「社長様はいらっしゃいますか?」「株式会社○○ 代表取締役社長様」などの表現を見聞きすることがあります。この「社長様」とは、正しい使い方なのでしょうか。また、電話やビジネスメールなど、シーン別に「社長」の正しい呼び方を例文で紹介します。
「社長様」という呼び方はおかしい?
「社長様」という呼び方は誤用
結論から言うと「社長様」という表現は誤りです。「社長」などの役職名は、相手に敬意を示す語「敬称」です。「様」もまた「敬称」であるため、「社長様」は敬称を二つ重ねた二重敬語に該当します。
日本語では、敬語を重複して使わないというルールがあり、「社長様」もまた間違った使い方ということになります。なお、「社長様」という表現に限らず、会長・部長・課長など他の役職名も敬称に該当するため「様」をつけて使うことはしません。
韓国語では「役職+敬称」を使う例も
「社長様」は日本語では間違った表現でも、外国語では「社長+様」の形で敬称として使う言語もあります。その代表例が韓国語で、韓国語の「サジャンニム」は日本語に直訳すると「社長様」という意味になります。
目上を敬う文化が強い韓国では、目上の人には全て「ニム」をつけるのが特徴で、「社長(韓国語のサジャン)」もまた例外ではないようです。
社内で慣習的に「社長様」と使う例も
「社長様」は謝った使い方ですが、古い企業では慣習として取引先の社長を指して「社長様」と呼ぶ例もあるようです。ただし、慣習的に使用されていても文法上は誤りです。社外に向けては使わないのがベターです。
「社長」の正しい呼び方や例文
「○○社長」「社長の○○様」が正しい
「社長」は「様」をつけずに「○○社長」と「名前+社長(役職名)」としても失礼にはあたりません。肩書きで呼ぶことに抵抗があるという人は「社長の○○様」の形での使用が可能です。
- 田中社長
- 代表取締役社長 田中様
ビジネスメールや手紙の宛名は「役職+○○様」
手紙の宛名では「会社名+役職名+○○様」という形が定型です。たとえば「株式会社** 代表取締役社長 〇〇様」と書きます。メール本文に記載する宛名部分も同様で社名と役職名に続き、〇〇様とするのが通例です。
なお、一口に社長と言っても企業によって肩書きは異なります。「代表取締役社長」「代表取締役」など失礼のないよう肩書きはしっかりと確認した上で記載します。
社長の名前がわからない場合は「社名+御中」
企業HPから情報が得られず、社長の名前がわらかない場合でも「社長様」と使うのは誤りです。社長名が不明の場合は「株式会社**御中」と企業に宛てるのが通例です。
営業の案件であれば「営業部御中」、経理システムの案内であれば「経理部御中」というように、担当部署を推測して部署に宛てる例もあります。
電話でも「社長様」ではなく「○○社長」
「社長様」という表現は使わない、というのは電話でも同様です。電話口で社長への用向きを伝えたい場合は「〇〇社長はいらっしゃいますか」あるいは「社長の〇〇様はいらっしゃいますか」といった言い回しを使用します。また以下のようなフレーズも電話ではよく用いられます。
- 佐藤社長に、プロジェクトの件でご連絡いたしました
- 社長の佐藤様は、お戻りでしょうか
就活やスピーチでも「社長様をはじめ」は誤用
「社長様をはじめとした御社のビジョンに深く感銘を受けました」「社長様をはじめ社員の皆様の益々のご多幸をお祈りして〜」など、改まったシーンであるほど「社長様」という表現を使いがちです。
しかし、この場合も例にもれず「社長様」ではなく「○○社長」あるいは「社長の○○様」と表現します。就活の面接やスピーチなど、人前で話すシーンほど言葉選びに気をつけましょう。
「様」「殿」など正しい敬称の使い方
「様」は目上にも目下にも使える
「様」は敬称の中でも最もよく使う表現です。個人を宛先とする場合に使用するのがポイントで、目上にも目下にも使うことができます。名前がわからない場合に「ご担当者様」として使う例もあります。
一方で組織など個人以外には使うことができないため、企業名や学校名に続けて使用するのは誤りです。
「殿」は目下に使うため「社長殿」は誤用
「殿」もまた敬称ですが目下に使う表現です。そのため「社長殿」という表現は、目上の人に「殿」を使っているという点で間違った用法ということになります。
なお、「殿」は「部長殿」「課長殿」と役職に続けて使える点がポイントです。ただし目下に使う表現ということから見下していると誤解を招く恐れがあり、ビジネスシーンでは「様」の方が無難という意見もあります。
「御中」は企業や団体に使う敬称
「御中」は企業や部署、学校などの組織・団体に対して使う表現です。ただし、社名と担当者名を併記する場合に敬称を併用することはできないため、社名を書いた場合でも個人名を記載する場合には「御中」ではなく担当者名に「様」をつけるのが通例です。
- 株式会社○○ 営業部御中
- 株式会社○○ 営業部 田中様
まとめ
「社長様」は慣習的に使う人もいますが、文法上は誤りです。「社長」も敬称であるため「〇〇社長」という呼び方でも失礼ではありません。どうしても「様」を使いたいという場合は「代表取締役社長 〇〇様」と「役職+名前+様」の形で使用します。
また、「社長様」は口頭表現としても誤りであることに変わりはないため、改まった場でうっかり口にしないよう、日頃から正しく使用しましょう。