「どうぞお気をつけていらしてください」とは、これから来訪予定の人を気遣う意味で用いられますが、この「いらしてください」は正しい敬語なのでしょうか。
「いらしてください」の意味と敬語、またその使い方について解説します。加えて目上に使える「いらしてください」の類語や言い換え表現も紹介しましょう。
「いらしてください」の意味とは
「いらしてください」とは「来てください」の意味
「いらしてください」は「来てほしい」と相手に依頼するニュアンスを持つ表現で、「来てください」という意味です。また「行ってください」「居てください」という意味もあります。
「いらっしゃってください」を省略した表現
「いらしてください」という表現は、「いらっしゃってください」の省略表現です。「いらっしゃってください」の「いらっしゃる」とは「来る、行く、居る」の尊敬語で、これに丁寧語「ください」を足したのが「いらっしゃってください」になります。
「いらっしゃって」という表現は長いため、例外として「いらして」や「いらした」という形が認められたとされています。本来、省略した表現は失礼とされることが多いですが、「いらしてください」が誤りとされることはあまりありません。失礼ではないものの、丁寧さは「いらっしゃってください」の方が高いとされます。
「いらしてください」は方言ではなく尊敬語
先述のように「いらしてください」は尊敬語「いらっしゃってください」を省略した語であり、方言ではありません。年代などによって使用頻度に差があることから、方言では?と思う人がいるようです。
「いらしてください」の使い方と例文
「いらしてください」は目上にも使える
「いらしてください」は尊敬語を含む表現であるため目上の人に「来てください」という意味で使用します。たとえば「是非一度いらしてください」と誘うほか、「気をつけていらしてください」と来る予定の人を気遣うニュアンスでも用いられます。
- 是非一度、展示会にもいらしてください
- 当日はどうぞ気をつけていらしてください
「いらしてくださいね」は親しみを込めた表現に
「いらしてくださいね」と語尾に「ね」をつけた場合、親しみを込めたニュアンスにとることができます。改まったシーンで使うよりはややカジュアルな会話で使う表現で、取引先でも比較的親しくしている間柄などで「今度は是非〇〇さんもいらしてくださいね」と使う例が挙げられます。
「行ってください」「居てください」の意味で使う
「いらしてください」は「来てください」という意味で使うことが多いですが、言葉の意味としては「行ってください」「居てください」の尊敬語として使うことも可能です。
「行ってください」の例では「先にいらしてください」、「居てください」の例では「〇〇駅にいらしてください」などが挙げられます。いずれの場合も文脈によっては「来てください」の意味にも取れるため、状況に合わせた判断が求められます。
- 部長は先にいらしてください(先に行ってください)
- そのまま東口にいらしてください(東口に居てください)
「いらしてください」の言い換え表現とは
「いらしてください」の言い換えは「お越しください」
「いらしてください」は「お越しください」に言い換えることができます。「お越しください」とは「来る」の尊敬語「お越しになる」を使った表現です。「当日は11時に弊社までお越しください」のように使用します。
一般に、丁寧な印象を持って伝わることから社外の人に使うことが多く、目上でも社内の人間に「お越しください」と使うことはあまりありません。
「おいでください」も言い換えに使える類語
「おいでください」は「行く・来る」の尊敬語「おいでになる」を使った表現で、社内外の区別を問わずよく耳にします。「おいでになってください」という言い回しでも見聞きしますが、「おいでください」が正しいです。
「10時までにおいでください」「会議室Bまでおいでください」のように時間や場所と共に使うことも可能です。
「ご足労いただく」を使った言い換えも
「ご足労」とは相手が足を働かせること、行く・来るなどといった相手の動作に尊敬の意味を持つ「ご」をつけた表現です。わかりやすくいうと、「ご足労」は「わざわざ来てもらうこと」を指して使用します。
たとえば「ご足労いただき幸いです」と使うと、相手が来てくれたことを大変嬉しく思う、というニュアンスになります。ただし、依頼する際に「ご足労ください」と使うと強要するような意味になるため、「ご足労いただきたく存じます」のような言い回しがベターです。
「いらしてください」の英語訳とは
英語では「Would you ~?」「Could you~?」を使う
「いらしてください」の英語訳では日本語の丁寧なニュアンスを汲み「Would you ~?」や「Could you~?」を使った表現が挙げられます。いずれも「〜していただけませんか?」という意味の丁寧な表現です。
たとえば「Would you come to our office?」は「弊社に来ていただけませんか」という意味になり、日本語の「いらしてください」に近いニュアンスです。「Please come to our office.」という英訳も可能ですが、「Please」は上記に比べるとややカジュアルな意味合いになります。
「いらしてください」の英語訳では「want」も
「いらしてください」をシンプルに「来てほしい」という意味で英訳し「I want you to come to our office.(弊社に来てほしい)」とすることも可能です。
「Is it possible to come to our office?(弊社にくることは可能ですか?)」も、「Would you ~?」や「Could you~?」ほどの丁寧さはないものの相手に可能かどうかを尋ねる意味では親切な言い回しと言えるでしょう。
まとめ
「いらしてください」とは、尊敬語「いらっしゃってください」を省略した表現で、主に「来てください」という意味で用いられます。「是非いらしてください」と誘うほか、「気をつけていらしてください」と相手を気遣う言い回しで使うのが良い例です。また「いらしてください」は「居てください」「行ってください」の尊敬語としても使うことができます。