「不言実行」の意味と由来とは?使い方や座右の銘・類義語も解説

声高らかに宣言した目標を成し遂げることは「有言実行」と言いますが、余計なことは口に出さずに実行する様は「不言実行」といいます。四字熟語「不言実行」の意味とその由来、使い方について例文で解説します。また座右の銘としての使い方や類義語、英語訳も紹介しましょう。

「不言実行」の意味とは

「不言実行」とは「口に出さずに実行に移すこと」

「不言実行」とは「あれこれと理屈を述べず、やるべきことを黙って実行すること」という意味です。余計なことを述べずになすべきことを実行することが「不言実行」です。

目標を宣言し実際にやり遂げることを「有言実行」といいますが、この「有言実行」は「不言実行」から派生した表現とされています。

「不言実行」の読み方は「ふげんじっこう」

「不言実行」は「ふげんじっこう」と読みます。「不言」は「ふごん」と読むケースもありますが、「不言実行」と四字熟語として使う場合は「ふげんじっこう」と読むと覚えておきましょう。

熟語の構成に由来する、『論語』にも記載あり

「不言実行」の意味は「不言」と「実行」という二つの熟語に由来します。「不言」とは「何も言わないこと、黙っていること」という意味があり、特に不平不満などネガティブな内容を「わざわざ口に出して言わないこと」というニュアンスもあります。そこから「理屈を述べずにやるべき事柄を黙って行うこと」という意味になるのです。

この「不言実行」を肯定する考え方は古くからあり、孔子の『論語』にも「まずは言おうとすることを実行してから、後でものを言う」という主旨の一節があるようです。

「不言実行」の使い方、例文

「不言実行」は男女とわず人の性格、考えを指して使う

「不言実行」とは人の性格や考え方を指して用いられることが多いでしょう。特に、実行力がある様、能力がある様を褒める意味合いで用いられるのがポイントです。

例文
  • 彼女はやるべきことを粛々とこなす不言実行の人だ。
  • 口先ばかりで行動が遅い彼は不言実行とは程遠い人物だ。

なお、「有言実行」と対比し、「不言実行」は目標を公言せずに実行に移すこと、というニュアンスで用いられることがありますが、本来は「理屈や不平を述べずに実行すること」を指します。秘密裏に行動に移す様を指して「不言実行」と使うのは誤用です。

信条や座右の銘としても使える表現

「不言実行」は信条や座右の銘として用いられることも多く、しばしば書道の書き初めに選ばれることもある四字熟語です。座右の銘に使うと「自らのやるべきことを見極め、しっかりと行動に移す」という行動力や責任感を打ち出す表現となります。

一方で、公言したことを実行し成果を出す「有言実行」も座右の銘として人気が高いですが、物事に対する姿勢が異なるだけで、本来どちらが優れているということではありません。

「不言実行」の類義語とは

似た意味の四字熟語は「訥言敏行」

「不言実行」の類義語は「訥言敏行(とつげんびんこう)」です。「訥言敏行」とは「徳のある人は口数が少なく、敏速に行動するものである」という意味の四字熟語で、わかりやすくいうと「立派な人は口数は少なくても行動は機敏である」ことを表しています。「訥言実行」という表現も同じニュアンスで用いられます。

「沈黙は金」も「不言」を評価する慣用表現

「不言実行」と同様に「あれこれと口にせず黙っていること」を良しとする意味の慣用表現では「沈黙は金」も挙げられます。「沈黙は金」は「沈黙は金に例えられるだけの価値がある」という意味で、「あれこれと述べるよりも黙っていた方が良いことがある」という慣用表現です。「不言」に価値を置く点でこの「沈黙は金」も「不言実行」に通じるものがあります。

「言わぬが花」は「言わない方が良い」という意味

「言わない方が良い」という意味の慣用表現では「言わぬが花」も挙げられます。「口に出さない方がかえって良い事もある」という意味で、黙っている方が趣きがあり価値があるというニュアンスで用いられます。

この「言わぬが花」のように、日本では古くから「余計なことは口に出さないこと」を美徳とする考えがありますが、「不言実行」は「理屈や不平を述べずに~」という意味合いが特徴的で粛々と行動に移す様を表す点で少しニュアンスが異なります。

「不言実行」の英語訳

英語では「action before words」

「不言実行」は英語では「action before words」と表現されます。直訳すると「言葉の前に行動すること」となり、あれこれと不平不満を述べる前に行動に移すという意味で「不言実行」の英語訳として使用できます。

他にも「work in silence(working in silence)」や「no talk, all deed」などといった表現をされることもあります。

「Actions speak louder than words」も有名な一節

「不言実行」の意味とは少しずれますが、言葉よりも行動を重んじる、というニュアンスでは「Actions speak louder than words.」もよく知られるフレーズです。「Actions speak louder than words」は言葉よりも行動が語る方がよく聞こえる、つまり言葉よりも行動で示せ、というニュアンスです。

まとめ

「不言実行」とは「理屈や不平不満を口にせず実行に移すこと」という意味です。「有言実行」と対比的に用いられることもありますが、「目標などを公言せずに秘密裏に実行する」の意味で使うのは本来の意味とはニュアンスが異なります。自分がとるべき行動、なすべきことを理解し粛々と実行するような様が「不言実行」と表現することができます。