「仁」の正しい意味とは?孔子や論語から解説!仁義の意味や英語も

「仁」という言葉の意味を知っていますか?東洋最強の哲学書といわれる『論語』のもっとも大切な概念が「仁」です。近年、論語で説かれている心の持ち方を仕事に活かそうというビジネスパーソンが増えています。論語を読み解くためのキーワードである「仁」について説明しますので、参考にしてください。

「仁」とは?

東洋思想に大きな影響を与え続ける孔子の『論語』において、孔子の最高道徳として語られるのが「仁」です。まず「仁」の意味と背景を説明します。

「仁」の意味は「人を思いやる気持ち」

「仁」とは孔子の思想の根本を支える概念です。しかし「仁」が具体的に何であるかの説明を孔子はしていません。孔子の言葉の解釈からすれば、仁とは、他者の心中を思いやることであり、深い人間愛を基本とするものといえます。

読み方は「じん」

「仁」の読み方は「じん」です。

「仁」は英語で「Benevolence(慈悲心・仁愛)」

「仁」は英語で「Benevolence」といい、慈悲心・仁愛などの意味を持ちます。とくに18世紀のイギリスのモラリスト(道徳家)がこの語を用いて、人間の徳性を指すと同時に、教育によって養われる徳の概念を説明しました。

「仁」は孔子の『論語』の根本概念

孔子の思想を著わした『論語』には、「仁」が頻繁に登場します。全499章のうち、58章に「仁」の言葉が書かれています。

儒教の「五常の徳」のひとつ

儒教が示す大切な徳に「五常の徳」があります。「五常の徳」は「仁・義・礼・智・信」で構成され、古代中国から続く、社会を支える倫理規定であり、目指す心のあり方でもあります。その中でも「仁」は徳の基本とされます。

孟子は「仁義」を説いた

孔子に次ぐ儒教の伝承者である孟子は、孔子が説いた「仁」を発展させ、徳の最高目標を「仁義」としました。「仁義」とは、「仁」と「義」を同等のものとして、人を思いやる気持ちを持ち、かつその心が判断した行ないこそが正しいあり方であるとしたものです。この思想はやがて民主主義の政治的な思想として展開してゆきます。

「仁」を使った故事成語・ことわざ

人生訓としても使われる故事成語・ことわざ5選

「仁」の言葉を使った、『論語』を出典とする故事成語やことわざがたくさんあります。人生訓としても使われています。

知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ
知恵のある人は水のように頭が流動的で、徳の高い人は心を動かさず山のように不動であるという意味

仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼(おそ)れず
徳の高い人は何一つ心配しない、知恵のある人は迷いがない、勇気がある人は臆することがないという意味

過ちを観て仁を知る
人の過ちや失敗を観察すると、その人が徳がある人か、ない人かがわかるという意味

巧言令色、鮮し仁(こうげんれいしょく、すくなしじん)
言葉巧みで、人に気に入られようと愛想を振りまく者には、徳である仁の心が欠けているという意味

剛毅朴訥、仁に近し(ごうきぼくとつ、じんにちかし)
強い意志を持ち、無欲で素朴で口数が少ない人物が、仁に最も近い人であるという意味

「仁」を説いた言葉

仁の大切さを説いた孔子の言葉

『論語』から「仁」の大切さを説いた孔子の言葉を紹介します。

人にして仁あらずんば、礼をいかにせん。人にして仁あらずんば、楽(がく)をいかにせん。
人を思いやる気持ちがなければ、礼が何になるだろう。人を思うまごころがなければ、楽の音も心には響かない。

相手を思いやる気持ちがなけれが、「礼」は形だけのものになり、音楽も心に響かないということです。すべては「仁」が基本であるということをいっています。
※「礼」とは、儀礼や作法など社会の秩序を保つための生活の規範のことをいいます。

仁に里(お)るを美と為す。えらびて仁におらずば、いずくんぞ知たるを得ん。
人を思いやれるのは美しいことだ。人を思いやり、世のために生きなければ、知ある人になることはできない。

いやしくも仁に志せば、悪無きなり。
かりにも人を思いやり、純粋な心で行動するなら、その心は悪に染まることはない。

不仁者は以て久しく約におるべからず。
仁を心得ない人は、精神的にも物質的にもその生活に耐えられず、堕落する。

仁者はよく人を好(よみ)し、よく人を悪(にく)む。
仁の心の人は良いことを良しとし、悪いことを悪いとする。

君子は仁を去りて、悪(いず)くにか名を成さん。
名をあげる道はたくさんあるが、真の人間は仁を行う以外のことで名声を得ようとは思わない。

我れ、仁を欲すれば、ここに仁至る。
仁でありたいと望んだ瞬間に、仁はその人のものとなる。道徳の実践に困難なものはない。

仁を為すは己れに由る。人に由らんや。
仁を行うのは自分自身であって、人の力に頼るものではない。

「仁者」を現代でいえば?

組織の良きリーダー

孔子の説く「仁」のある人とは、現代のビジネスシーンに適用するならば、高い徳を持ち、部下の信任も厚く、適切な判断を行える組織の良きリーダーであるといえます。「仁」は個人の心の持ち方を示すとともに、個人と社会を調和させる基本としても示されているからです。

「仁」の教えをマネジメントに活かしたい方には、次の書籍をおすすめします。ドラッカーの『マネジメント』を『論語』と対比させて読み解く試みの本です。

まとめ

「仁」とは「人を思いやる気持ち」のことで、人としての正しい生き方を示す言葉です。それは理想のリーダー像を示しているとも考えることができます。リーダーやマネジメントの方法論の指南書は数多くありますが、まずは個人としての心が大切だということに立ち返ろうという人が増えているようです。