせていただきます」と使う例も
「お断りさせていただきます」も「お断りします」と同様に断る際に使われます。「させていただく」とは「させてもらう」の謙譲表現です。相手に許可を求めたうえで実行するというニュアンスです。
そのため、「お断りさせていただきます」も相手の許可をもらった上で、遠慮がちに断るニュアンスになります。慣習的に、相手の許可を必要としない場合でも用いられることがあります。
大変光栄なお話ではございますが、スケジュールの関係上お断りさせていただきます。
「お断りします」の類語や別の言い方
誘いを断る際は「遠慮させていただきます」
相手からの勧誘を断る際には「遠慮させていただきます」という表現が使用できます。「遠慮しておく」などカジュアルな会話でも用いられる言い回しで、「遠慮いたします」というフレーズでも使用可能です。「お断りします」よりも柔らかい印象を持って伝わります。
せっかくのお誘いですが、今回は遠慮させていただきます。
「辞退します」も「断る」の意味で使える
勧められたことを断る際の表現では「辞退します」も挙げられます。この「辞退」には「へりくだって遠慮する」というニュアンスがあります。また「地位を放棄すること、自分にはふさわしくないとして断ること」という意味も持つことから、昇進を断る際などにも用いられる表現です。
内定のご連絡ありがとうございました。大変申し訳ございませんが、辞退します。
要望を断る際には「ご要望に沿いかねます」
相手の要望を断る際の表現では「ご要望に沿いかねます」を使うのが通例です。相手の要望に応えられないことを意味します。謝罪の言葉とセット使うのが通例で「ご要望には沿いかねます。誠に申し訳ございません」、あるいは「ご要望に沿うことができず申し訳ございません」とすることも多いです。
他にも「ご期待に沿えず〜」や「お受けいたしかねます」も要望を断る際のフレーズとして使用できます。
相手の提案に「~の予定はございません」と断る例
ビジネスで営業を受けた際の断り文句としては「〜の予定はございません」というフレーズを使用する例もあります。たとえば「弊社では人事システム導入の予定はございません」「現在取引先変更の予定はございません」として提案を受けない旨を伝えることができます。
- 社内でも検討いたしましたが、現在システム変更の予定はございません。ご意向に沿えず申し訳ございません。
「お断りします」の英語訳
英語では「refuse」や「decline」を使う
「お断りします」の英語訳では「refuse」を使用します。「refuse」はきっぱりと断るニュアンスが特徴で、日本語同様にクッション言葉となるフレーズを挟んで用いることが多いです。
「断る」の英単語には「decline」もあり、「refuse」と比べてやや柔らかい印象になります。
- We are afraid that I have to refuse your proposal.
残念ですがお断りします[お断りせざるを得ません - I am sorry to say that we must decline your proposal.
申し訳ございませんがお断りさせていただきます
「can’t accept」と断ることも可能
「提案を受け入れられない」と断る表現では「I can’t accept your proposal.」という英文も可能です。この場合も「申し訳ありませんが」などの表現とともに使用します。
I am sorry but I can’t accept your proposal.
すみませんが、ご提案はお断りします
誘いを断る際は「pass」を使った表現も
誘いを断る際に「今日はパス」ということがあるように、英語でも「pass」という単語を使って断ることがあります。「断る」よりも「見送る」というニュアンスに近い英語訳です。また「断る」という英単語を使用せずに断る表現もあります。
- Thank you for your invitation, but I’m going to pass.
お誘いはありがたいけど、お断りします - Unfortunately, I have another appointment on that day.
あいにくですが、その日は先約があります
まとめ
「お断りします」は文法上は敬語として目上に使える表現ですが、直接的な表現であるため「誠に申し訳ございませんが~」「残念ながら~」と前置きした上で使うのが通例です。また「断る」という語を用いずに「遠慮させていただきます」「ご要望には沿いかねます」などを使う例もあります。状況に応じてうまく使い分けてみてください。